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第3章 書庫にて 第9話

第9話 旅立ち


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 朝陽が窓からこぼれ落ち、部屋をほのかに照らす。
 静かな朝の息吹が二人の部屋に染み渡っていく。
 それは二人にとって初めて共有する朝だった。

 眼がゆっくりと開き、目の前に広がる景色を感じ取る。
 頬にはアイザックの腕がそっと回されていて、彼の体温がその肌を包んでいた。

――― そうか、私たち恋人同士になったんだ。

 顔を上げ、彼の顔を覗き込む。
 ちょうど目を覚ました瞳と目が合った。

「おはよう、レイラ」

 それは、静かな朝の平穏を壊すまいと、ほんのささやきのよう。

「おはよう、アイザック。」

 私も同じようにささやき返した。
 共に過ごす新たな一日を歓迎するように。

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 私たちが恋人同士になった翌日、旅の間アイザックの家の管理を頼むため、二人で兄のレオンのもとへ向かった。

 レオンは私より8つ年上で、しっかり者のお兄ちゃんだ。24歳になった彼は、母から引き継いだ商店をさらに発展させようと毎日奮闘している。

 リンゴの木が並ぶ道を二人で歩き、村の外れにある大きな木造の建物、レオンの家へと到着した。その堂々とした家は彼の商人としての成功を物語っていた。

 呼び鈴を鳴らし出てきたレオンに私たちが恋人になったことを告げると、彼は「そうか、ついにか!?」と興奮して私たちを抱きしめた。

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「レオン、実は…」

 アイザックが言い出したところで、私が口を挟んだ。

「アイザックと二人で旅に出ようと思うの。旅の間、アイザックの家をみてもらえないかな?」

 レオンは驚いた顔をしたけど、にっこりと笑い、「そうか、二人とも昔から話してものな。もちろんだ、任せておけ!でもどうしてこのタイミングで?」と答えてくれた。

 その快諾に私はホッとし、笑顔を返す。
 それからアイザックが言葉を続けた。

 「ありがとう、レオン。それに、もう一つ伝えておきたいことがあるんだ。僕、エロティア様の祝福を授かったんだよ。」

「えっ!?」

 とレオンが目を見開いた。

「それはすごい!エロティア様は人間関係を円滑にする商売の神様だ。これは親父さんも喜ばれるな。
 うん、確かに納得だ。エロティア様の祝福を得たというのなら、お前たちが旅に出る理由も分かる。世界を見てくるといい。」

「それでね、お兄ちゃん。私たちの最初の目的地は、アイザックのお父さんがいる金色の街、エルムハースなんだ。」

「エルムハースか。それなら…」

 と言いながらレオンが立ち上がり、部屋の中を探し始めた。

「あった!これ、リナあての恋文だ。エルムハースに住んでるんだよ。届けてくれるか?」

 リナさんはお兄ちゃんの恋人。何度か私も会ったことのある奇麗なお姉さんだ。

 私たちが頷き、恋文を受け取ると、淡い光が文を包んだ。

「これは、、すごいな。これが女神様のご加護か、、、」

 初めて目にする暖かい光をレオンは驚きとともに見つめていた。

「想いが伝わるといいね、お兄ちゃん。」

 と笑いかけると

「そこはお願いしましたよ、祝福を受けた聖者様方。」

 とおどけて返された。

「アイザック、妹を頼んだぞ!」

去り際、兄さんがアイザックにそう言ってくれた。アイザックも任されたと応える。

「後、お前は少し何というか、奥手なところがあるからな。
 そうだな、男ならガッツといく時は行かないとだめだぞ!」

 と言いながら、私たちを送り出してくれた。

 ・・・お兄ちゃん、アイザックにこれ以上ガッツとこられたら、、、妹は大変です。

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 一週間後、村のみんなに挨拶を済ませた私たちは新たな世界への第一歩を踏み出し、未知の冒険に身を投じた。

 空は明るく、風は心地良く、道は私たちを待っていた。手をつなぎ、エルデンの集落から一歩一歩進んでいった。

「レイラ、僕たちの旅が始まるね。」

 アイザックが微笑んで言った。

「うん、アイザック。私、すごくワクワクしてる。」

 彼の手を握りしめ、一緒に前を見つめた。

 新たな世界、新たな冒険、そして新たな人々。
 これら全てが私たちを待ち受けている。

 私たちの旅は始まった。
 エロティア様の祝福と共に、新たな世界へと踏み出した。

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『『この人となら、どこまでも。』』


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ついに旅に出ました!!


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