JW463 乙女は何処に
【崇神経綸編】エピソード38 乙女は何処に
第十代天皇、崇神天皇(すじんてんのう)の御世。
紀元前33年、皇紀628年(崇神天皇65)7月。
朝鮮半島から、男が参内(さんだい)した。
意富加羅国(おおから・のくに)の王(こきし)の子、蘇那曷叱知(そなかしち)(以下、ソナカ)である。
崇神天皇こと、御間城入彦五十瓊殖尊(みまきいりひこいにえ・のみこと)(以下、ミマキ)は、驚きつつも、客人を迎え入れる。
共に居並ぶのは、大后(おおきさき)の御間城姫(みまきひめ)(以下、みぃ)。
日嗣皇子(ひつぎのみこ)の活目入彦五十狭茅尊(いくめいりひこいさち・のみこと)(以下、イク)。
大臣(おおおみ)の尾張建諸隅(おわり・の・たけもろすみ)(以下、ケモロー)である。
そして、ソナカの名前について、解説が続くのであった。
みぃ「と・・・ところで、他にも、于斯岐阿利叱智干岐(うしきありしちかんき)という名も有るようですね?」
ソナカ「その通りハセヨ。ちなみに、于斯岐(うしき)と蘇那曷(そなか)は、同じハセヨ。」
イク「ん? ソナカ殿? 何を言っているの? 音も字も違うよね? 同じじゃないよ。」
ソナカ「実は、朝鮮語の『于斯(うし)』は『手』という意味で、音は『sio』になるニダ。この音に合わせて『蘇(そ)』を付けたと考えられているハセヨ。」
ケモロー「ほんで『岐(き)』と『那曷(なか)』も同じっちゅうことなんきゃ?」
ソナカ「その通りハセヨ。『岐(き)』は『来(き)』でもあって、『出る』とか『行く』という意味になるニダ。これの朝鮮語の語根(ごこん)が『na-ka』なので『那曷』を当てたハセヨ。」
ミマキ「そ・・・そうか・・・。そうなるのか・・・。」
こうして、名前の解説も終わり、幾日か、もしくは、幾月か経った頃・・・。
みぃ「ついに、乙女が見つかりましたよ。乙女は、比売語曾社(ひめごそ・のやしろ)の神様になったそうです。そして、鎮座地(ちんざち)は、喜ばしいことに、諸説有るそうですよ。」
ソナカ「全然、喜ばしく無いハセヨ! どういうことニカ? どっちが、本物ニカ?」
ミマキ「安心せよ。どちらも本物じゃ。まず一つ目は、筑紫(ちくし:今の九州)の豊国(とよ・のくに)の国前郡(くにさき・のこおり)じゃ。二千年後の地名で言えば、大分県姫島村(ひめしまそん)になるな・・・。ちなみに、一島一村の地方自治体なのじゃ。」
イク「そして、社(やしろ)の名は、比売語曽神社(ひめこそじんじゃ)だよ。」
ケモロー「もう一つは、難波(なにわ:今の大阪市周辺)だがや。大阪市東成区(ひがしなりく)の東小橋(ひがしおばせ)に鎮座しとって、下照姫命(したてるひめ・のみこと)が祀(まつ)られとるんだわ。ちなみに、下照姫は、大国主大神(おおくにぬしのおおかみ)の娘だがや。」
ミマキ「社の名は、比売許曽神社(ひめこそじんじゃ)じゃ。」
みぃ「難波については、もう一つ、候補地が有りますよ。それが、高津宮(こうづぐう)の摂社(せっしゃ)、比売古曽神社(ひめこそじんじゃ)にございます。大阪市中央区(ちゅうおうく)の高津(こうづ)に鎮座しておりますよ。」
ソナカ「では、神様として祀られたので、ウリとは、交(まじ)われないということニカ?」
ミマキ「なっ! そのような思惑(おもわく)で、海を渡って来たと申すか?!」
驚く面々を他所(よそ)に、ソナカは、落胆の色を隠そうともしないのであった。
つづく
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