【住宅と建築】07_2010年代 東日本大震災を経て「建築は何ができるのか」
量+質の時代
これまで積み上げてきた歴史によって、ハウスメーカーが作る「住宅」は、大量生産だけでなく様々な機能を住宅内に取り入れたカスタマイズとより安全に暮らせる「質」の向上によって、量+質の両方を持つ「商品住宅」となった。
「質」の高い住宅を工業化システム化することで、安価な金額で戸建住宅を購入可能というのは、やはり魅力的であった。システム化した木造や軽量鉄骨を現地に搬入して、安い、早い、品質の高い住宅は、ハウスメーカー住宅の基本形である。一戸建て住宅に住みたいと思っている人は、まずこのハウスメーカーに行くことが多いのではないだろうか。
システム化した部材によって工事費を抑えることでハウスメーカーは設計費用をあげて儲けを獲得している。
そうしたハウスメーカー住宅は、「量+質の時代」である現在の完成形とも言える。
そして、大量生産を諦めた建築家の「住宅」は、都市のコンテクストを読み込み、個人依頼主に対して、「より豊かな暮らしとは何か」を提案していくことで、存在価値を獲得していったのだ。
東日本大震災
2011年3月11日 東日本大震災が東北地方を襲った。
新耐震基準によって安全性を獲得できていたと思われた「住宅」も、津波に飲み込まれてしまった。
そうした状況を目の当たりにした建築家たちは、「建築は何ができるのか」と今一度考えるようになった。復興施設として様々な建築家たちが取り組んだ「みんなの家」は人との繋がりの重要性を顕著に表現している。
更に、東日本大震災が起きた時に建築を学び始めた私たち世代は、特にその傾向が強かった。
構造物としての建築デザインよりも、「建築を作ることの意味」や「建築を作る上で大切なものは何か」ということを深く考えた世代でもある。
だからこそハードとしての提案よりもソフト的ないわゆる計画学が再熱するようになり、人の「心」を重視した建築を提案するようになってきた。
そうした流れは、集合住宅の設計において「集まって住むことの意味」を深度化させることに繋がっていく。
そして「住宅」は新たな時代へ
戦後の住宅難を救うべく始まった大量供給としての「量」の時代、不景気を乗り越えるべくして進化し続ける事で得た「質」の時代、そして東日本大震災を経験し「建築にできることは何か」を深く議論する時代へと変わっていった。
「量」の時代から「質」の時代、そして「量+質」の時代を経た現在、そして今後は一体どういう時代なるのだろうか。
そう考えた時、ここからは歴史ではなく個人的な意見にはなるが、やはり個人依頼主に対して、依頼主の個性に合わせた「住宅」をいうのもを提供したいと考えている。
それが私の希望でもあるし、建築家の使命であるとも思う。
もちろんハウスメーカーの住宅を否定する気はない。違うフィールドとして、建築家として、「住宅」を考えることをやめてはならない。
「住宅」において、個人依頼主に対して住宅への「愛着」を持つことの意味をしっかりと提案したい。
だからこそ私はこれからの「住宅」の時代を【愛】の時代と呼ぶことにした。
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最後に「住宅と建築」を学ぶためのオススメ本を紹介します。
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