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#116「同じで~す」から脱却し「あっ!」が響き渡る教室へ:授業のウェルビーイング

今回は、よい授業の条件について考えながら、授業のウェルビーイングを考察していきます。

その前にまず、授業と大きく関わりのある学習規律から考えます。

学習規律は学級経営上、大切であることは間違いありません。
学校に限らず社会生活でも規律は重要です。

しかし、学習規律の徹底は、学習内容に直接関係ないことで注意する機会を増やしてしまい、支援を要する子の学習に関する素直な言動が制約されることがあります。

自分の考えを素直に話したいと思っていた子供が、新学期から学習規律によって窮屈な思いをし、自分の考えを表現しにくくなってしまっては、本末転倒です。

特に、
「姿勢よくしましょう」
「手をピンとのばしてあげよう」
「大きな声で発表しよう」

といった学習態度に関する注意をうける子供は、学習以前にやる気が失せてしまいます。
姿勢がちょっとくらい悪くたって、いいことつぶやいていたら、それを拾ってやり、授業に生かしてやれば、やる気も持続するはずです。

学習規律自体は、学習目標を達成するために必要な手段の1つであるかもしれませんが、やる気が減退してしまっては、本末転倒甚だしいと言えます。

学習の目的は、授業を通して、身に付けさせたい力を全員に達成させることであり、学習規律を全員が守ることではありません。
学習規律を目的にしてしまうと、姿勢を崩して授業を受けている子は注意されなくとも、指名されることはまずないということです。
規律を守っている子だけが活躍する授業となってしまいます。
そしてみんなと同じようにできない少数派の子たちはだんだん居場所がなくなっていきます。
規律を守れる多数派の子たちだけが楽しいクラスになります。

学習規律が徹底されているクラスで、限られた子どもしか意見を言わないような場合、授業がスムーズに流れているように見えますが、授業を楽しいと感じたり、満足したりしている子供の割合は低いと思っていたほうがよいでしょう。
静かにしているのは、怒られないように先生の顔色を窺っているだけなのです。

特定の子だけがいつの発言するのは、つまらない授業ともいえます。
こうならないためにも、規律を守れていない子については、全体でわざわざ注意などせず、個別対応していきましょう。

全員一律に学習規律を守らせるという呪縛が、同じであることを強要させています。
現在の小学校の現場では、都合よく指導できるよう、同じであることを強調し続けてきたため、違うことを異質分子と捉えてしまっているのです。
こんな状態は、ウェルビーイングとは言えません。

こんな授業の1コマがあります。

算数のひき算の筆算の問題の答え合わせの場面。
「146-89は57です。」(「いいですか~」)
「同じで~~~す」
低学年の教室ではよく、この
「おなじで~~す」が聞こえてきます。

どこの学校へ異動しても必ずこの
「おなじで~~す」
が聞こえてきます。

どうしてなのでしょう?

答えは簡単です。
同じですと言わせてしまう方が楽だからです。

この「おなじで~~~す」の問題点は、間違っていた子を無視して授業をすすめています。
この答えあわせでは、57以外はあってはいけないのです。
では間違えた子はどうするのか?

あわてて消しゴムで自分の間違えた答えを消して「57」と書きなおすのです。
もちろん意味わからず直します。
これが授業と言えるでしょうか?

まだこれだけならまだしも、
最悪の場合、答えを消したことが見つかって、注意を受けることもあります。

「おなじで~~す」は考える力を奪う危険な指導と言えます。
やっている先生は即刻やめた方がいいです。

ではどうしたらよいのか?
1問だけ答えを確認するのであれば、
逆を問えばいいのです。
「57じゃなかった人いる?」と。
間違えといわなければ、手を挙げて答えてくれます。

「112になりました」
「えっ?」
という反応が大きくでてくるクラスは危険信号です。
多数派優位の学級経営をしているのがすぐにわかります。

「112になりました」
「あっ!」
という反応がすぐにでてくるクラスは、多数派が少数派を理解して寄り添うことのできる学級経営をしていることがわかります。

この「えっ」と「あっ」という短い一言で学級経営スタイルがわかります。
「えっ」とは、つまり、
「自分とは違うよどうして??、答えは57だよ。112なわけないじゃん!」と間違えた答えを言った相手を否定しています。

それに対して「あっ」は、
「112と計算した〇〇さんの計算の仕方が分かった!」
と間違えた答えに寄り添い、相手の立場で物事を考えているのです。

この「えっ」から「あっ」が当たり前となる授業こそが、授業のウェルビーイングと言えます。

多数派優位の学級経営を見直し、クラス全員が楽しいと感じる授業作りができるよう授業改善していきましょう。

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