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電波戦隊スイハンジャー

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神も仏も小人も天使も異星人も暴れるヒーロー戦隊もの
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#空海

電波戦隊スイハンジャー#7

第一章・こうして若者たちは戦隊になる金剛さまの言うことにゃ

正嗣以外の会議室の人間は、まるで金縛りにでも遭っているかのように硬直していた。

ただ、全員の目だけがかっと見開かれ、瞳孔が散大したかのように正嗣には見えた。

意識を飛ばされたか?

「皆の記憶をこっくりさんを行う以前に戻した。簡単な逆行催眠じゃ。まーくんよ、後は任せる」

空海がぱん!!と手を叩くと、止まっていた会議室の時間が動き出

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電波戦隊スイハンジャー#17

第二章・蟻と水滴、ブルー勝沼の憂鬱マリス・フレイム

「兄さん達、ここにいる奴らはみんな『ただの人間』だからお手柔らかに。やり過ぎて殺しちゃなんねえよ!!」

ブルーのスカートのポケットから投網子が顔を出して注意した。

「がってんしょーち!!」

答えると同時に、レッドは用心棒らしき黒人の大男の顔に「ゴラァッ!!」と頭突きをかましてぶっ倒していた。

まんまヤンキーのケンカである。

「ありゃ気

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電波戦隊スイハンジャー#20

第三章・電波さんがゆく、グリーン正嗣の踏絵屋久杉との邂逅

「参った!」空海が碁盤の前で頭を下げた。

碁盤の上には黒石が白石を囲むように並び、さながら夜空の星のようである。

「では、私の勝ちですね」
細い目をさらに細めて、正嗣が珍しくドヤ顔で笑った。

「じわじわ四方から攻められて、全く、次の手が思いつかなんだ。まーくんよ、きちんと検定受けたらアマチュアの段位取れるのではないか?」

「私にと

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電波戦隊スイハンジャー#21

第三章・電波さんがゆく、グリーン正嗣の踏絵京よりの使者

「それで七城先生。おめえさん、せっかくシルバーエンゼルと接触できたってぇのに、顔も名前も知らずに消えられたってぇ訳か…」

正嗣がグラン・クリュに戻ってきた安堵と、彼が重要情報をつかみ損ねた口惜しさから隆文ははあー、と大きなため息をついて彼を迎えた。

「はい…」濡れた服を作務衣に着替えた正嗣の手のひらには、ほんのりと光る銀の羽根。

悟が

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電波戦隊スイハンジャー#22

第三章・電波さんがゆく、グリーン正嗣の踏絵

泰範事件

弘任4年(813年)3月、平安京の北西に位置する高雄山寺にて。(現・神護寺)

「こないに催促の手紙が来てからに…それに、ご自分の高弟まで迎えに来させて…」

手紙の束を手に、尼と見まがうかの美しい僧が、重いため息を吐いた。

新興の真言密教の祖、齢四十の空海である。

燭台の炎がじじじ、と音を立てて燃えている。

堂内を照らす光の中に、2

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電波戦隊スイハンジャー#23

第三章・電波さんがゆく、グリーン正嗣の踏絵分水嶺1

白鳥はかなしからずや空の青海のあをにも染まずただよふ  若山牧水

夏が来るたびに、何か素敵なことが起こるかもしれないと子供の頃から期待していた。

開けた窓の向こうから聞こえる蝉の声がかまびすしい。

近藤光彦は自室の窓を閉めようとし、庭の百日紅の薄紅にはっと見とれて数十秒手を止める、そんな少年だった。何年前からだろうか?夏休み前が暗く、心重

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電波戦隊スイハンジャー#31

第三章・電波さんがゆく、グリーン正嗣の踏絵弘法大師の大秘術1

五円玉が消えた上空に、古代服を着たちび女神「ひこ」が出現した。

ひこは棒アイス「ブラックモンブラン」の最後の一口を食べたところだった。

「あ~ん、またハズレだにゃ…ん?これは『めがみしょーかん(女神召喚)!!』きららねたーん!」

ひこがきららホワイトを見つけ、飛んでくる。

「ひこちゃーん。アイテムちょーだいっ。グリーンとシルバ

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電波戦隊スイハンジャー#32

第三章・電波さんがゆく、グリーン正嗣の踏絵弘法大師の大秘術2

こんちきちき、こんちきち

こんちきちき、こんちきち…

「祭囃子が聴こえるわ!」ホワイトが演奏を止めて呟いた。

(きららはん、集中して!)

(はい!)

ぴーひゃーぴーひゃー、ぴーひゃらりー

ぴーひゃらぴーひゃらぴーひゃひゃらりー

他の3人のメンバーにも聴こえた。

「ブルーさん、この音聴き覚えあるべ…たぶんテレビかなんかで

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電波戦隊スイハンジャー#35

電波戦隊スイハンジャー#35

第三章・電波さんがゆく、グリーン正嗣の踏絵鉄太郎の孫2

悟が「シルバー捕獲作戦」を思いついたのは

シルバーは熊本市内の人でしょう、とグリーン正嗣が言ったからだった。

「なんでそう思うんだい?」と悟は暗い本堂で、本尊の不動明王像を見つめて正座したままの正嗣に聞いた。

蝋燭の灯りの中に、黒い着流し姿の正嗣の背中が浮かび上がる。

「シルバーの言葉の端々には熊本なまりがありました。彼はわざと標準

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電波戦隊スイハンジャー#36

電波戦隊スイハンジャー#36

第三章・電波さんがゆく、グリーン正嗣の踏絵鉄太郎の孫3

「父さん、私は高野山に入ります」

暗い本堂の中で、二本の蝋燭の灯りだけが正座した正嗣の顔を照らしている。

その目には強い意志の光を宿していた。

正嗣の父、正義は息子の決意を受け取りひとつうなずいた。

「そうか、住職になる決心がついたか」

「はい」

「教職の方はどうする」

「今受け持っている子供たちを送り出したら退職します」

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電波戦隊スイハンジャー#46

第三章・電波さんがゆく、グリーン正嗣の踏絵エピローグ、夢の都

2013年7月16日の午前中に、サキュパスに破壊されたHondaスーパーカブの代わりの新品スクーターが泰安寺に届けられた。

もちろんササニシキブルー勝沼悟のポケットマネーでである。

住職、七城正義は新しいスーパーカブに「たんぽぽ2号」と命名した。

「七城先生のお父さんってちょいちょい面白いキャラですねー。愛車に『たんぽぽ』って名

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電波戦隊スイハンジャー#61

第4章・荒ぶる神、シルバー&ピンクの共闘ミレニアムベイビーズ2

8月1日午前零時。

京都市内、八坂神社の140メートル上空で白い閃光が起こり、それは幾筋の稲妻になって都の空を覆った。

さらに俯瞰すると京都市内全体を覆った透明な長方形の蓋の内側の一点から穴が開き、全体に稲妻のひび割れが血管のように走って蓋がまるごと砕け、破片が伽藍のように崩れ去ったように見えただろう。

「どっこいしょ…っと」

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電波戦隊スイハンジャー#62

第4章・荒ぶる神、シルバー&ピンクの共闘ミレニアムベイビーズ3

東寺。またの名は教王護国寺。教王護国寺という名称には、国家鎮護の密教寺院という意味合いが込められている。

延暦15年(796年)創建とされ、20数年後の弘仁14年(823年)、真言宗開祖空海は嵯峨天皇よりこの寺院を給預された。

この時から東寺は真言密教の根本道場となった。

平成6年(1994年)12月、「古都京都の文化財」とし

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電波戦隊スイハンジャー#148

電波戦隊スイハンジャー#148

第8章 Overjoyed、榎本葉子の旋律神在月、神々の宴3

「それよりも元老長、100年に一度のおばあ様の転生が遅れているのは由由しき事態だと思わないか?」

と言ってニニギは、コヤネの隣の席に腰を下ろした。

「まさに私は、その問題提起に来たのです」

とコヤネはこの高天原族の若き王に微笑み返した。

タキシード姿の祥次郎がバイオリンを弾いて微笑んでいる遺影の横では、白いタマスダレの花が切子

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