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第3章 書庫にて 第8話

第8話 二人の約束


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 「ねぇ、もう一回、、、しよ?」

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 アイザックのお姫様抱っこで、彼の寝室まで運ばれたことは覚えている。
 逞しく成長した彼の肉体にドギマギしたから。

 でも、いざベッドに降ろされ、彼が覆いかぶさったるよう愛撫を始めた後の記憶は曖昧だ。

 湿った音、二人の汗が交わる香り、そして幾度となく迎えた絶頂。
 それらのことをはバラバラに記憶に刻まれているが、ひとつながりの記憶としては存在しない。

――― 嵐のようだった。いや、あれは嵐だった。

 正直何が起きたのかは、理解できていない。
 ただ、アイザックと私が恋人同士になったことだけは真実だと自己暗示をかける。
 空腹感を覚え、窓の外を見ると、夕焼けに染まった空が見えた。

 隣で気配が動いた。
 顔を見られるのが恥ずかしいので、背中を向けて気づかぬふりをする。
 すると背後から、抱きすくめられた。

「レイラ、、、」

 彼の吐息が首筋をくすぐる。
 ドキドキしながら、次の言葉を待つ。

「僕たち、今日から恋人同士だね。」

――― 私を抱える腕から、体温が伝わる。
    恋人という響きに胸が高鳴るする。
    振り返らぬままコクコクとうなずいた。

「ずっと前から考えていたことなんだけど、レイラ、僕と一緒に旅をしないか。」

――― 突然の提案に、心臓が飛び跳ねそうになる。

「覚えているかな、昔君とした約束のこと。」

 アイザックの言葉に、心が再び高鳴った。それは、幼いころに交わした、彼と二人で世界を見るという約束だった。

――― 忘れたことなんて一度もない、だってそれは私の目標だったから。
    アイザックも覚えていてくれたことに嬉しくなる。
    女神様のお話をなぞって、二人で世界を回る遊びをしたっけ。

 それは、水の女神アクヴリア様とその騎士様のお話。私が大好きなおとぎ話。
 深い愛で結ばれた二人が世界を回りながら色々な冒険をするその冒険譚は、私が一番好きな物語だった。

――― ごはんの描写が美味しそうなのも、良いのよね。真似てよく調理したな。

 ごっこ遊びでは、私が女神様でアイザックが騎士様。書庫で得た知識をもとに、様々な冒険を越え、日が暮れるまで野山を駆けた。

 冒険からの帰り道、「世界中の美しい場所を君と一緒に見たい」と言ってくれた彼の瞳は、あの時と変わらず私を真っ直ぐに見つめている。

「私も…それが夢だった」

 幸せに泣きそうになりながら、素直に告げる。
 優しく微笑んだ彼は、私の頬に手を伸ばし、柔らかい髪を指でなぞった。

「それなら、準備をしなきゃだね。」

 その言葉に、今まで以上のドキドキとともに、高まる期待感を抑えることができず、私か心の中で小さくガッツポーズをとった。

 夕日が窓からこぼれる部屋で、旅の計画を話し合った。
 二人で共に、未来への一歩を共に踏み出すために。

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 アイザックの背中を眺めながら、私は疲れ切った体をベッドに沈めた。
 彼が調理する夕食の心地良い香りがリビングから漂ってくると、ふと口元が緩む。
 私の口に入るものを思い描くと、さらに期待感が高まる。

 普段の私ならきっと一緒に手伝うところだけど、今日はただ彼の思いやりに甘えさせてもらおう。

 彼の服を借りた私の身体は、ふたりの身長差からくるそのぶかぶかさに恥じらいつつも、心地よさに包まれていた。

 かなりゆるいが、大切なところは隠せるので良しとする。乙女には恥じらいというものがあるのだ。

 とはいえ、肌に触れる服の感触が、恥ずかしさを引き立てる。
 女心とは難しいのだ。

 借りたシャツから漂う彼の甘い香りが私の心を安定させ、落ち着かせてくれた。
 これが彼の香り…と思うと、顔が少しだけ赤くなった。

「簡単なものだけど」

 と彼が頬を染めながら夕食を運んできてくれる。
 彼のためらいがなんとも愛らしい。

 私たちは笑顔を交わしながら一緒に食事を楽しんだ。食べながらアイザックは夢の中でエロティア様の祝福を受けたことを話してくれた。

 彼女エロティア様は人間関係を円滑にする女神様だ。
 私がつい彼に抱き着き、あんなことを言ってしまったのも、エロティア様の加護のおかげだったなんて…この幸せな気持ちを持つことができたことに、私は心から感謝した。

 食事を終えると、私たちは初めての目的地を決めた。
 それは、金色の街、エルムハース。
 アイザックのお父さんが住むその街で、挨拶と旅の計画を相談しようということになった。そして、私たちが旅に出る間、アイザックの家の管理は私の兄、レオンに頼むことにした。

 服のこともあり、その日はそのまま泊めてもらうことに。

 そして二人で、エロティア様の加護を探求した

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 すごかった。

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 次の日、私は母にだけ、アイザックと付き合うことになったことを伝えた。
 しかし、そのニュースは村のお姉さま方にも伝わってしまい、昼過ぎには私を取り囲んで色々と質問されるハメになった。最後には、

 「私たちのアドバイスが効果的だったようね」

 と満足げな表情で去っていった彼女たちに、私はただ苦笑いを浮かべるしかなかった。

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二人で探求した加護については、のちのストーリーで徐々に活用されていく予定です。


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