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政治家の世襲はダメで、皇室の世襲はいいんですか? 日本保守党への疑問

もっともな疑問


日本保守党が、

「いまの政治家はボンボンばかり」

と批判し、

「議員の家業化をやめる」

を重点政策として押し出したものだから、さっそく支持者らしき人から疑問の声が上がっていた。


私は世襲がダメという考えは好きではありません。安倍晋三さんだって世襲です。世襲を一括りにしてバッシングすることはどうかと思います。日本では古来より天皇陛下におかれても世襲、徳川幕府など、伝統的に世襲文化が根付いています。世襲や金持ちは無能という考え方は同意しかねます。


その疑問を、党首の百田尚樹は以下のように「一刀両断」した。


皇室の世襲と政治家の世襲を一緒くたに考える程度の思考能力しかないあなたの同意を得る気はありません。


そうかなあ。

もっともな疑問、まともな思考能力から出てくる疑問だと思う。

こういう当たり前の疑問を、作家なら「一刀両断」して済む。

だけど、「首相を目指す」という政治家になったんだから、そうはいかないと思うよ。


右翼のいやなところ


百田党首の反応には、右翼のいやなところを見た思いですね。

私はリベラルで、右翼ではないし、右翼とは喧嘩もしてきた。

でも同時に、右翼のいいところを、自分の人生でたくさん見てきた。愛国心が強いこと、自分を捨てることができること、社会的弱者に優しいところとか(外国人の弱者に同情心があまりおよばないのは残念ですが)。

でも、やっぱり右翼が嫌いなのは、

「身分違いだ! 頭(ず)が高い!」

と、国民にたいして、すぐ言い出しそうなところですね。

そういう「身分制」「封建的」なところがどうしてもある。それが右翼のいやなところだ。

日本保守党も、「庶民派」のふりをしているけど、疑わしいと思う。


世襲についての上記の疑問は、たぶん、日本保守党の痛いところを突いている。

だから、日本保守党は、「世襲」ではなく、「家業」という言葉を多用して、その弱点から目をそらさせる印象操作をしている。(「家業化」と言い換えれば、安倍晋三や皇室は批判対象外になる、というような)

それは、日本保守党の重点政策項目で、「家業化」を大見出しにし、「世襲」をわざわざカッコ付きにしている表現にも、表れている。


5.議員の家業化をやめる

1.国会議員の歳費、地方議員の報酬を一般国民並みの給与にまで引き下げる。
2.政党交付金を諸外国の事例に鑑み、半額程度に引き下げる。
3.資金管理団体の「世襲」を見直す。
(日本保守党HP「重点政策項目」)


17日の結党会見でも、河村名古屋市長が「世襲」と言いそうなところを、横から有本事務総長が訂正する場面があったから、そこが「痛い点」であることは、かなり意識している。


保守党は立憲君主制を理解しているのか


私がこういうことを言っているのは、決していまの皇室をおとしめたいからではない。

私は、昭和天皇には戦争責任と敗戦責任があると思っているが、いまの皇族の方々は関係ない。いまの方々には敬意をもっている。

私は、長期的には天皇制は廃止すべきだと思っていますが、それは憲法9条を廃止すべきだと思っているのと同じです。


右の「万世一系」も、左の「憲法9条」も、私は同じだと主張している。

それがないと日本人のモラルが保てない、という考えは、日本国民を愚民視しており、結論的には民主主義となじまない。

天皇制も、いますぐどうこうしろと言いたいわけではない。いまの皇族の方々は立派だ。それは、やはり昭和の記憶と教訓がまだ生きているから。でも、代が変わっていけば、わからない。

9条も同じで、いますぐ実害になっていると言えないかもしれない。しかし、将来的には害になる可能性、もしかしたら比較的すぐに害になるかもしれない。だから、変えたほうがいいと思っている。


まあ、その話は別として、皇族の方々は「右翼」ではない、と信じてますよ。

国民に対して、「あなた方とわれわれは身分が違う。頭が高い」とは言わないし、そう思っていないと信じている。

「国民とともに憲法を守ります」

とつね日ごろおっしゃって、国民と同じ目線で接するようにされているからね。


だから、皇族の方々は、「世襲」「家業」だから自分たちがいまの立場にある、とは、公式にも言ってないし、思ってらっしゃらないと思う。

憲法にさだめられた地位を果たすためにいる、国民統合の象徴、憲法価値の象徴として、そこにいる。そう思ってらっしゃると思う。

えらそーな言い方で恐縮だけど、右翼でも、それをわかっている人はわかっていると思う。

でも、前にも書いたけど、日本保守党の党首がそれをわかっているのか、はなはだ疑問ですよ。「憲法を守る」という言葉がまったくないからね。


世襲、家業化が悪いわけではない


私に言わせれば、世襲も家業化も同じであり、そして、世襲、家業化が悪いわけではない。

というか、それに反対するのは、保守主義に反するのではないかと思う。

家族ってのは「世襲」そのものでしょう。

伝統の継承として、世襲を守るのが「家族価値 family value」であり、その象徴として天皇制がある、という考えが、日本の保守主義にはあるはずです。

つまり、日本の社会のモラルは家族が担っており、その家族のモラルを体現して、模範となっているのが皇室だ、と。

そのモラルの根本に世襲がある。世襲の否定は、保守主義の否定になる。


ということを、リベラルの私が言っても説得力がないでしょうが、右翼の田中英道大先生も言ってましたよ。


田中英道「天皇陛下の歴史の御講演を拝読す」 日本国史学会、連続講演会、令和元年6月8日


ここで田中が言っているのは、日本の荘園制ーー不動産の世襲が天皇制を持続させたと同時に、土地の世襲が「日本人の心と文化を安定させた」ということですね。

この「不動産の所有が人心を安定させる」、つまり、不動産が不動心を作る、というのは、最近の研究でも実証されてる。


田中は、そこから、日本は領地争いで内戦がなかったから平和だった、共産中国は土地の私有をゆるさないから銭ゲバだ・・といった主張につなげていく。

そうした主張の真実性については、また別の記事で問題にしたいけど、田中の理論は、「万世一系だから尊い」といった身分論より、やはり高級ですよ。

(最近の田中先生は、義経=チンギス・ハーン説とか、どんどんトンデモに寄っていて、楽しい反面、ファンとしては心配ですが)


カネではなく、土地をばらまけ


そして、田中の理論「不動産の世襲が文化を安定させる」が正しいなら、その恩恵を、さらに国民に平等に広げるべきだ、というのが、私のようなリベラルの発想ですね。

天皇の権威と権力は「おおやけ」、つまり国土全体の「大家」であるところに源泉があった。

いまの皇族の権威の源泉は憲法なのだから、「大家」のほうの権威は、国民全体に配分されなければならない。

つまり、世襲や家業化はダメだと言うより、世襲や家業化するに値するものを、できるだけ平等に手に入れやすくしろ、というほうが正しい。

つまり、むしろ世襲を拡大せよ、世襲でみなが利益を得るようにせよ、と。


世襲に値するもの、その世襲によって「心が安定」するもの、それは、田中英道先生いうとおり、「土地」ですよ。不動産です。カネではない。

日本保守党や減税日本みたいに、政治家の給料を下げればいい、というのは、さもしいポピュリズムだと思う。

不当な特権は廃すべきだが、政治家の給料が下がったところで、われわれが得するわけではない。

政治家の給料が下がると、貧乏で優秀な人が政治家にならなくなる。なっても、すぐ金欠で、貧乏出身ほど汚職とかでつかまりやすくなる。「ボランティア」で政治ができる金持ちだけが政治家になる恐れがあるだろう。

そもそも「給料」ーーカネなんて、すぐ消えるものだから、一時的に「給付」されたところで、たいしたものではない。


問題は「土地」「不動産」だ、と、庶民ならよく知ってるはずです。人生の大半を「家賃」を払うため費やしてきた私ふくめて。

政治家の給料なんかより、国民が不動産を入手しやすくすること、そして、それを子供たちに世襲しやすくすること、のほうがはるかに大事でしょう。

それが最大の少子化対策になる、と、以前書いたことがあります。

土地を所有し、そこで安心してずっと住めると思うからこそ、そしてそれを子供に残せると思うからこそ、子供を作る気にもなる。土地をもっている金持ちはそうです。

でも、子供を作るのに、30年ローンとかの重い借金を背負わなければならず、返済はどうなるかわからないという不安定さでは、なかなか子供を作る気になれないでしょう。



日本保守党の話から外れていくから、このあたりにしますが。

それに、国民の本当の利益に寄与しようとしない罪は、できたばかりの日本保守党だけのものではない。他の与党、野党のほうがはるかに罪が重い。


とはいえ、日本保守党は、もう少し日本の大問題に切り込んでくれると思ったが。

あの名古屋の市長は、他人様の「ふところ」の話ばかり。それに引きずられ、保守党も、他のつまらない野党と同じ、主張がサヨクの「生活闘争」的になってるのが残念です。


(ただ、18日の名古屋の街頭演説で、百田党首が堂々とマスコミ批判したのはよかった。もっとやれ!)



<参考>



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