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日本の「賃上げを幅広く実現するための政策アイデアコンテスト」~日本の社会を良くしていきたい

 内閣府が、同一の会社と同一の社員について「すべての会社員を個人事業主にする」というのアイデアを公開してしまったこと、表彰してしまったことは、脱税や違法行為を大いに容認するということだと思います。

 このことについて、アイアジアグループの代表として、よく考え抜いてからnoteのテーマにすることに決めて書くことにしました。

 そもそも雇用契約と請負契約との違いは、実務上とても重要な基本中の基本で、よく押さえておく必要があると考えているからです。

 そして、日本の社会を良くしていきたいと感じているからです。

 また、日本弁護士団から、内閣府が労働関係諸法規の脱法を容認するアイデアを表彰したことに強く抗議する談話が発表されたにも関わらず、未だに法務省、国税庁、労働省からの声明が出ていないからでもあります。

 もう起きてしまったことなので、どうしようもありませんが、これが「賃上げを幅広く実現するための政策アイデアコンテスト」の責任に関わった方々の無知から起きてしまったことだと思いました。

 私は、このアイデアで優勝表彰された方は、中小企業の立場や実務での現場で悩む人たちの声を代弁した内容だと、私の経験上感じて、しかも内閣府から優勝として表彰されてしまったことを、逆にとても可哀想に感じています。

 アイデアのクリップのまとめが今の時点で、公開されていますが、良く分かりやすくポイントを押さえて、よく伝わるように周囲の方々に配慮しながら完成させていることが評価に値するとも思いました。

 要約すると、同一の会社と同一の社員について「すべての会社員を17時以降の残業について個人事業主にする」というものです。

 ところが、この考え方は、私にとっては12年間、行っている外国人就労者の相談支援活動では、現場の実務の中で経営者からよく聞く話しなんです。

 『会社側として経営者が残業代を節約するために、同一の外国人に雇用契約と請負契約を併用して結びたい、東城さんなんとかなりませんか?』

 本当に私たちにはよくこのような相談を受ける場面が多いんです。

 もちろん、外国人就労者の場合、請負契約自体が在留資格外活動となりますから、前提条件からテーブルには上がらないことになります。

ですから、内閣府がこのアイデアを優勝表彰した審査内容は、原則的に日本人を対象にしか考えなかったのだと思います。

1.雇用契約と請負契約の違い

①雇用契約の基本

雇用契約とは

 雇用契約は、労働者が会社の指揮命令の下で働き、その対価として賃金を受け取る契約です。この契約には以下の基本ポイントがあります。

〇指揮命令関係

 労働者は会社の指示に従って働く義務があり、会社は労働者に対して指示を出し、業務を管理監督します。

労働時間と賃金の規定

 労働基準法により、労働時間、休憩時間、残業代などが規定され、労働者の権利が保護されています。

社会保障及び労働保険

 雇用契約に基づき、健康保険や年金、労災保険などの社会保障の権利が従業員に与えられます。労災保険や雇用保険(失業保険)などの権利も従業員が恩恵を受けるものです。また、労災保険については通勤災害にまで及びます。

②請負契約の基本

請負契約とは

 請負契約は、請負業者が依頼者から仕事を受け、成果物を完成させる契約です。報酬は成果物の納品や役務提供の完了に対して支払われます。この契約には以下の特徴があります。

〇独立性

 請負業者は依頼者の指揮命令を受けず、自分の裁量で仕事を進めます。

※17時以降は、指揮命令を受けないとなるのは、事実に反していることになります。

〇成果物の納品、役務提供の完了

 請負契約は、仕事の過程ではなく、最終的な成果物、役務提供の完了に対して報酬が支払われます。17時以降は仮装残業になります。

 仕事の成果物、役務の提供が、業務時間数となりますから、成果報酬は契約前か契約時に具体的に言って合意されている必要があります。

 実際には事実は労働契約の延長になるものですが、請負契約を構成しないことになります。

〇社会保障、労働保険に替わるものの自己手配

 請負業者は、社会保障を自分で手配する必要があることになりますから、事実は、会社が時間外労働に対する社会保険料と労働保険料の徴収回避行為になります。

2.同一会社と従業員の間での請負契約の問題

 同一の会社として、同一の従業員の間で請負契約を結ぶことは、法律上多くの問題を引き起こします。

①実質的な労働契約


 同一の会社が同じ従業員に対して指示を出し、業務を遂行させる場合、形式的には請負契約としても、実質的には雇用契約と見なされます。これは、労働基準法などの適用を回避しようとする「偽装請負」と呼ばれ、違法です。

②指揮命令関係の維持

 同じ会社が従業員に対して仕事の進め方や内容を指示することは、依然として指揮命令関係が存在することを意味します。

 この場合、請負契約としての独立性は成立せず、労働契約として扱われます。

③労働者の保護の欠如

 雇用契約を請負契約に変更することで、労働者は労働基準法による保護を失い、最低賃金や残業代、労働時間の規制が適用されなくなります。

 これは、労働者の権利を大きく侵害する行為です。

ここまでのまとめ

 雇用契約と請負契約は、その性質や法的な枠組みが大きく異なります。

 特に、同一の会社と従業員の間で行われる請負契約は、実質的には労働契約と見なされ、労働法の適用を回避する違法行為となります。

 このような提案は、労働者の権利を守るための法律の趣旨を専門家により吟味がされていないため、私は、労働者の保護や安定した生活を損なうことにしかならないと思います。

 内閣府が優勝表彰したこのアイデアには、法的な問題点が多く含まれているため、慎重な再検討と声明が法務省、国税庁、厚生労働省から必要になります。

3.雇用契約と請負契約の違いによる脱税行為の可能性

 さらには、労働法の観点からだけでなく、所得税法や消費税法の観点からも大きな問題があります。このアイデアが実際に採用された場合、脱税行為に該当する可能性がある理由を説明します。

①雇用契約と請負契約の税務上の違い


〇雇用契約の税務処理

所得税

雇用契約に基づく給与所得は、源泉徴収制度により、会社が毎月の給与から所得税を天引きし、国に納めます。

社会保険料

会社は労働者の社会保険料を給与から天引きし、労使双方の負担分を合わせて支払います。

〇請負契約の税務処理

所得税

 請負契約に基づく所得は事業所得として扱われ、個人事業主が自ら確定申告を行い、所得税を支払います。

消費税

 個人事業主は、一定の売上高を超える場合、消費税の納税義務があります(基準期間の課税売上高が1,000万円を超える場合)。

②脱税行為

〇所得税法違反

偽装請負による所得隠し

 会社が従業員を個人事業主として扱うことで、源泉徴収を回避し、実際には給与として支払われるべき金額が事業所得として処理されることとなります。

 偽装請負となるため、青色申告控除の65万円を適用させている場合、また必要経費の算定も曖昧になることとなり、正確な所得税が納付されず、脱税行為となってしまうと思います。

申告漏れのリスク

 個人事業主が自らの所得を正確に申告しない場合、所得税の申告漏れが発生します。

 特に、従業員が給与としての所得管理に慣れている場合、適切な事業所得の申告が難しくなり、無申告や無知からの脱税となってしまいます。

〇消費税法違反

消費税の未納

 個人事業主として扱われた場合、消費税の納税義務が発生します。

 しかし、元々給与所得者だった従業員が消費税の納税義務を認識せず、未納となる可能性があります。これも脱税行為に該当します。

不正な仕入税額控除

 偽装請負により、従業員が事業所得として経費を過剰に計上し、仕入税額控除を不正に行うことで、消費税の納付額を不正に減少させることも考えられます。

 一方で、会社側は、17時から請負契約が強行される場合には、真実は雇用契約である給与は、消費税の課税対象外となるものです。

しかし、偽装請負による外注費若しくは業務委託費となり、消費税の課税対象となり仕入税額控除 (消費税申告の際に預かっている消費税から支払ったことになる消費税を引けることをいいます)  の対象として、消費税の申告納付金額が少なくなってしまいます。

脱税行為となることのまとめ

 「すべての会社員を個人事業主にする」というアイデアは、雇用契約と請負契約の違いを理解していないため、労働法だけでなく所得税法や消費税法にも違反してしまいます。

 偽装請負により、正確な所得税や消費税が納付されず、脱税行為となるリスクが高まります。この事例となるアイデアについて考察する際には、法的に問題が多いため、実態の中で『真実は何か?』という着眼が実務上、いつも必要になると思います。

内閣府「賃上げを幅広く実現するための政策アイデアコンテスト」を開催しました

優勝 winner.pdf (cao.go.jp)
https://www.cao.go.jp/others/jinji/cntest/winner.pdf



賃金上昇のために適正な施策を支持して

日本の社会を良くしていきたいです。


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