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ネコ型ロボットと精神医学〜海外文献の紹介〜

あんなこといーな、できたらいーな…♪ (えっ?古い?)」

はい、皆様こんにちは、鹿冶梟介(かやほうすけ)です。

ネコ型ロボット”と聞いて、おそらく多くの皆様は、「二頭身の、青いタヌキのようなアイツ」を思い浮かべたと思います。

そして「鹿冶さん…、さすがにド◯えもんと精神医学って…、無理があるんじゃない?」とツッコミを入れるでしょう…。

…が、しかし!私は声を大にして言いたい!

誰もド◯えもん何て、言っていませんヨ!ネコ型ロボットと精神医学の話です!

…と、タイトル詐欺のようになりましたが、今回は「ネコ型ロボット」を用いた精神医学的研究を紹介します。


【せん妄とは?】

今回の研究を紹介する上で、まずは「せん妄」という用語を説明します。

せん妄とは、意識障害を背景とした一過性の急性精神症状群であり、意識、注意、認知、知覚が障害され、睡眠障害や精神運動活動、情動が障害させる状態です。

典型的には手術後の術後せん妄や、アルコール依存症の患者が急に飲酒を止めた時に生じる離脱せん妄、認知症患者の夜間せん妄などが挙げられます。
以下に、せん妄の診断基準を示します。

せん妄 delirium
以下の基準のA-Eをすべて満たす。
A.注意の障害(すなわち、注意の方向づけ、集中、維持、転換する能力の低下)および意識の障害(環境に対する見当識の低下)
B.その障害は短期間のうちに出現し(通常数時間~数日)、もととなる注意および意識水準からの変化を示し、さらに1日の経過中で重症度が変化する傾向がある。
C.さらに認知の障害を伴う(例:記憶欠損、失見当識、言語、視空間認知、知覚)
D.基準AおよびCに示す障害は、他の既存の確定した、または進行中の神経認知障害ではうまく説明されないし、昏睡のような覚醒水準の著しい低下という状況下で起こるものではない。
E.病歴、身体診察、臨床検査所見から、その障害が他の医学的疾患、物質中毒または離脱(すなわち乱用薬物や医療品によるもの)、または毒物への曝露、または複数の病因による直接的な生理学的結果により引き起こされたという証拠がある。

American Psychiatric Association. Delirium: Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders (DSM‑5), 5th ed. Washington, DC: American Psychiatric Association, 2013:596-601.

せん妄の原因
原因となる因子は大きく分けて、以下の3つに分類される。
1.直接因子: 脳疾患、臓器不全、感染、血液学的異常、電解質異常、栄養障害、薬物の副作用または薬物の離脱症状
2.準備因子: 高齢、慢性脳疾患(認知症など)
3.促進因子: 痛みなどの身体症状、断眠(不眠)、感覚遮断(または過剰)、不動化、心理社会的ストレス

せん妄の治療
1.原因となる因子の除去。
2.環境調整(夜間は暗く日中は明るく、温度・湿度調整、騒音の軽減、カレンダー・時計など日付や日時がわかるものを置く、慣れ親しんだものを周りに置く、声かけを多めに etc…)
3.薬物療法(少量の非定型抗精神病薬を使用することが多い) 

「せん妄」については、概要はわかりましたでしょうか?
それでは、この「せん妄」を「ネコ型ロボット」で治療する研究を紹介いたします。

【論文紹介】

New Approaches for the Treatment of Delirium: A Case for Robotic Pets, Schulman-Marcus J et al., Am J Med, 2019

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30738728/

<目的>
ペット型ロボットが、せん妄治療に有効であるかを検討する。

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