マガジンのカバー画像

【住宅と建築】建築学生なら知っておくべき「住宅」の話

9
運営しているクリエイター

記事一覧

【住宅と建築】08_【愛の時代】に出来ること

【住宅と建築】08_【愛の時代】に出来ること

これまで7回に渡り「住宅」の歴史について書いてきた。

「量」の時代から「質」の時代、そして現在の「量+質」の時代を経て、これからの時代を、生意気に【愛の時代】を呼んでみたが、「住宅」において、社会に出て数年経った建築士に出来ることはなんなのだろうか。

【住宅と建築】というマガジンの最後に、これから行う【新事業】について発表したい。

それにはまず現状の「住宅産業」について語る必要がある。

もっとみる
【住宅と建築】07_2010年代 東日本大震災を経て「建築は何ができるのか」

【住宅と建築】07_2010年代 東日本大震災を経て「建築は何ができるのか」

量+質の時代これまで積み上げてきた歴史によって、ハウスメーカーが作る「住宅」は、大量生産だけでなく様々な機能を住宅内に取り入れたカスタマイズとより安全に暮らせる「質」の向上によって、量+質の両方を持つ「商品住宅」となった。

「質」の高い住宅を工業化システム化することで、安価な金額で戸建住宅を購入可能というのは、やはり魅力的であった。システム化した木造や軽量鉄骨を現地に搬入して、安い、早い、品質の

もっとみる
【住宅と建築】06_2000年代 質の時代とリノベーション

【住宅と建築】06_2000年代 質の時代とリノベーション

2000年代に入り、既存の建物を改修して継続利用するいわゆる「リノベーション」というものが流行り始める。

リノベーションの時代戦後の1960-70年代に生まれた世代は、高度成長期のレトロな街並みに憧れを抱いていた。映画「三丁目の夕陽」を見て、その時代を経験していない人たちも、「なんだか懐かしい」とノスタルジーを感じるのは、あの時代に憧れているからだとも言われている。

「リノベーション」が本格的

もっとみる
【住宅と建築】05_1990年代 バブル期と「都市」を読み込んだ建築家

【住宅と建築】05_1990年代 バブル期と「都市」を読み込んだ建築家

1986年から1991年までの好景気は一般的にバブル期と呼ばれているが、住宅産業においてもバブル期は大きく影響している。

バブル期「土地は絶対に下がらない」

上記のバブル期は主に不動産を中心とした資産価格の高騰によって引き起こされ、都心では5〜15億ほどの超弩級な高級マンションまで販売された。

さすがにこの金額のマンションを購入できる人は少なく、ファミリー層は郊外へと流れていく。都内で高額物

もっとみる
【住宅と建築】04_1980年代 不況、そして再び「住宅」は都市に開く

【住宅と建築】04_1980年代 不況、そして再び「住宅」は都市に開く

1978年、第二次オイルショックによって日本は不況に陥る。

【不況から成長したハウスメーカー】オイルショックにより住宅が簡単には売れなくなると、ハウスメーカー達の「商品住宅」のマーケティングでの差別化の競い合いは激化した。

次々に新しいスタイルの「新商品」を大衆にウケそうなキャッチフレーズをつけて販売することで、消費者の誘い合うようになった。

1980年代の大きな流れの一つとしては、1981

もっとみる
【住宅と建築】03_1960-70年代「住宅」は都市から撤退する

【住宅と建築】03_1960-70年代「住宅」は都市から撤退する

何故「住宅」をわざわざ都市と断絶するという言い方をしたかというと、60年代から70年代にかけてはメタボリズムが流行していたことが挙げられる。その時代の建築家の関心は専ら「都市」に向いていた。

「住宅」VS都市磯崎新氏が「都市から撤退する」と言ったのは、「住宅は建築ではない」と考えていたことと関係している。

集合住宅においても、「都市への関心」は強く、その頃から再開発によるニュータウンは各地で進

もっとみる
【住宅と建築】02_1960年代の「小住宅」と「商品住宅」

【住宅と建築】02_1960年代の「小住宅」と「商品住宅」

1960年代に入ってからも、大量生産の波は止め処なく押し寄せて来た。その背景には経済大国とまで言われるようになった日本の国家政策が影響している。

【商品住宅の誕生】1955年から71年にかけての日本における経済成長の発展期を「高度経済成長期」というわけであるが、当時の内閣総理大臣である池田寿人は「10年で国民の所得を2倍にする」というスローガンのもと輸出の拡大、技術革新や工業化の推進等の政策を行

もっとみる
【住宅と建築】01_1950年代「住宅」の始まりと2つの時代背景

【住宅と建築】01_1950年代「住宅」の始まりと2つの時代背景

1945年、日本は焼け野原になった。

【大量供給の時代】第二次世界大戦終戦後、建築家に与えられた使命とはとにかく住宅を供給することだった。50年代の1つの情勢としては、大量供給というキーワードは欠かせない。

ル・コルビジェの弟子として有名な前川國男氏も、床と壁をパネル化した「プレモス」という木造量産型住宅を計画している。1000戸程作って役目を終えたそうだが、50年代、建築家はこぞって小規模住

もっとみる
【住宅と建築】00_実家を新築した話と新マガジン

【住宅と建築】00_実家を新築した話と新マガジン

2016年の年末、祖母から電話があった。

「実家を新築するから」

私が育った埼玉県にある実家は、駅から徒歩25分とかなり不便な場所にある。郊外では珍しくないことなのだが、80歳を過ぎた祖母にとって、徒歩25分という道のりは果てしなく遠い。

「駅徒歩3分のところに、敷地を見つけたから、そこを買って新築する」

建築条件付きの敷地で、施工も兼ねた不動産の会社で、どうやら設計もその会社が行うらしい

もっとみる