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主に短編の台本、朗読用小説を投稿しています。 常識的な範囲でご利用ください。 一応利用…

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主に短編の台本、朗読用小説を投稿しています。 常識的な範囲でご利用ください。 一応利用について以下に書いておきます。 使用方法:作者名/URLを表示 商用利用は不可です。投げ銭はご自由に。 Twitterへのリプライなどで上演を知らせていただけると喜びます。

記事一覧

短編/ 失せ鏡

指輪を無くした。振られた。散々な日だった。 「失せ鏡様、失せ鏡様、失せものを探してください」 お呪いを唱える深夜二時。水に鏡を沈めて覗くと、失せものが映る。そん…

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10日前
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台本/0:0:3/京都の魔 鬼

京都の裏の意味での掃除屋が入りびたる事務所は、また異なる掃除も携わっている場所。今は石材屋となっているが、鬼の伝説ゆかりの地、宴の松原(えんのまつばら)跡で、伝…

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10日前
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台本/0:0:3/京都の魔 清

京都の裏の意味での掃除屋が入りびたる事務所は、また異なる掃除も携わっている場所。今日は事務所の持ち主である法師が東山で起きた事件で疲労しきっているであろう陰陽師…

Kei
10日前
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台本/0:0:3/京都の魔 賽

場所は京都の西院。平安京の西の果てではあるが、現代は大通りが交差している。今日も今日とて生活用品の買い出し中に、一日で起こった凶行と巡り合わせで異界を垣間見る。…

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10日前
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台本/1:1:0/時の川べり

川で遊んでいると見知らぬ少女が眺めていた。無理やり遊びに誘ったが、その帰りに少女はキーホルダーをなくしてしまう。キーホルダーを見つけた少年は返そうと考えるが少女…

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1か月前
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台本/0:0:4京都の魔 縁

京都の裏の意味での掃除屋が入りびたる事務所は、また異なる掃除も携わっている場所。明らかに普通ではなく顔色の悪い通行人を連れ込んだことから事件にかかわってしまう。…

Kei
1か月前
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台本/0:0:3/眠り流し

地方で七月七日の朝に水浴びをすることで一年早起きができるというネンブリ流し。そんな山奥の行事に参加して楽しんでいたが、宿泊していた家で娘が目を覚まさなくなってし…

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1か月前

台本/0:0:2/京都の魔 葬

京都のひねもの屋の主人と一筋縄ではいかない人間の京都の歴史とちょっとした事件の会話。 書き直す可能性大。 A:京都の取材?そんなもん色んなとこあるさかい、こんな…

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1か月前

台本/0:0:2/セレクトシーリングコート

心機一転、ロンドンにやってきて人生の選択をしにやってきた『私』と会話している子供。そんな中、駅の向かいのホームで見かけた親子の行動を見て、子供が提案してきたこと…

Kei
1か月前

台本/1:1:0/ミカエリサマ

ライトな雰囲気です。おんぼろ学校に赴任してきた矢絣に袴をはいた女性教師と、生徒の会話。 初めて会う人種に戸惑う少年に大人の対応をしている女性教師と思っていると、…

Kei
1か月前
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台本/3:0:0/回天江田島

敗戦濃厚の中、技術士官と兵科士官教官との戦争に負けた、そのあとの未来を見据えた会話。 そして、戦後の教官の息子と元技術士官の未来を見据えた会話。 戦時中の前半は…

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1か月前

短編台本/0:0:2/厄捨て山

怖くないです。タクシーの運転手とさびれた山奥の風習について話す乗客。 0:山奥・タクシーの中 A:*姥捨《うばすて》山ってのはね、齢六十になった老人……今となっち…

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2か月前

短編台本/0:0:2/ペットホスピス

A:この度は、弊社のペットホスピスをご利用いただきありがとうございます。早速で申し訳ありませんが、契約書に記載の通り、ご愛猫のお世話を誠心誠意、努めさせていただ…

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2か月前
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短編:サナトリウムからの手紙・二月

 元気にしていますか。  近頃は随分と陽が暖かくなりましたね。でも日陰はまだまだ寒くて、カーディガンと膝掛けが手放せません。  私がサナトリウムに来てから六ヶ月…

Kei
6か月前
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短編小説(朗読):相合傘/試作

 いつも通る一本道に、いつもと違う小さな三角形がぽつんと描かれていた。三角形を二つに割るように長い線が描かれている。相合傘だ。  子供のおまじない。その傘の下に…

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6か月前
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短編:仮想魔術講義:悪魔とは

悪魔とは何か。 英語圏ではデビル、イーブルなどと呼ばれる。大抵は神に敵対するものとして描かれている。 しかし我々ヒトは彼らと敵対しているわけではない。 我々は神…

Kei
9か月前
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短編/ 失せ鏡

短編/ 失せ鏡

指輪を無くした。振られた。散々な日だった。

「失せ鏡様、失せ鏡様、失せものを探してください」

お呪いを唱える深夜二時。水に鏡を沈めて覗くと、失せものが映る。そんな都市伝説を試してみようという気になったのは、そんな理由だった。何か失くしたものが見つからないかと思ったのだ。

自然光の電球の明かりの下、白いプラスチックの風呂桶に水を入れ、古いコンパクトを開いたまま夏の生ぬるい水に沈める。

水の中

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台本/0:0:3/京都の魔 鬼

台本/0:0:3/京都の魔 鬼

京都の裏の意味での掃除屋が入りびたる事務所は、また異なる掃除も携わっている場所。今は石材屋となっているが、鬼の伝説ゆかりの地、宴の松原(えんのまつばら)跡で、伝説を模した儀式跡にあらわれた鬼退治をすることになった。

飛鷹:しっかし妖怪退治の依頼ねえ。
法師:妖怪やあらへん。化け物や。妖怪いうんは明治以降やで。あとちょっと勉強が必要やな。
飛鷹:化け物の勉強とはまた嫌な話だな。
法師:簡単に覚えと

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台本/0:0:3/京都の魔 清

台本/0:0:3/京都の魔 清

京都の裏の意味での掃除屋が入りびたる事務所は、また異なる掃除も携わっている場所。今日は事務所の持ち主である法師が東山で起きた事件で疲労しきっているであろう陰陽師を訪ねようとしていた。

飛鷹:今日は珍しい。出かけるんだな。どこに行くんだ。
法師:発言の順番おかしいと思わへん?人を引き篭もりみたいに言わんといてくれはる?
飛鷹:引き篭も……(咳払い)。出かけること自体珍しいじゃないか。
法師:まあえ

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台本/0:0:3/京都の魔 賽

台本/0:0:3/京都の魔 賽

場所は京都の西院。平安京の西の果てではあるが、現代は大通りが交差している。今日も今日とて生活用品の買い出し中に、一日で起こった凶行と巡り合わせで異界を垣間見る。

無:ねえ。
A:……誰?
A:(M)声をかけられたことに慌てはしなかった。なぜか、自分にしか見えない、聞こえない、例えるなら死神のように思えたからだ。
無:君、そのままだと死ぬよ。
A:……そのつもり。
無:死んだ後も辛い思いをするよ。

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台本/1:1:0/時の川べり

台本/1:1:0/時の川べり

川で遊んでいると見知らぬ少女が眺めていた。無理やり遊びに誘ったが、その帰りに少女はキーホルダーをなくしてしまう。キーホルダーを見つけた少年は返そうと考えるが少女はなかなか現れず……。

だい:おい、針に餌付けてやるからこっちよこせ。ほら、落とすなよ。
しほ:そんなこといったって、ちょっと、どっちに向ければいいの?
だい:(M)勉学より野山を駆け回っていたことが多かった。
だい:こんくらいとっとけば

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台本/0:0:4京都の魔 縁

台本/0:0:4京都の魔 縁

京都の裏の意味での掃除屋が入りびたる事務所は、また異なる掃除も携わっている場所。明らかに普通ではなく顔色の悪い通行人を連れ込んだことから事件にかかわってしまう。
法師以外は特に方言である必要はない。

鳥居:そんな!横暴な!ここは先祖代々受け継いできた土地なんだ。立ち退き料をいくら上げるといわれてもそんな簡単に手放せるものじゃない。大体、近所の土地だって売りに出されいていたわけじゃないだろう!……

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台本/0:0:3/眠り流し

台本/0:0:3/眠り流し

地方で七月七日の朝に水浴びをすることで一年早起きができるというネンブリ流し。そんな山奥の行事に参加して楽しんでいたが、宿泊していた家で娘が目を覚まさなくなってしまう。

0:山の中、いかにもといった田舎の風景の中、川で水浴びをしている。
A:七月七日に、七夕以外にこんな行事があるなんて知りませんでしたよ。っと、偶然なんでしょうかねえ。
B:さあ、少なくとも織姫彦星とは関係ないと思いますよ、そんな浮

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台本/0:0:2/京都の魔 葬

台本/0:0:2/京都の魔 葬

京都のひねもの屋の主人と一筋縄ではいかない人間の京都の歴史とちょっとした事件の会話。
書き直す可能性大。

A:京都の取材?そんなもん色んなとこあるさかい、こんな辺鄙なところにある、流行る気配もないひねもの屋に聞きに来ることあらへんやろ。それにしてもええ腕時計してはるなぁ。
B:ああ、いいでしょう、幸い私は他人に時計を見せびらかすことを趣味としていまして、もっと見せましょうか。私ロレックスとかも好

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台本/0:0:2/セレクトシーリングコート

台本/0:0:2/セレクトシーリングコート

心機一転、ロンドンにやってきて人生の選択をしにやってきた『私』と会話している子供。そんな中、駅の向かいのホームで見かけた親子の行動を見て、子供が提案してきたことは……。

A:十月、ロンドン。おやつどきを過ぎた頃には日が暮れる。
B:三時のおやつは……どこの習慣だったかな?
A:ここに私がきたのは、一人の人間として暮らすためだ。周囲の人間関係、仲が悪いわけではないが親からの将来に対する催促、どんな

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台本/1:1:0/ミカエリサマ

台本/1:1:0/ミカエリサマ

ライトな雰囲気です。おんぼろ学校に赴任してきた矢絣に袴をはいた女性教師と、生徒の会話。 初めて会う人種に戸惑う少年に大人の対応をしている女性教師と思っていると、女性教師がこの地方由来の伝承を少年に尋ねたことがきっかけで徐々にそんな雰囲気はなくなってしまい……。 時代は大正あたりかもしれない。

A:ある日、島に若い教師が赴任してきた。
A:一学年しかないおんぼろ学校に赴任してきた教師の姿は、はいか

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台本/3:0:0/回天江田島

台本/3:0:0/回天江田島

敗戦濃厚の中、技術士官と兵科士官教官との戦争に負けた、そのあとの未来を見据えた会話。 そして、戦後の教官の息子と元技術士官の未来を見据えた会話。 戦時中の前半はAと教官の会話。 戦後の後半はBとAの会話。

A:太平洋戦争末期の一九四四年、完成したのが特殊戦艦、人間魚雷、回天だった。天をめぐり、戦局を挽回するという願いが込められた名前とは裏腹に、九三式魚雷を改造した魚雷は、人の命をくべて物量で勝

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短編台本/0:0:2/厄捨て山

短編台本/0:0:2/厄捨て山

怖くないです。タクシーの運転手とさびれた山奥の風習について話す乗客。

0:山奥・タクシーの中
A:*姥捨《うばすて》山ってのはね、齢六十になった老人……今となっちゃ老人なんていうのもまだ早いが、とにかく『時が来た』老人を捨てにいく山のことでね。捨てられるのが父親だったり、母親だったり、捨てにいくときに孫や息子がついて行ったり。捨てにいく家族はどんな気持ちだったのかは推し量れないし、色々な場合があ

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短編台本/0:0:2/ペットホスピス

短編台本/0:0:2/ペットホスピス

A:この度は、弊社のペットホスピスをご利用いただきありがとうございます。早速で申し訳ありませんが、契約書に記載の通り、ご愛猫のお世話を誠心誠意、努めさせていただきますね。ホスピスといってもきちんと消毒管理しておりますので、いつでもお会いに来ていただいてくださって構いませんからね。
B:先に入居している猫ちゃんも大人しくて、他の猫と仲良くしています。もし、気が合わないようなら部屋をわけるなどの対応を

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短編:サナトリウムからの手紙・二月

短編:サナトリウムからの手紙・二月

 元気にしていますか。

 近頃は随分と陽が暖かくなりましたね。でも日陰はまだまだ寒くて、カーディガンと膝掛けが手放せません。

 私がサナトリウムに来てから六ヶ月がたちました。近頃は窓から、菜の花に風が流れていくのを眺める日々を過ごしています。

 近頃は右半身に力が入るようになり、左手と左足が少し動くようになりました。何とか布団をまくり上げて、自分で寝返りを打つこともできるようになりましたよ。

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短編小説(朗読):相合傘/試作

短編小説(朗読):相合傘/試作

 いつも通る一本道に、いつもと違う小さな三角形がぽつんと描かれていた。三角形を二つに割るように長い線が描かれている。相合傘だ。

 子供のおまじない。その傘の下に恋人になりたい者同士の名前を書くと恋愛が叶う、恋人同士がただその関係を書き記す。そのように使われることの多い模様。

 舗装し締め固められたばかりの暗い色のアスファルトの上に小さく、白くくっきりと描かれていた。その相合傘の下には誰の名前も

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短編:仮想魔術講義:悪魔とは

短編:仮想魔術講義:悪魔とは

悪魔とは何か。

英語圏ではデビル、イーブルなどと呼ばれる。大抵は神に敵対するものとして描かれている。

しかし我々ヒトは彼らと敵対しているわけではない。

我々は神ではなくヒトであるからだ。

ならば彼らは我々の味方であるのか。否。彼らは悪性であるからヒトから悪とされている。

古来、魔術師は彼らを召喚し使役したとある。例にもいとまがなく、天使の召喚よりも容易く行われている形跡すらある。
それは

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