囲碁界についてその後思うこと(2)

 前回、Go-Up氏の「囲碁というゲームがこの先も活き残るには」という記事に刺激を受けて、最近の囲碁界のことを書いた。ということで今回はその続き、こういう棋戦があったらなという話。

 ・せっかく団体戦をやるならば
 日本棋院100周年の目玉企画として始まる予定の日本女子囲碁リーグについては、前回も少し触れた。しかし目玉企画と言っておきながら、いまだ特設サイトなどはできていないようだ。

 記者発表はYouTubeで生中継されたが、パワポのスライドなども用意されていない上、音声も非常に聞き取りづらく、リーグ戦のルールなどもよくわからない。このへんのグダグダさ加減、もうちっとどうにかできんのだろうか。

 聞くところによれば、4名のチームから監督が選んだ3名が出場し、対戦相手はドラフト順位によって固定されるという。誰を何番目に配置するか、自由に決められる方が戦略性が出そうに思うが、なぜ固定順位制にしたのだろう。だったら何のために監督がいるのかと思う。

 個人的には、エキシビジョンマッチでもいいから、団体戦ならではの形式を試してみてほしい。たとえば、監督の指示で選手が一局の途中で交代しながら戦う、タッグマッチ形式はどうだろう。中盤に強い選手、ヨセのうまい選手などをうまく配置できれば、戦略性も生まれる。見ている方としても、ここでエース投入!などと盛り上がれるのではと思う。

 あるいは、チームごとに部屋に分かれ、4人で相談しながらPC経由で戦う相談碁というのはどうだろうか。見ている方には、プロの考えていることがある程度わかる面白さがある。また、あれこれしゃべっている姿を見れば、選手のパーソナリティも伝わることだろう。以前も書いたが、棋士の人となりを知らずして、推したくなるはずもない。人柄を見せる工夫は、今まで囲碁界ではまるでなされてこなかったが、必要なことではと思う。

 ・小路盤で見せる工夫
 以前、テレビ棋戦があるのだからYouTube棋戦もあっていいと書いた。ただ、囲碁は終了まで時間がかかり、NHK杯の早碁でも1時間半はかかる。持ち時間8時間、2日制のじっくりしたタイトルマッチもよいが、タイパ重視が言われる世の中、スピーディに終わる棋戦もあっていいのではないか。

 特に初心者、初級者は、難しい内容の碁を長時間見続ける気にはなかなかなれないと思う。囲碁の中継はほとんど上級者向けで、初心者お断りのものが多いとよく指摘されるが、時間の面からも配慮があってしかるべきだ。

 短時間で終わる棋戦として、フィッシャールール(初期持ち時間1分、1手ごとに5秒が追加)の「新竜星戦」があるが、正直いってなじめない。解説を挟むひまもなくバタバタと手が進んでしまい、視聴者は置いてけぼりだ。特に初級者には、全く理解不能だろう。

 ならば9路盤などの小さい盤で戦う棋戦はどうか、となる。実際に、女流棋士の9路盤トーナメントなども行われ、YouTubeで実況もされた。試みとして大変よいとは思う。

 ただ、9路盤は初心者向けの入門用というイメージを持たれがちではあるけれど、プロレベルではそうなっていない。研究が進んだ結果、最初から石と石がぶつかり合い、かなり難解なものになってしまっている。また、ある程度定石を覚えていないと即ツブレにもなりかねず、今や「覚えゲー」の要素がかなり強くなってきている。

 というわけで、筆者は11路盤というサイズが面白いのではと思っている。いちおう序盤・中盤・終盤という概念もあり、その分初心者には9路よりも見ていてわかりやすいと思う。また、打ち手によってある程度個性を表現できるサイズでもある。しかも打てる場所は19路の3分の1程度なので、早碁なら30分少々で終わるだろう。普及を目指すツールとして、悪くないのではないだろうか。

11路盤の盤面の例

 もちろん、こういうことをやったらすぐバズるというほど、話は簡単ではないと思う。だが囲碁界は、残念ながら今や圧倒的に不利な形勢だ。今まで通りの手段をただ続けるのではなく、次から次へ勝負手を連発しなければ、局面の打開は難しい状況だろう。伝統を守るのもいいが、新しいスタイルにチャレンジすることも必要と思う。


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