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福祉先進国フィンランドのリアルを知る〜今日の日本を変えるには福祉先進国から学ぶ!〜




KAiGO PRiDE WEEK  DAY-6「フィンランドから学ぶ」2024年2月22日(木曜日)

パーソライネン・ヒトミさんは、フィンランドに29年間住み、看護職に従事している日本人です。彼女は元々旅行業界で働いていましたが、フィンランドのホテルでの勤務を経て、現地で家族を持ち、介護職へと転職しました。コロナを機に看護職に興味を持ち、資格を取得し、現在は認知症患者が住むケアハウスで働いています。


「介護に関係ない人はいない」KAiGO PRiDE WEEK 2024 のメインメッセージ

フィンランドの介護施設:ケアハウスの概要

フィンランドでは、「施設」という言葉よりも「ケアハウス」という表現が一般的で、これは住人が自宅のように快適に生活できるようデザインされています。ヒトミさんが勤めるケアハウスでは、18名の認知症の方々が各々独立した部屋で生活しており、共有スペースも提供されています。

ケアハウスのデザインと活動

フィンランドのケアハウスは、自然に囲まれた環境に位置し、モダンで暖かみのあるデザインが特徴です。部屋は個人の趣味に合わせてカスタマイズでき、共有スペースではピアノが置かれたり、クリスマスツリーが飾られたりするなど、季節感を取り入れたアットホームな雰囲気を大切にしています。また、屋外には花壇があり、夏には住人とスタッフが一緒に庭の手入れをしたり、バーベキューを楽しんだりすることもあります。

家具も温かい色合いの物を選択するなど工夫しているとのこと。


付加的な設備とサポート

ケアハウスにはサウナやジムなどの設備もあり、住人は週に一度これらの施設を利用することができます。認知症の住人はスタッフのサポートを受けながら、これらの施設を利用することで日常生活に活動的な要素を加えています。

フィンランドのケアハウスは、ただの介護施設ではなく、住人が快適で尊厳を持って生活できるよう配慮された環境です。自然との調和、デザイン性、住人の自由度、安全性を考慮した施設運営は、福祉先進国フィンランドの介護の理念を象徴しています。パーソライネン・ヒトミさんの体験を通じて、フィンランドの介護現場の実態とその進歩性を垣間見ることができました。

サウナ大国フィンランドで、高齢者の方を週1回サウナに連れて行くとのこと。


フィンランドの介護勤務体系

フィンランドの介護施設では24時間体制の三勤制が一般的です。パーソライネン・ヒトミさんは、朝勤、夕勤、夜勤の各シフトに分かれて勤務していますが、夜勤は基本的に希望者が中心です。この柔軟な勤務体系は、スタッフの働きやすさを考慮したものです。

日々の業務と患者への対応

看護職として、ヒトミさんは薬の管理、個々の起床時間の配慮、朝食の提供など、患者一人ひとりのニーズに応じたケアを行っています。フィンランドの介護施設では、患者の個人的な好みや日々の体調を尊重し、できる限りその人らしい生活が送れるようサポートしています。

自己決定の権利の尊重

フィンランドでは、自己決定の権利が法律で保護されており、患者の自由を可能な限り尊重します。これは、安全ベルトの使用やベッドサイドレールの設置など、患者の行動を制限するすべての措置に本人の同意、もしくは医師の許可が必要であることを意味します。介護職は、患者の自由と安全性のバランスを取りながら、患者が自分の人生に関する決定を下せるよう支援しています。

フィンランドの介護現場では患者一人ひとりの個性と自己決定の権利が重視されています。このようなアプローチは、尊厳と自立を支え、患者にとって最も快適な環境を提供することを目指しています。

フィンランドの福祉文化

フィンランドは、個人の自立と共生を大切にする社会福祉先進国です。この国の福祉システムは、自己決定権の尊重と社会全体での支援が柱となっています。


個人主義と社会支援の融合

フィンランドでは、子供の早期からの自立が奨励され、個人主義と社会の支援が有機的に組み合わさっています。社会は、子供を育て、老後の面倒を見る責任を共有しており、親と子供の間にも独立した個人としての尊重が存在します。この文化は、教育システムからも明らかで、自己決定権の重要性が強調されています。

忍耐と根性の文化

フィンランド人は忍耐強く、根性があるとされ、日本人と共通する国民性を持つとヒトミさんは語ります。しかし、その根底には、助けが必要な時には互いに手を差し伸べる、信頼と協力の精神があります。この文化は、福祉サービスの提供方法にも反映されており、プロフェッショナルな介護を受けることが一般的です。


自立とプロフェッショナリズム

フィンランドの福祉では、家族よりもプロフェッショナルによる介護が優先され、高齢者や障害を持つ人々が尊厳ある生活を送ることを重視しています。自分の親を介護施設に預けることに対する社会的な罪悪感は少なく、安全かつ専門的なケアを受けることが望ましいとされます。また、プロフェッショナルとしての誇りと責任感を持って仕事に取り組む姿勢が、どの職業にも求められています。

「プロフェッショナルでありなさい。」「自分の仕事に誇りを持ちなさい。」とフィンランドは職業問わずマインド面の指導もあるとのこと。


日本との比較

フィンランドの福祉文化は、日本の家族中心の介護とは対照的です。フィンランドでは、個人の自立が強調され、介護は専門家に任せる文化が根付いています。この違いは、両国の福祉システムに対する根本的なアプローチの違いを示しています。しかし、どちらのシステムもそれぞれの社会に合った形で成立しており、一方が他方より優れているわけではありません。

フィンランドの福祉文化は、個人の自立と社会的支援のバランスに基づいています。このバランスは、教育、介護、そして全ての社会システムにおいて一貫しています。日本との比較を通じて、異なる福祉のアプローチから学ぶことは多く、これらの知見は両国の福祉システムを改善するための貴重な参考になり得ます。フィンランドの例は、プロフェッショナルな介護の重要性と、個人の尊厳を守る社会システムの構築に向けた一つのモデルを提供しています。


フィンランドの福祉制度と実体

フィンランドの福祉制度は「高福祉・高負担」という特徴を持ち、全ての国民が質の高い教育、介護、医療サービスを受けられるよう設計されています。消費税は一般的に24%と非常に高く、所得税も高い水準ですが、これにより老後の生活や子供の教育などが保障されています。

介護サービスに関しては、低所得者でも高所得者と同じサービスを受けられるよう、所得の85%を介護費用に充て、不足分は自治体や国が負担するシステムを採用しています。この結果、どのような経済的背景を持つ人でも平等にサービスを享受でき、社会全体で助け合う文化が根付いています。

フィンランドの福祉制度は、税金を通じた社会全体の負担により、教育から介護まで生涯にわたって国民を支えることを目指しています。この制度は、国民一人ひとりが安心して生活できる環境を提供することで、平等と公平を実現しています。高い税負担には文句も出るものの、平均されたサービスが国民全体に提供されるシステムは多くの国民から支持されており、フィンランドの社会福祉の強固な基盤となっています。

フィンランドの介護現場における多様性

フィンランドでは、外国人労働者が介護分野で活躍する機会が増えています。言葉の壁や文化の違いは存在するものの、国際色豊かな職場での受け入れが進んでいます。特にフィリピンからの看護師がフィンランドで資格を取得し、介護助手として働くプログラムが注目されています。これはフィンランドの介護現場が、多様性を受け入れ、共に学び成長する姿勢を持っていることを示しています。

パーソライネン・ヒトミさん自身も、旅行業から介護業界に転身し、介護職に魅力を感じた一人です。彼女は職場の支援と無料の教育プログラムを利用し、1年7ヶ月で資格を取得しました。介護職への情熱は、お年寄りとのコミュニケーションや、自身の家族との関連性から来ており、仕事を通じて自己実現を図っています。

フィンランドの介護業界は、外国人労働者を積極的に受け入れ、多様性と専門性を兼ね備えた環境を提供していることが伺えます。


フィンランドからのメッセージ:介護の世界的価値と日本への橋渡し

ヒトミさんは、介護が地味で地道な仕事である一方で、人間の基本的なニーズに対応する、非常に重要で充実した職業だと感じています。介護職は、老いた人々から学び、彼らの人生の経験から力をもらうことができる貴重な仕事です。ヒトミさん自身、外国人としてフィンランドで働きながら、介護職のグローバルな価値と普遍性を実感しています。

フィンランドの介護現場は、国際色豊かで、異なる文化背景を持つ人々が協力し合っています。この多様性は介護業界全体にとって大きな強みとなり、異文化間の理解と協働を促進します。ヒトミさんは、介護業界がこれからもっとグローバルに発展し、異文化間での経験交流が活発になることを願っています。

ヒトミさんの経験と考えは、日本の介護職の人々に向けた強いメッセージとなり、国境を越えた介護の知識と経験の共有が、世界共通の課題に対する理解を深め、介護の質を向上させることにつながるという信念につながっています。そして介護が地域や国を超えて人々をつなぐ貴重な橋渡し役であることを教えてくれます。


最後にヒトミさんは「私も逆に一度日本で介護の仕事をしてみたい」と話してくれた



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