佐藤健太郎

サイエンスライター、「有機化学美術館」の中の人。ここでは本業以外の趣味や雑文を綴る予定。

佐藤健太郎

サイエンスライター、「有機化学美術館」の中の人。ここでは本業以外の趣味や雑文を綴る予定。

マガジン

  • 囲碁

    囲碁関連の記事をまとめたものです。

記事一覧

六合折り紙(2)~斜方立方八面体のバリエーション

 前回、6枚の折り紙を前後・左右・上下方向から組み合わせて作る作品を、「六合」と名付けることにした話を書いた。今回はその続き。  デヴィッド・ミッチェル氏の斜方…

佐藤健太郎
2週間前
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六合~折り紙6枚で作る立体(1)

 最近、6枚の用紙を組み合わせて立体を作るのに凝っている(上写真)。勢いでいろいろ作ってしまったので、せっかくだから世に出してみることにする。  上の写真のよう…

佐藤健太郎
1か月前
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囲碁界についてその後思うこと(2)

 前回、Go-Up氏の「囲碁というゲームがこの先も活き残るには」という記事に刺激を受けて、最近の囲碁界のことを書いた。ということで今回はその続き、こういう棋戦があっ…

佐藤健太郎
1か月前
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囲碁界についてその後思うこと

 以前、囲碁の本因坊戦が縮小するという話にショックを受け、いくつかnoteに記事を書いた(こちらなど)。あれから1年以上が経ったが、若手棋士が囲碁界に見切りをつけて…

佐藤健太郎
2か月前
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囲碁の新棋戦を考えてみる

 前回の続き。このシリーズは、本因坊戦の格下げをきっかけに書き始めたものだ。これは囲碁自体の人気低下とともに、現在のタイトル戦に話題性がなくなり、人目を惹きつけ…

29

囲碁普及のために思いつくこと

 というわけで、前回まで本因坊戦の縮小について思うところを書いてみた。残念ながら、囲碁という分野は衰退に向かっていると言わざるを得ない。だが、やはりこの文化は日…

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囲碁・本因坊戦縮小の衝撃(2)

 前回の続き。囲碁の最も歴史あるタイトル・本因坊戦が縮小するということをで、この業界には激震が走っている。なぜ囲碁界がここまで衰退したのか、筆者なりに考えてみた…

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囲碁・本因坊戦縮小の衝撃(1)

 囲碁界がざわついている。三大タイトル戦のひとつである本因坊戦の縮小が発表されたからだ。といっても何がどう衝撃なのか、囲碁に興味のない人には伝わらないと思うので…

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人それぞれの恐怖

 また水害が起きた。気候変動の影響もあってか、ここのところは毎年のように大きな天災が起きており、危険度は年を追って増していると思える。だが地理学科卒の友人に言わ…

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最長・最短の背番号

 拙著「番号は謎」は、電話番号や郵便番号、原子番号からマイナンバーまで身の回りの番号の起源や謎に迫った本であるが、中でも一番ページ数を割いたのが、野球の背番号で…

3

置碁の新しいルールを考えてみた

 さて今回はまた囲碁の話。囲碁には、「置碁(おきご)」というハンデ戦がある。両対局者の実力の差に応じて、いくつかの黒石を盤面に置いた上でスタートする方式だ。アマ…

はじめてのお説教

 あれは筆者がまだ会社の寮にいたときのことであるから、もう20年以上前だろうか。なぜかは知らないが、不動産投資の会社からマンションを買えという電話がしつこくかかっ…

20

題名について考える

 本を書く仕事をしていると、避けて通れないのが「本の題名を考える」ことである。何しろ長い時間とエネルギーをかけて執筆した本であり、その売れ行き次第では家族一同が…

4

結界としての業界用語

 書店で雑誌を眺めるのが、筆者の趣味の一つである。雑誌と言っても決まったものではなく、全く知らないジャンルのものをランダムに手にとってみるのだ。へー、こういう用…

8

自由置碁のこと

囲碁AIが人類の世界王者を打ち破って、世界を驚かせたのは2016年のこと。それから4年、AIはさらに進歩して、人類の手が届かないくらいに強くなってしまった。たとえば最近…

1

n路盤全滅問題

筆者の趣味のひとつに囲碁があるのだが、今まであまり文章で書いたことがなかった。せっかくnoteがあるので、こちらを活用してたまには何か書いてみよう。 囲碁に関して、…

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六合折り紙(2)~斜方立方八面体のバリエーション

六合折り紙(2)~斜方立方八面体のバリエーション

 前回、6枚の折り紙を前後・左右・上下方向から組み合わせて作る作品を、「六合」と名付けることにした話を書いた。今回はその続き。

 デヴィッド・ミッチェル氏の斜方立方八面体は、既存の六合構造の作品でも代表的かつ基本的なものといえそうだ。正方形の9等分からスタートして、無駄なく立体が出来上がっている。

 ということで、このアレンジから始めてみることにしよう。元作品は3等分だが、この比率を変えてやる

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六合~折り紙6枚で作る立体(1)

六合~折り紙6枚で作る立体(1)

 最近、6枚の用紙を組み合わせて立体を作るのに凝っている(上写真)。勢いでいろいろ作ってしまったので、せっかくだから世に出してみることにする。

 上の写真のような折り紙作品を見たことがある方は、かなり多いのではと思う。ロバート・ニール氏の作品で、「オーナメント」という名前がついている。正方形3枚が直交した、シンプルで美しい造形だ。

 この作品は、風船の基本形6つを組み合わせることでできている。

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囲碁界についてその後思うこと(2)

 前回、Go-Up氏の「囲碁というゲームがこの先も活き残るには」という記事に刺激を受けて、最近の囲碁界のことを書いた。ということで今回はその続き、こういう棋戦があったらなという話。

 ・せっかく団体戦をやるならば
 日本棋院100周年の目玉企画として始まる予定の日本女子囲碁リーグについては、前回も少し触れた。しかし目玉企画と言っておきながら、いまだ特設サイトなどはできていないようだ。

 記者発

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囲碁界についてその後思うこと

 以前、囲碁の本因坊戦が縮小するという話にショックを受け、いくつかnoteに記事を書いた(こちらなど)。あれから1年以上が経ったが、若手棋士が囲碁界に見切りをつけて休場するなど、あまり明るい話題は出てきていない。

 そうした中、先日「囲碁というゲームがこの先も活き残るには」という記事を見かけた。https://note.com/gouponline/n/nedbf64883c00

 初心者向け

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囲碁の新棋戦を考えてみる

 前回の続き。このシリーズは、本因坊戦の格下げをきっかけに書き始めたものだ。これは囲碁自体の人気低下とともに、現在のタイトル戦に話題性がなくなり、人目を惹きつけなくなったためだと思う。

 実際、かなり碁を打つ人でもプロのタイトル戦には全く興味がなく、誰がタイトル保持者なのかさえ知らない人も少なくないようだ。逆に、将棋の指し方などはあまり知らなくても、将棋のタイトル戦の行方には注目している人は多い

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囲碁普及のために思いつくこと

 というわけで、前回まで本因坊戦の縮小について思うところを書いてみた。残念ながら、囲碁という分野は衰退に向かっていると言わざるを得ない。だが、やはりこの文化は日本からなくなってほしくないと思う。

 筆者自身、囲碁をやることによっていろいろなものが身についた。特に、粘り強く考え抜く能力がついたことは大きい。これは人生でも最重要の能力の一つだと思う。決断の前に抜け・漏れがないよう慎重に考えること、欲

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囲碁・本因坊戦縮小の衝撃(2)

 前回の続き。囲碁の最も歴史あるタイトル・本因坊戦が縮小するということをで、この業界には激震が走っている。なぜ囲碁界がここまで衰退したのか、筆者なりに考えてみたい。

 歴史的に見ると、少なくとも昭和の前半まで囲碁は国民的な娯楽であったといっていい。1926(大正15)年に行われた日本棋院と棋正社の対抗戦は天下の注目を集め、これを速報した読売新聞は一挙に売上を3倍に伸ばしたという。世界最大の発行部

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囲碁・本因坊戦縮小の衝撃(1)

 囲碁界がざわついている。三大タイトル戦のひとつである本因坊戦の縮小が発表されたからだ。といっても何がどう衝撃なのか、囲碁に興味のない人には伝わらないと思うので、ちょっとそのへんについて書いてみる。長文である。

 ちなみにこれを書いている人物(佐藤健太郎)は、本業がサイエンスライターで、囲碁は小学1年のときに覚えて棋歴45年。アマ4段くらいの棋力だけど、人間相手にはここ20年くらい打っていない。

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人それぞれの恐怖

 また水害が起きた。気候変動の影響もあってか、ここのところは毎年のように大きな天災が起きており、危険度は年を追って増していると思える。だが地理学科卒の友人に言わせれば、「ひと目見てそこはダメだという場所に、次々に家が建てられている」という。水害危険地域には、不動産会社から告知するよう去年から義務づけられたらしいが、どこまで機能するか怪しいものである。

 第三者の防災アドバイザーみたいな人がいれば

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最長・最短の背番号

 拙著「番号は謎」は、電話番号や郵便番号、原子番号からマイナンバーまで身の回りの番号の起源や謎に迫った本であるが、中でも一番ページ数を割いたのが、野球の背番号であった。

 何しろ背番号は、選手・ファン双方に強い思い入れを持たれているし、エピソードも豊富にある。背番号だけでも何冊も本を書けるだろうし、実際にも多くの関連書籍が出版されている。筆者ももっと書きたいことはあったが、だいぶ削らざるを得なか

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置碁の新しいルールを考えてみた

 さて今回はまた囲碁の話。囲碁には、「置碁(おきご)」というハンデ戦がある。両対局者の実力の差に応じて、いくつかの黒石を盤面に置いた上でスタートする方式だ。アマチュアの場合は、だいたい一段差につき一つの石を置く。五段と初段が打つ場合は、4つの黒石を置いて打ち始めるわけだ。専門用語では四子局という。置き石の配置については、ウィキペディアを参照されたい。

 この置き石は、一つあたり約10目くらいのハ

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はじめてのお説教

 あれは筆者がまだ会社の寮にいたときのことであるから、もう20年以上前だろうか。なぜかは知らないが、不動産投資の会社からマンションを買えという電話がしつこくかかってきたことがある。投資といっても、いかにも怪しげな聞いたことのない会社で、営業マンの声も聞くからにうさんくさい。どこの世間知らずでも、こいつに数千万の財産を託すバカはいねえだろと思うような代物であった。

 最初は丁寧に対応していたが、あ

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題名について考える

 本を書く仕事をしていると、避けて通れないのが「本の題名を考える」ことである。何しろ長い時間とエネルギーをかけて執筆した本であり、その売れ行き次第では家族一同がおまんまの食い上げになるわけであるから、そりゃあもう必死で考えざるを得ない。

 しかしこれを言うとたいてい驚かれるのだけれど、著者には本の題名をつける権利はないのである。もちろん意見は聞かれるが、最終決定を下すのは出版社の編集会議であり、

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結界としての業界用語

 書店で雑誌を眺めるのが、筆者の趣味の一つである。雑誌と言っても決まったものではなく、全く知らないジャンルのものをランダムに手にとってみるのだ。へー、こういう用語があるのか、こういうのがこの業界では価値があるんだなあ、といろいろ勉強になる。たまに、今まで想像もしなかった濃厚な世界観を持った雑誌に出会うと、小躍りしたくなるほど嬉しい。

 で、この間衝撃を受けたのが、とある若い女性向けファッション誌

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自由置碁のこと

囲碁AIが人類の世界王者を打ち破って、世界を驚かせたのは2016年のこと。それから4年、AIはさらに進歩して、人類の手が届かないくらいに強くなってしまった。たとえば最近、「野狐」という対局サイトで九段で打っている人が、8子置いてAIに負けたという話があった。野狐九段といえば、最低でも院生か県代表クラス、要するにほとんどプロに近い実力が必要だと聞く。それが8子置いて負けるとは、にわかには信じがたいが

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n路盤全滅問題

筆者の趣味のひとつに囲碁があるのだが、今まであまり文章で書いたことがなかった。せっかくnoteがあるので、こちらを活用してたまには何か書いてみよう。

囲碁に関して、そのパズル的側面はあまり語られてこなかったように思う。筆者がちょっと考えているのは、以下のような問題だ。

”n路盤に、黒石をいくつか配置する。ここに入ってきた白石を全滅させるためには、黒石を最初に最低いくつ置けばよいか”

たとえば

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