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新著書がくる!最終回〜バナナストローの12月〜私の医療事故 後日談②〜

こんにちは!勝浦です。
本日11月1日(水)に発刊する新著「ひと言でまとめる技術」
その完成までの軌跡をコラムで連載しています。
amzn.asia/d/g0dMOqO

最後のコラム内容をひと言でまとめると、
「何事も学びに変えていこう」です。

(前回からのつづき)

目の前に現れたのは、医療ミスを犯した女性看護師でした。
ぼんやりとした記憶の中で手術の直前にカテーテルを誤って挿入したその顔が、ハッキリとした輪郭を伴って浮かんできました。

「この度は…私のミスでこのような事になってしまい、お身体を傷つけてしまって本当に申し訳ございませんでした」

肩が震えて、泣きそうな青ざめた顔で彼女は僕の前で頭を下げました。

医療ミスが起きた当初。カンファレンスルームで状況聞き取りが行われた時、病院関係者がズラリと並ぶ中、僕は病院側に言ったのです。

「ミスを犯した看護師さんに対して、謝罪や面会を僕は求めません。
なぜなら今回のことは、貴病院の構造的な問題だと考えているからです。
カテーテルを入れる際の取り決めに不備があったと僕は考えています。
入院中、他の看護師さんにはたいへん良くしていただきました。
今回のことを個人の問題に矮小化しないでいただきたい
」と。

なので、目の前で少し震えながら謝り続ける看護師さんには、怒りはなく、同情の念だけがありました。

「はい、もう大丈夫です。ミスは誰にでもあると思いますし、私は貴病院の組織運営の問題だと考えています。あなたを必要としている方がたくさんいます。これからも困っている患者さんを助けてあげてください」

重い扉を開け、病院の奥に隠された応接室を出て帰路につきながら、
「事故に遭ったのは不運だったが学びは多かった」
そんなことをずっと考えていました。

理不尽な事故、戦争、天災、疫病。

我々の人生に、ある日、暴力的に大惨事はやってくること。
平穏な日常が、瞬時に壊される危険性が誰にもあること。
そして、抗うのはほとんど不可能であること。

それでも、起きてしまったことを悔やむより、
這い上がり、立ち上がり、そこから何かを学ぶばなければならないこと。
時は待ってくれない。刻々と変化する局面で、最善の一手を打ち続けるしかないこと。

僕は日本の医療に基本、信頼を置いている人間です。
たとえば、具合が悪ければすぐに病院に行きますし、
コロナのワクチンも積極的に接種しています。

この医療事故でその信頼が揺らぐことはありませんでしたが、
それでも「ある分野における専門知識がない人間は、
時に大きな損害を受け、ブラックボッスの中で不利益を被る」
ことを思い知ったのは、良い経験でした。

もちろん、素人考えや判断は危険です。
でも、最近の医療は、インターネットの発達もあって、
「いま、自分の身体がどういった状況にあり、どの治療が用いられているのか」は自力で調べることが可能です。
薬局で処方薬をもらったら、とりあえずその薬を調べるクセもつきました。

人間は弱い生き物だから、ときに他人の痛みに鈍感です。
自分が「当事者」になった時の学びの深さとは比べ物にならないのです。

話はようやく明日発売の、「ひと言でまとめる技術」に戻ります。

新著では「言葉で生き抜いてきた」僕が、これまでビジネスの当事者として、失敗や挫折を繰り返しながら、それでも命綱にしてきたことを言語化し、「31のコツ」として書籍化したものです。

言語化力、伝達力、要約力が身に付く。

と謳っていますが、それは僕があの「バナナストローの12月」を
言葉で乗り越えたことで、より自信をもってお伝えできるようになりました。

泣き寝入りせずに現状を把握し、病院側に自分の主張をシンプルに伝える。
けして、丸め込まれない。ただ、個人攻撃はしない。
問題の核心を言語で規定し、投げかけ続け、状況を改善に導く。

追い込まれたことで力がつく、なんとも皮肉ですが、真理です。

人は、最後は言葉で状況を打破していくしかないのですから。

これで新著「ひと言でまとめる技術」の出版記念コラムはおしまいです。お付き合いいただき、ありがとうございました。

出版日記かと思いきや、話がだいぶ広がってしまってすいません。
でも、コラムってそういう回り道の余裕を楽しむものだと思うので、ご理解のほどを。

新著は、回り道の少ない社会生活に役立つ本です。

著書を通じて、今回も望外の嬉しい出会いが待っているはずです。
そのどこかに、今このコラムを読んでくれているあなたがいればさらに嬉しいなあ。

最後にひと言。

「この旅のどこかで、お会いしましょう!」

おしまい。


#勝浦雅彦
#ひと言術
#ひと言でまとめる技術
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