見出し画像

『「介護時間」の光景』(124)「火星」。9.9.

 いつも読んでいただいている方は、ありがとうございます。おかげで、書き続けることができています。

  初めて読んでくださっている方は、見つけてくださり、ありがとうございます。
 私は、臨床心理士/公認心理師越智誠(おちまこと)と申します。

(※いつも、この「介護時間の光景」のシリーズを読んでくださっている方は、「2003年9月9日」から読んでいただければ、重複を避けられるかと思います)。

「介護時間」の光景
 

 この『「介護時間」の光景』シリーズは、介護をしていた時間に、どんなことを考えたのか?どんなものを見ていたのか?どんな気持ちでいたのか?を、お伝えしていこうと思っています。

 それは、とても個人的なことで、断片的なことに過ぎませんが、それでも家族介護者の気持ちの理解の一助になるのではないか、とも思っています。

 今回も、昔の話で申し訳ないのですが、前半は「2003年9月9日」のことです。後半に、今日「2022年9月9日」のことを書いています。


(※ この『「介護時間」の光景』シリーズでは、特に前半部分の過去の文章は、その時のメモと、その時の気持ちが書かれています。希望も出口も見えない状況で書いているので、実際に介護をされている方が読まれた場合には、気持ちが滅入ってしまう可能性もありますので、ご注意くだされば幸いです)


2003年の頃

 私は、元々は、家族介護者でした。

 1999年から介護が始まり、2000年に、母は入院したのですが、私は病院に毎日のように通い、家に帰ってきてからは、妻と一緒に義母の介護を続けていました。自分が心臓の病気になったこともあり、仕事は辞めて介護に専念せざるを得ない状況でした。

 母の病院に私が通っても、医学的にプラスかどうかは分かりませんでしたが、でも、通わなくなって、2度とコミュニケーションが取れなくなったままになったら、と思うと、怖さもあって通い続けていました。

 転院当初は、それ以前の医療関係者にかなりの負担をかけられていたこともあり、最初は、うつむき加減で通い続けていましたが、2年経つ頃に、病院へ信頼感も出てきたと同時に、母の症状も比較的安定していました。

 だから、2003年の頃は、自分も穏やかだった頃かもしれません。

 そのころの記録です。

 毎日のように記録はとっていました。周囲の小さな変化に対しても、今よりも敏感だったような気もします。


2003年9月9日

『午後2時前に病院に着いたのは、月に1度のボランティアの日だったからだ。

 毎月、病院に入院している人たちの誕生日会があって、その時に、一人一人に渡す誕生日カードがあって、それを制作するボランティアだった。

 うまくいかないところもあったけれど、他にも病院のスタッフの方や、私と同様に家族が入院している方々と一緒に、なんとか12枚できた。

 午後4時前に、4階に上がって、母の病室へ行き、一緒に買ってきたぜんざいを半分ずつ食べた。

 母は、私が昨日来たのか、一昨日来たのか、よくわからなかった。

 久しぶりに、この病棟でよく顔を合わせるご家族の方に会えて、やっと、この前の御礼を渡せた。

 母は夕食を35分かけた。

 スタッフの方が、別のスタッフの人に「バスなくなるわよ」と声をかけている。

 午後7時に病院を出る。
 母のそばにあるノートが1冊終わった。

 色々なことを片っ端から書いているようで、とにかく忘れないように、という気持ちなのだと思った』。


火星

 火星がもっとも地球に近づいています。

 というニュースを母の病室で見た。

 病室から月が丸く見えた。その左側の少し下に星があった。違うかもしれないけれど、ニュースで見たあとのせいか、火星のような気もしてきて、月とセットのようだった。

                         (2003年9月9日)


 この生活はいつまでも続くように感じていたが、翌年2004年に母はガンになり、手術もし、一時期は落ち着いていたが、翌年に再発してしまった。そして、2007年に母が病院で亡くなり、「通い介護」が終わった。

 義母の在宅介護は続いていたが、臨床心理学の勉強を始め、2010年に大学院に入学し、2014年には臨床心理士の資格を取得し、その年に、介護者相談も始めることができた。

 2018年12月には、義母が103歳で亡くなり、19年間の介護生活も突然終わった。昼夜逆転のリズムが少し修正できた頃、コロナ禍になった。


2022年9月9日

 あれだけ暑く、しばらく気温も下がらない感じも続いていたけれど、ここのところ、一段、涼しくなってきたような気がする。

 今日は曇りだけど、明日は晴れるらしいから、たまった洗濯ができて、うれしい。

ご近所

 昨日は、ご近所の方が、食事会を開いてくれた。

 それは、妻がずっとこの地元に生まれて育って、ちゃんとした関係を築いてくれたから、私も参加できたけれど、外出を自粛し、ほとんど人と会うこともない毎日を過ごしていたから、アクリル板がある飲食店で、少人数であっても、直接、会って話をするというのは、ずっとこもるような生活をしているのとは、全く違う。

 楽しい時間だったこともあって、食べ過ぎて、久しぶりに、食後に胃が痛くなって、焦った。

支払い

 最近、壊れたエアコンを買い替えて、近所の電気屋さんで新しいのを設置してもらった。

 ずっと故障していて、スイッチを入れても風は流れるが、温めることも、冷やすこともできないままで、だけど、少しは効果があるのではないかと思っていたが、やっと空気の温度が調整できるようになり、やっぱりちょっとホッとした。

 請求書もポストに入っていて、だから、支払いに行くために、自分たちにとっては、大金を持って、払い、これで一段落もして、その後に、妻が好きだという天然酵母のパン屋さんでパンを買って、あとはメモを見て、買い物をして、戻る。

繰り返し

 何もしていない気がしているけれど、自分もそうだし、家族にも持病を持った人間がいると、なんとなく収束しつつあるようにも見られているコロナ禍も、まだ続いているようにしか思えない。

 医療機関の逼迫が完全に解消されていないかもしれず、適切なタイミングで治療が行われない可能性もあるので、感染した時に、重症化しやすいとしたら、怖くて、少しずつ追い込まれているような気がしているが、それでも、まだ外出をなるべくしない生活は続きそうだ。

 繰り返し、こうして同じようなことを思い続けるのも、どこか疲れる思いもある。

 庭の花は、なんとなく秋っぽくなってきている。





(他にも介護のことを、いろいろと書いています↓。よろしかったら、読んでもらえたら、うれしいです)。



#介護相談       #臨床心理士   #介護の終わり
#公認心理師    #家族介護者への心理的支援    #介護
#心理学       #いま私にできること   #相談窓口
#家族介護者   #臨床心理学   #自己紹介
#介護者相談 #家族介護   #介護家族 #介護職 #転換期
#介護相談   #心理職   #支援職   #家族のための介護相談
#私の仕事   #介護を知ること   #介護への理解
#専門家   #介護者のこころの相談室   #家族介護者の方へ
#介護時間の光景   



この記事が参加している募集

#自己紹介

231,593件

 この記事を読んでくださり、ありがとうございました。もし、お役に立ったり、面白いと感じたりしたとき、よろしかったら、無理のない範囲でサポートをしていただければ、と思っています。この『家族介護者支援note』を書き続けるための力になります。  よろしくお願いいたします。