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💎癒やしの宝箱💎

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#伊集院秀麿さん

掌編: 霧にいた二十年

掌編: 霧にいた二十年

 霧の朝を車内で迎えた。
二十年記念日は雲海を見ながら過ごしたい、
そんな夫の要望で日付が変わる頃には家を出て、車内で眠っていた。

 目覚めると辺りは霧の中。ほんの数メートル先が幕を張ったように不透明。対向車のヘッドライトも白味がかってマイルドな光を射す。
めくる風景は山林で、枝がない真っ直ぐな杉が整然と緑を成していた。

「もうすぐ着きますよ」
 夫は正面を見たまま、私の起きた気配で声をかける

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正直、創作に嫌気がした人へ

正直、創作に嫌気がした人へ

 頭や理屈で判っていても、
心が受け入れないときがある。

 なんの慰めにもならないけど、
気分が換気できればと思い、書いてみる。

 わたしはコロナ禍にある頃、
二軒のクラブから雇われママとしてスカウトされた。理由は聞いてない。聞いても忘れた。

 その頃は皆さまもご存知のように、飲食店は大打撃に遭う最中。

「いつまでも世間は閉じてない。
やがて再開する日が来るので、そのときにお願いしたい」と

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短編: 恋愛体質の母を捨てる

短編: 恋愛体質の母を捨てる

 ホームルームで配られた用紙は、文理選択を問うもので、担任は
「大学受験に関係するから、お家の人にも相談しなさい」と言う。
 しかし相談できる人がいない私は、一人で決めなければならない。
 四つ折りにした紙をクリアファイルに詰め込み、ため息が漏れた。

 うちは母子家庭。母は一人で私を育てているが、恋愛体質で、私のことは必要な時にしか寄ってこない。

 いつも彼氏の話ばかりで、ブログでは子育てにつ

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短編: 地球さんの独り言

短編: 地球さんの独り言

 地球さんは自転と公転を続けていた。
紺碧の姿を保ちながら、時折、近づく彗星のことが気になって仕方がなかった。

「地平線から飛行機が、
水平線から船が落ちそうだ」

地球さんはため息をついた。

「どんなに批判されても、
それでも私はまがっているんだよ」

 地球さんの大気は、時折荒れ狂うこともあった。だが、しっかりとオゾン層で守られていた。

「どれだけ嫌がらせされようと、私はガッツリ守られて

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質問: どんな文章に惹かれますか?

質問: どんな文章に惹かれますか?

今朝は志彌 -ゆきみ-さんの、下記の疑問を
わたしなりの考えで書きます。

みんなはどう思う?皆さんは、どんな文章に惹かれますか?

自分らしく書くこと

読者に寄り添うこと

どっちが大切だと思いますか?

自分らしさへも寄り添いへも、
「共感」が前提です。

読まれるnoteの書き方入門へ
「共感する記事を書こう」と目にします。

意味は分かるのですが、
自分にとって『あるある』は、
他人に共

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当たってない診断やってみる?

当たってない診断やってみる?

noteには路地裏という巨大組織があって
表参道のような洗練された精鋭部隊がいる場所

地方の限界集落にも流行は広まり
良ければ、こちらをご覧の皆さまも
下記にアクセスしておためしあれ!

今日から『ももまろのテーマソング(診断上)』

【閲覧注意】わたしは書くことと自分が好き

【閲覧注意】わたしは書くことと自分が好き

藤原華さんのコンテストに落選しても
恐らく週末に発表される創作大賞に落選しても
その前にあった三羽烏さんの短歌企画に落選しても
この先、どんなコンテストや企画があっても
落選から免れず
でも、きっとわたしは書いているよ

藤原華さんからの新たなお題 #なぜ私は書くことができているのか

単純に、書くのが好きで内観したいだけ

日常の出来事や経験、派生した感情を書き留めることは、自分の気持ちを客観的

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落選のお気持ち表明

落選のお気持ち表明

🌸*・゜゚・*:.。..。.:*・''・*:.。. .。.:*・゜゚・*🌸
2024年 note創作大賞 中間発表
通過なさった305名の皆さま
おめでとうございます
心よりお慶び申しあげます
ひとえに 日頃のご精進と実績の賜物と存じます
今後のますますのご活躍をお祈りいたします

🌸*・゜゚・*:.。..。.:*・'・*:.。. .。.:*・゜゚・*🌸

落ちちゃったので、どんなお気持ち

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秋に聴くプレイリストなり🍂

秋に聴くプレイリストなり🍂

あまりにも有名な曲なので説明不要かな

ヴァネッサ・パラディは
わたし1人だけで再生回数を稼いだかもしれない

学生時代から本当に好きだった曲
19才からわたしの中ではフランス革命で
服はアニエス・ベー
フランスかぶれしていたわ

チョイスしたプレイリストをしみじみ見て
「自分のことしか考えないヤツ」
曲の思い出に
友情は絡んでも、恋愛が噛んでない
当時の出来事は鮮明に浮かんでくるのにね

夏が終

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小説:ペトリコールの共鳴 ①

小説:ペトリコールの共鳴 ①

【あらすじ】

妻の遥香が死去し、深い悲しみに包まれたタツジュンの前に、まさかのことが起きる。亡くなった妻の生まれ変わりのようなハムスター"キンクマ"が話しかけてきたのだ。キンクマの言葉に導かれるタツジュンは少しずつ心の重荷を下ろす。

しかし、SNSで出会った謎の女性"愛羅"が、タツジュンの生活に変化を及ぼし始める。愛羅の本性は一癖ある人物で、遂にはタツジュンを危険な状況に追い込む。

そんな中

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黄昏まだ先のこと

黄昏まだ先のこと

猫の奈々へ
たまにはあなたへ詩を贈ろう

もうすぐ17歳
奈々は若くはない
グレーの毛並みには白髪が混じり
でも緑色の目は輝きを持つ

奈々は鮮やかな存在を放ち
掴みどころのない在り方は
心地よい距離感でわたしに欠かせない

寝るとき
わたしはあなたへ手を差し出す
あなたは手のひらを枕にし
朝になるとお尻を乗せている

奈々が冷たく感じる

奈々、冷たいってなんだろうな
わたしは今でも言われてしま

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映えてるの 燻んでるの

映えてるの 燻んでるの

恋したの感覚が思い出せない
恋はする? される?
恋は落ちる
落ちる?
あっ、 落ちた

30代や40代で恋すると痛いらしい
出産までの手段なのね

つまんない

終わりかけの恋を片付ける

「きっと自分だけがこんな思考」
「これが面白い、楽しいって人は居ないね」
「めっちゃ好きな感触」
わたしだけだろうなって孤独を覚えたとき

自分と同じ刺さり方をする似た感性の人がいたら
味わい深い歩みになりそ

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建前だけの優しさしか

建前だけの優しさしか

たまに優しいと褒められる
「そうかな?優しくなりたいけど
優しくはないぞ、わたし」

褒めてくれた人には言わないけど
わたしの上澄を、優しいと感じてくれたなら
本当に優しくしたんだろうし
労力や時間をかけても、冷たいと感じるなら
本当に冷たかったんだろう

基本、人様とわたしは違う人間
後から
「そう思ってくれたなら嬉しい」思い直す

優しさは値踏みの対象で
失望という形で他人の気持ちを低く評価す

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自分へエールを送る日

自分へエールを送る日

◇◆◇
『感謝』を口にするだけなら、ナンボでも言え
人様へ「感謝しています」
告げたところで、板につかない言葉は上滑り

棲家も食べ物も神さまが与えてくれたのだから
神さまに感謝せよと言われても
神さまはそんなことを望んでいるのか、分からん

感謝は
「わたしは何を希望しているか」
ここを明瞭に自覚しないと得られないと思う

希望している物事を手にして実感でき、満足し
逆に、当然だと思っていた物事

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