シェア
asami_kun
2021年12月31日 20:15
七「さてどうするかね。このままチカムリオまで行くかね」「いえ、すみませんが、あの公園に戻って下さい。できるならもう一度、始めからやり直したいんです」「ふむ。私もそれに賛成だ。人生はいつでも、何処からでもやり直しがきくものだ。あのときは言わなかったが、一人一人の人生は不確定要素が多くてね。実に変化に富んでいるのだ。まあ、このへんのことになると理論的には少し難しいんだが。不確定性原理という
2021年11月17日 23:29
そうだ。僕たちはこの公園で何かを待っていたんだ。 そして、そこに現れたのは1台の黒いタクシーだった。 そう、運転手のおじさんには悪いことをしたけれど、皆でメモしておいてよかったと思う。本当に不思議なことだが、僕たちはあの体験に関してほとんど何も覚えていなかった。 キヨシは催眠術にかけられたのだと言ったが、そうかもしれない。 紙切れは、キヨシが着ていたジャンパーのポケットから落ちたもので
2021年10月29日 13:52
(前回までのあらすじ)僕とキヨシとユミは小学校の同級生。ある日、秘密の抜け道で紫色に輝く切符を拾ったことから、夜明け前の公園で不思議なタクシーに乗り、時間と空間を超えた旅をすることになった・・・。宇宙の旅「あっ、見て!」「星だ!」「あれは何?」「星雲だ!」真っ黒い巨大なトンネルの中心部から、大小の星々や星雲が次々と現れてきた。そして、現れたかと思うと、次の瞬間には僕たちの横をすご
2021年10月22日 13:20
三僕たち3人を乗せたタクシーは静かに走り(?)続けていた。窓の外は相変わらず濃い霧がかかっていて、まるでミルクの中を進んでいるような感覚だ。 しかし、窓に顔をぴったりとくっつけるようにして目を凝らすと、霧の中に未来の光景が見えてくるのだ。それも、どうやら自分に関係した未来だけが見えるらしい。 一度、3人で同じ側の窓から一緒に覗いてみたのだが、見えたものは3人とも違っていた。それで、自然と
2021年10月8日 09:34
一まだ夜明け前なので、辺りに人の気配は感じられない。車の音も時折遠方からかすかに聞こえてくる程度だ。公園の中は濃い霧に包まれ、街灯の光が淡く漂っている。私はベンチに腰掛けたまま何度かくしゃみをした。こめかみのあたりが鈍く痛む。 昨夜はずいぶん酒を飲んだ。つい今しがたまで、ここに腰掛けたまま、しばらく寝込んでしまったようだ。どうやってここにたどり着いたのだろう?まるで記憶がない。