マガジンのカバー画像

電波戦隊スイハンジャー

232
神も仏も小人も天使も異星人も暴れるヒーロー戦隊もの
運営しているクリエイター

#SF小説

電波戦隊スイハンジャー#1

第一章・こうして若者たちは戦隊になる麦わらのレッド

農業青年、魚沼隆文の日記。

2013年5月某日。

これは誰にも信じてもらえないと思うので、この日記に記すだけにしておきたい。

僕の家は江戸時代から続く農家で、現在は、コシヒカリを主に生産している。

僕もいずれは父の跡を継いで、自然を相手に生きるのだろう。

とぼんやり考えていた…あの二人に出会うまでは!

(ここで2Bえんぴつが激しく折

もっとみる

電波戦隊スイハンジャー#2

第一章・こうして若者たちは戦隊になる豊穣の末裔

おっす、おら魚沼隆史。またの名はコシヒカリレッドだべ。

前回までのあらすじ、田植えを終えて一息付きたいところに怪しい小人夫婦に捕まってましたしゃもじ握らされてよお、ページの都合上ここは割愛すんべ。

つまりいま、おらをヒーロー戦隊に仕立てた小人コンビの乙ちゃんと松五郎がピンチだってんでおらは謎の女神Uの導きで故郷から旅立つ事になった。

言っとく

もっとみる

電波戦隊スイハンジャー#6

琢磨が痛みで悶絶する4時間前。九州のとある中学校でとんでもない騒ぎが起こっていた。

3年2組担任、七城正嗣は、レザーサンダルを履いた足をばたばたいわせて、自分が受け持つ教室に入って行った。

美術の女性教師、室《むろ》先生が真っ青な顔をして、正嗣に向かって叫んだ。

「七城先生っ!生徒たちが…」

教室の中の教え子たちが半数は倒れ、半数はトランス状態に陥っている。

教室真ん中の机には、こっくり

もっとみる

電波戦隊スイハンジャー#7

第一章・こうして若者たちは戦隊になる金剛さまの言うことにゃ

正嗣以外の会議室の人間は、まるで金縛りにでも遭っているかのように硬直していた。

ただ、全員の目だけがかっと見開かれ、瞳孔が散大したかのように正嗣には見えた。

意識を飛ばされたか?

「皆の記憶をこっくりさんを行う以前に戻した。簡単な逆行催眠じゃ。まーくんよ、後は任せる」

空海がぱん!!と手を叩くと、止まっていた会議室の時間が動き出

もっとみる

電波戦隊スイハンジャー#8

第一章・こうして若者たちは戦隊になる勝沼悟熱血教室

勝沼酒造本社ビル離れのガラス張りの温室。

中央には勝沼家のモニュメントツリーである古びた葡萄樹が小さな実をつけ始めている。

昨日悟が破壊したガラスはすっかり修理されていた。

酒豪のレッド&ブルーも、さすがに「二日酔い」という生理現象には逆らえない…

葡萄樹下の白いガーデンテーブルに二人突っ伏し、ぎゅうぎゅう脳味噌を締め付けるような頭痛に

もっとみる

電波戦隊スイハンジャー#9

第一章・こうして若者たちは戦隊になるバトルだよ、全員集合!前

東京、霞ヶ関。

農林水産省職員都城琢磨は夜7時過ぎに帰庁した。

はあ、今夜は電車ある時間に終わったよ…琢磨はいわゆる「キャリア組」官僚である。

深夜まで仕事してタクシー帰宅なんていつもの事。なんであるが…

入省して2年間で一通りの研修を終えた彼に、突然上司から「ある調査命令」が下った。

それから一年間、日本各地を調査して回り

もっとみる

電波戦隊スイハンジャー#10

第一章・こうして若者たちは戦隊になるバトルだよ、全員集合!後

その頃、正嗣は夕食の席で「七城真魚」の免許証を凝視していた。写真の中の坊さんは確かに空海である。

「アヤシイ外国人が偽造した訳ではないから、たぶん警察の検問もスルーできるぞよ。TATUYAのカード作れた時は嬉しかった…」

「でも結局、偽造じゃなかですか?しかも住所ここですよね?

お大師さま、あんた一般人になりすまして何するつもり

もっとみる

電波戦隊スイハンジャー#11

第一章・こうして若者たちは戦隊になるバトルの後はビールがうまい

「このクソ坊主っ!なんでミサンガにテレポート機能があるって事、先に言わなかった?うちの親父寝込んじまったじゃないかっ!」

グリーンの七城さんは、第一印象では温厚そうな人だと思ったんですが…ひとたびキレると、無茶苦茶怖い人になります。

小柄なお坊さん(空海さんと言うらしいです)に掴みかかって馬乗りになり、逆に金縛り攻撃かけられて、

もっとみる

電波戦隊スイハンジャー#12

第一章・こうして若者たちは戦隊になるこれにて飲み会おひらき

「わたし、物心ついた時からコロポックル様が見えるんですよねー。

地元の北海道では松五郎さんたちみたいに絣に袴じゃなくて、アイヌの衣装着てましたよー。でも言葉はわたしに分かりやすいように、東北弁でした」

冒頭から電波な話ですいません。七城米グリーンこと、七城正嗣です。

私が何故きららホワイトこと、小岩井きららさんのトークの補足をする

もっとみる

電波戦隊スイハンジャー#13

第二章・蟻と水滴、ブルー勝沼の憂鬱占いはBARにいる

「どとれとみとふぁとそとらとしとどの、おとがーでにゃーい。
どとれとみとふぁとそとらとしとどの、おとがーでにゃーい。
とーってもだーいじーに、しーてたーのにぃ、ぱーぱがだーいじーに、しーてたーのにぃ、
どーしよ?どーしよ?
きららねたーん、どーすればいいのぉ?」

照明の夕焼け色の光に照らされた古代幼児で自称「ひこ」が、ものすんごくゆるゆるな

もっとみる

電波戦隊スイハンジャー#14

第二章・蟻と水滴、ブルー勝沼の憂鬱依頼人

ずばり的中。

占い師MAOさんが貴方の心を見透かします。

占いはBARにいる。

鑑定料3000円。

したまち@パッカーズのブログ、文末より。

七城米グリーンこと七城正嗣のジャージをひんむいて濃紺の作務衣を着せて、素足には下駄。スポーツ刈りの頭にキャスケットをかぶせ、おまけに黒縁眼鏡をかけたら、

心を見透かす占い師、『MAOさん』一丁あがりであ

もっとみる

電波戦隊スイハンジャー#15

第二章・蟻と水滴、ブルー勝沼の憂鬱水を司る者

勝沼生命化学研究所主任の西園寺真理子は、実験データが書き込まれた分厚いファイルを手に上司で研究所長である勝沼悟の所へ歩いていた。

午後3時に悟が居る場所といえばひとつである。

本社ビルに隣接するガラスの温室。

その中央には、樹齢150年という驚異的な長寿を誇る葡萄樹が淡いグリーンの実をつけて、葡萄棚にもたれるように長い蔓を伸ばして鎮座している。

もっとみる

電波戦隊スイハンジャー#16

第二章・蟻と水滴、ブルー勝沼の憂鬱蟻の哀歌

革製品ショップ「BENIYA(紅屋)」は両国国技館通り沿いの、築年数浅いテナントビル二階にあった。

一階はまるまる歯科医院で、キィィーン、と不愉快なドリル音が時折聞こえる。

土曜日の今日も夕方6時まで営業。と看板に書いてある。歯科医もフルタイム営業しないとやっていけない時代のようだ。

午前11時。勝沼悟と小岩井きららは、傘を並べてビルの入り口前に

もっとみる

電波戦隊スイハンジャー#19

第三章・電波さんがゆく、グリーン正嗣の踏み絵1vs300

たんったった、たんたらった、たんたららららん♪

ipodの中の曲が、track2の「Lazing On A Sunday Afternoon」にチェンジした。

I go out to work on Monday morning

Tuesday I go off to honeymoon~♪

「彼」はフレディ・マーキュリーそっくり

もっとみる