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甘いキャラメルラテと、別れのシナリオ【掌編小説】
気持ちの良い秋晴れの朝。
ベッドの上で、最後の言葉を何度も心の内で繰り返す。
「今までありがとね」
この言葉を耳にした美しい黒髪の彼女は、
きっと少し悲しそうに笑うだろう。
無言のまま俺に背を向けて、
反対側に歩き出す。
俺はそれをそっと見送る。
それが、1番綺麗な別れ方のはずだ。
3年続いた2人の関係の、終わり方。
最後は感謝の言葉で締めるべきだ。
昨日の夜から、ずっとそう言い聞かせて
冬、のち桜。【掌編小説】
白の世界はやがて緑とピンクに色づいていく。
桜の花びらがひらりひらりと踊っている。
ふんわりと漂う花の香りが、私の体を一グラム軽くした。
長かった冬が終わり、やっと春が来たんだ。雪国の春の訪れは感動的だ。
黒い空の下で凍える寒さにじっと耐える私達。
ふわふわした雪は地面に積もった途端に重さを増し、私達は雪かきと言う重労働を強いられる。
表面に露出している肌は凍えていくのに、着込んだダウン
ちょっと贅沢なコーヒーを淹れてみた。
シルバーウィークの後半最終日。
家での~んびりしていたら、甘いお菓子が食べたくなった。
せっかくだからコーヒーと一緒に。
そうだ。
母に貰ったちょっと贅沢なブレンドコーヒーがあったんだ。
たまには丁寧にコーヒーをドリップで淹れよう。
普段頑張っている自分のために。
キッチンに向かい、ポットのお湯を沸かす。
その間にカップ、ドリッパー、ペーパーフィルターを準備。
カップは昔サークル
最終電車、蜜柑の香りとセーラー服。 #2000字のホラー
ガランとした無人駅、最終電車を待つホームの外は黒い闇に包まれている。
静寂を切り裂くように、ぎこーん、ぎこーんと看板が揺れる音がどこからか聞こえた。
新任の高校教師である土方が座るベンチの隣には、セーラー服を身に纏った少女が蜜柑の皮を剥いている。
「先生も、お一ついかがですか?」
細長い指がそうっと伸びてきて、酸っぱい香りが鼻についた。
「だ、大丈夫だよ。ありがとう」
土方はおろし立
2000字小説:雨、花火、恋の足跡。
雨上がりの図書館の空気が、好きだ。
ザーッと外から聞こえる雨音とじめじめした陰鬱な空気が消え去り、
しん、とした静寂の中、窓からはほのかな陽光が差し込む。
その光が頬を照らすと、どことなく心まで温かくなる気がする。
もちろんそんなタイミングいいことなんてなかなかない。
でも私はそれを初めて誰かと共有したとき、恋に落ちた。
「やっと晴れましたね」
窓の外の様子を見つめていた私と目が合ったその