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映画『セブン』と作家『サマセット・モーム』

今回は『サマセット・モーム』の傑作短編『雨』をどういう風に紹介するか?を考えた結果、

映画『セブン』に思い至りました。

①映画『セブン』について

まずは多くの人が食いつくと思われる映画『セブン』について。

Se7en (1995) - Trailer HD Remastered

映画『セブン Seven』監督 デヴィッド・フィンチャー 脚本 アンドリュー・ケヴィン・ウォーカー 製作 アーノルド・コペルソン、フィリス・カーライル
製作総指揮 ジャンニ・ヌナリ、ダン・コルスルッド、アン・コペルソン
出演者 ブラッド・ピット、モーガン・フリーマン、グウィネス・パルトロー、R・リー・アーメイ、ケヴィン・スペイシーほか 公開  1995年

監督 デヴィッド・フィンチャー
元々音楽PVの監督として注目されていた。
『セブン』も独特の映像感覚が印象的な作品。
映画監督デビューは1993年の『エイリアン3』

『エイリアン3』は、当時としては史上最高額の制作費が投じられた。
しかし企画段階からトラブルが絶えず、
映画の内容も評論家達からも酷評。
批判の矢面に立たされたフィンチャーは
「新たに映画を撮るくらいなら、大腸癌で死んだ方がマシだ」と述べ、メイキング映像にも出演していない。

そういった事情があって、次回作候補としての『セブン』の脚本を1年半読もうともしなかった。

脚本 アンドリュー・ケヴィン・ウォーカー
「ニューヨークで過ごした過去は嫌いだったが、もしそのことがなければ、私はおそらくセブンを書いていなかっただろうことは事実だ」 ーアンドリュー・ケヴィン・ウォーカー

毎日犯罪の絶えないニューヨークでの生活。
そしてそれを見て見ぬふりする自分自身に嫌気が差していた。
図書館でミルトンの『失楽園』やダンテの『神曲』などの古典を読み漁りながら数年かけて脚本を書き上げる。

『ウィリアム・サマセット刑事』 = 『モーガン・フリーマン』
サマセット刑事は俳優のウィリアム・ハートがモデル。
『サマセット』の名前はウォーカーが好きな著者である『サマセット・モーム』にちなんで命名された。

②作家『サマセット・モーム』について

ウィリアム・サマセット・モーム(William Somerset Maugham)
1874年1月25日 - 1965年12月16日
イギリスの小説家、劇作家。
1919年に『月と六ペンス』で注目され、人気作家となった。
平明な文体と物語り展開の妙で、最良の意味での通俗作家として名を成した。

・代表作紹介

『人間の絆』

『月と六ペンス』

『お菓子とビール』

そして傑作短編 ー 『雨』

③短編小説『雨』について

『雨・赤毛』モーム短編集(1)中野好夫 訳

短編小説の生命である『ストーリー』、つまり最後のオチが秀逸の作品。

そういう意味でネタバレになってしまったらこの短編は楽しめないので、あらすじ解説はしません。
ただタイトル通り『雨』がずっと降っている描写が印象的。
そしてラストのオチも痛快さではなく、陰鬱さをさらに増すような読後感に不快さを感じる読者も多いと思います。

このストーリー展開と、読者を引き込むモームという作者の描写のうまさ。

そしてこの後の映画『セブン』の解説のために、
・『雨がずっと降っている』
・『ラストの意外で陰鬱で深いオチ』この2点を覚えておいてほしい。

『雨』は過去に2度、映画化されています。

Sadie Thompson (1928) clip

映画『港の女 Sadie Thompson』監督・脚本 ラオール・ウォルシュ
原作 サマセット・モーム、ジョン・コルトン(戯曲)、クレメンス・ランドルフ(戯曲)
製作 ラオール・ウォルシュ、グロリア・スワンソン(ノンクレジット)
出演者 グロリア・スワンソン、ライオネル・バリモア他
公開 1928年

RAIN (1932) Trailer

映画『雨 Rain』監督 ルイス・マイルストン 脚本 ジョン・コルトン、クレメンス・ランドルフ、マクスウェル・アンダーソン 原作 ウィリアム・サマセット・モーム
製作 ルイス・マイルストン 製作総指揮 ジョセフ・M・シェンク
出演 ジョーン・クロフォード、ウォルター・ヒューストン他
公開 1932年

④映画『セブン』ネタバレしない程度のストーリー紹介

舞台となるある大都会で、退職1週間前の『ウィリアム・サマセット刑事』(モーガン・フリーマン)と配属されたばかりの新人刑事『デビッド・ミルズ』(ブラット・ピット)が、ある死体発見現場に急行した。

サマセット刑事が退職となるまでの7日間(1週間)のストーリー。
約1日に1件の殺人事件が起こり、それぞれがキリスト教カトリックの概念である、
『七つの大罪』に基づいている。

1.『暴食』(GLUTTONY)
被害者:肥満の男
死因:窒息、内臓破裂

2.『強欲』(GREED)
被害者:弁護士
死因:腹部への殺傷

3.『怠惰』(SLOTH)
被害者:廃人?
死因:一年以上ベッドに縛り付けられているが死には至らず

4.『肉欲』(LUST)
被害者:娼婦
死因:陰部への殺傷

5.『高慢』(PRIDE)
被害者:モデル
死因:顔を切り裂いたうえで睡眠薬で自殺を選ばさせる

6.『嫉妬』(ENVY)
被害者:**
死因:射殺

7.『憤怒』(WRATH)
被害者:**
死因:**

※『**』の部分はネタバレとなるため伏せました。

⑤映画『セブン』とサマセット・モーム『雨』の共通点

共通点1.『サマセット』という名前

Seven - Library scene

『ウィリアム・サマセット刑事』(モーガン・フリーマン)と、
作家『ウィリアム・サマセット・モーム』
ほぼ同じ名前です。

脚本家アンドリュー・ケヴィン・ウォーカーも認める通り、作家サマセット・モームからの役名を拝借。

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