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【文字起こし】アメリカで大学教授に昇り詰めた日本人から見たオッペンハイマー

昨年ぐらいからネットで売れっ子になった理論物理学者・野村泰紀(カリフォルニア大学バークレー校教授)が出演しているYouTube番組(相対性理論!6歳にわかるように説明してみよう!【ReHacQvsUCバークレー】)で、映画オッペンハイマーへの言及があったので抜粋して書き起こしました。

39分ごろE=mc^2の話題から少し脱線して核分裂と核融合の解説に移り、そこから映画オッペンハイマーにつながります。

以下、書き起こし。


野村泰紀:最初は残念なことに、ポジティブなものじゃなくて爆弾が来ちゃったんですけど…

高橋弘樹:これが核爆弾の元になっちゃったんでしたっけ?

そうです。

軍事利用されて?

軍事利用されて。

アインシュタインは別にそれを意識せずに?

え、いや、違いますよ。アインシュタインも核爆弾を大統領に作るべきという署名の一人になってます。なぜなら当時のアレ(世界事情)があって。ナチスが先に開発したら、連合国は完全に負ける。

補足)1939年、アインシュタインはルーズベルト米国大統領に宛てた原子爆弾開発を求める書簡に署名した。

なるほど。そういう政治的な判断もあったんですね?

そうですね。で、今オッペンハイマーという映画が。

オッペンハイマーって五冠とりましたね!ゴールデングローブ賞で。

そうなんですよ。で、僕が今、バークレー理論物理学センターという所の所長やってるんですけど、そのセンターを作ったのがもちろんオッペンハイマーなんですよ。彼はバークレー(大学)の人ですから。まさしく彼が作ったセンターの所長をやってて、日本人でもあるので、いろんなパネリストとかいろんな所に呼ばれて。

え、オッペンハイマーが作ったセンターの所長なんですか?

はい、そうなんですよ。それでいろんなパネリストとかで呼ばれて行くんですけど。そのために映画も観たんですけど。極めて、深い映画ですよね。

深いとは?

結構、政治的な映画なんですよ。

えっと、オッペンハイマーは原爆を作った人ですよね?

そうです、原爆を作った人。もちろん日本は広島・長崎があるからアレなんですけど。公開しなかったじゃないですか、ずっと。まあ結局公開するみたいなんですけど。

遅れてますよね。

普通より遥かに明らかに。それでもって公開しないですよね。でもあれは僕はちょっと疑問で。わかりますよ、その気持ちは。だけど、今まさしくそれと同じのをアメリカはやっているのは量子技術なんですよ。量子技術っていうのは量子コンピューターのこととか、これはまさしく第3回(次回放送)に取り扱うわけですけど。ああいうものをもし、例えば、あの、北朝鮮とかそういう国が先に開発しちゃうと、全部ハックできちゃうわけで。全ての、こう、例えば銀行とか、今って直接的な爆弾ではなくても、ほぼ社会的な爆弾になっちゃうわけですよ。先に向こうにやられないために、ものすごい莫大な金を入れているわけですよ。ほぼまったく同じことを(この映画では)やっているんですね。良い悪いは別として、あれがあの国のやり方なんですよ。で、オッペンハイマーみたいな映画を日本人が観ないのは、僕は逆だと思ってて。あれを観たらあの国の考え方は非常によくわかります。

アメリカの考え方ですか。

だからそれが良い悪いとか判断する前に、臭いものにフタじゃないですけど、気持ちがアレだから観ない、僕は逆だと思ってて。我々にとってきつい・苦しい・辛い歴史だったから、だから観るべきだと僕は思ってて。

ほう!

だから、逆にもうちょいストラテジックに言えば、敵を知らずんば〜みたいなやつですよね。それこそ、彼らがどういう思考をやってたのか。悪いから見ないんじゃなくて。悪かろうが良かろうが、まあ悪いですよそりゃ爆弾ですから。だけどこういう思考でこういうことをやってたんだな、というのを知るっていうことをサプレス(=抑制;情報統制)するっていうのは非常に残念に思いましたね。最終的には公開しましたけど、日本で。

公開しますよね。

なぜ、こう、見せないというオプションを取るのかっていうのは個人的にはあまり理解できなかったですね。

見せない…ちょっとそこ判らないですよね?本当にもともと遅かったのか、公開を遅らせたのかはちょっと定かではないですけど。遅らせたんでしたっけ?

ん〜まあ、遅らせたんじゃなければ、僕が単にそう感じちゃって、実は単に遅れちゃっただけなんでしょうけど。

あと、興行上の成功がちょっと見込みにくそうですよね?

まあ、そういう理由だったのかもしれないです。

でも観ないのは良くないってことですよね?

それはそう思います。で、興行上の成功(懸念)だったなら、今の意見は関係ないです。(笑)

事実として知れることは、アメリカがこの物理とかを軍事利用できるわけで。それは安全保障上の脅威があるからやっているということですね?

はい。雰囲気とか、どういう考え方をするとか。で、彼自身は色々、共産主義者と言われて、糾弾されて力を失っていくんですけど。まあストーリーの手段はそうなんですけど。こういう技術とかがあった時に、どういうアプローチをするのか。良い悪いの前に、アメリカのアプローチってああいうもんなんだ。っていうのはまさしく今の量子技術とかと同じような匂いがするので。

めちゃくちゃ面白いですね。

非常に観てみたら良いんじゃないかと思います。

ちょっと観てみますわ。観たくなりましたわ。興行会社から金もらってないでしょうね?(笑)

いやいや。(笑)彼が作ったセンターの所長です。そこらへんはディスクロージャーしておかないと。(笑)

そうですよね。ステルスマーケティングとか良くないですから。(笑)

そういう意味では、無関係な人じゃないです。(笑)

なるほど、面白い!それがこうやって物理学が原爆などに使われちゃって。

そうですね、ちょっとこれは脱線して話したんですけど、はい。


以上、引用おわり。

いかがですかね?

アメリカの現場の第一線で活躍してる人から見た映画オッペンハイマー。

どこぞの映画評論家が語る内容とは一線を画するものだと思います。

最後のステマのくだりは敏感になってるYouTube独自のジョークみたいなものだと思いますけど。(笑)

野村教授がパネリストとして出席した公演を聴講してみたいですね!

(了)

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