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電波戦隊スイハンジャー

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神も仏も小人も天使も異星人も暴れるヒーロー戦隊もの
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2023年6月の記事一覧

電波戦隊スイハンジャー#183 観光戦隊スイハンジャー3

電波戦隊スイハンジャー#183 観光戦隊スイハンジャー3

第9章 魔性、イエロー琢磨のツインソウル観光戦隊スイハンジャー3

ねえ、兄ちゃん。

うん?

外の世界ってどんなところだと思う?

出てないんだもの、わかんないよ。

僕はきっと楽しいところだと思うよ。

おまえはいいなあ、呑気に考えられて。

兄ちゃんは違うの?

…僕は、外の世界が恐くて恐くて仕方がないんだ。

「七城先生には胎内記憶というものがありますか?」

と飛行機の座席で突然聞かれ

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電波戦隊スイハンジャー#184 血戦

電波戦隊スイハンジャー#184 血戦

第9章 魔性、イエロー琢磨のツインソウル血戦

同時に黄色と緑色の閃光が強く瞬き、それが消えたかと思うと燃える不死鳥の刺繍を施した黄色の戦士と全身に草木の刺繍を施した緑色の戦士が福明の前に現れた。

「そうか…君たちも『選別』されてここまで来たんだね」

紅い瞳を輝かせて福明は何故か嬉しそうに笑うと背後のコートハンガーに掛けてあった白いローブを纏う。

そのローブは秘密結社「プラトンの嘆き」の幹部

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電波戦隊スイハンジャー#185 双子の鳥

電波戦隊スイハンジャー#185 双子の鳥

第9章 魔性、イエロー琢磨のツインソウル双子の鳥

その頃、根津の下町バー「グラン・クリュ」の2階休憩室で待機していた若者の右手首に黄色い麻のミサンガが浮かび上がった。

兄ちゃん…!

彼は都城及磨、琢磨の双子の弟である。
昨夜、彼が名前を呼ばれて目覚めると天井に忍びが張り付いていた。
自衛隊宿舎の彼の部屋に忍び込んだ小角である。

(いいか、及磨。一回しか言わないから明日の休日は俺の言う通りに

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電波戦隊スイハンジャー#186 人倫の境目

電波戦隊スイハンジャー#186 人倫の境目

第9章 魔性、イエロー琢磨のツインソウル人倫の境目

正嗣は右腕を肘から、左脚を膝下から切断されて全身の皮膚を鋸状の刃物で撫で切りにされていた。
彼の傷を一目見た外科医の桃香は、

なんて酷い。これが同じ人間に対する仕打ちなのか。

…いや、こんなことをするのは人間の心を持ってない奴の仕業だ。

と急沸する怒りで眉間に縦皺を寄せたがすぐに
「こっちは出血がひどい、もっとじゃんじゃん輸血するのだ!」

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電波戦隊スイハンジャー#187 応報

電波戦隊スイハンジャー#187 応報

第9章 魔性、イエロー琢磨のツインソウル応報

ヒノヒカリイエローに変身した及磨が福明に斬りつけたナイフに塗られた薬。

それは本体の観音族形態の福明の傷口から血流に乗って全身の細胞をくまなく巡り、彼の細胞内にある葉緑素を容赦なく活性化させ続ける一種のホルモン剤であった。

それは医学博士である野上聡介が従兄弟の藻類学者、ミシェルから「信じられるかい?火山地にある高温の源泉内で棲息している藻を見つ

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電波戦隊スイハンジャー#188 戦士の休息

電波戦隊スイハンジャー#188 戦士の休息

第9章 魔性、イエロー琢磨のツインソウル戦士の休息

2013年11月下旬のお昼過ぎ、七条正嗣は清潔なシーツにくるまれ寝かせられている自分を発見した。

点滴に繋がれている自分の右手は…ちゃんと繋がっていて傷一つ残っていない。膝を曲げれば左足も動かせる。

ここは…?
枕から頭を上げてゆっくり辺りを見回すと、

「ダメですよ、慌てて動いちゃ」
と聞き覚えのある声がした。ベッド脇の椅子には同じ中学に

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電波戦隊スイハンジャー#189 ほくそ笑む大天使

電波戦隊スイハンジャー#189 ほくそ笑む大天使

第9章 魔性、イエロー琢磨のツインソウルほくそ笑む大天使

福明との決戦が終わったその日の夕方、七城正嗣と都城琢磨は無事税関を十って海口空港発成田空港着で帰国し、そのまま西日暮里にあるスポーツ用品店に向かった。

「新しいスポーツシューズに買い替えたいんですけどね、出来れば安く」

そう琢磨が言うとセーターの上に青いエプロン姿の眼鏡をかけた青年は笑顔で「希望のメーカーはございますか?」尋ねた。

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電波戦隊スイハンジャー#190 封印されし八章

電波戦隊スイハンジャー#190 封印されし八章

第9章 魔性、イエロー琢磨のツインソウルエピローグ 封印されし八章

新潟ではもう雪がちらほら降り始める11月30日、魚沼隆文はスーツの上にコートを羽織って十日ぶりに実家に帰った。

「おかえり隆文さん」
と迎えてくれた妻、美代子の妊娠六か月のお腹はセーターを着てても目立って来ている。

六畳の二人の寝室は暖房が利いていて、「先にお風呂入るけ?」と脱がしたコートをハンガーにかけてくれる後ろ姿に抱き

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電波戦隊スイハンジャー#191 生誕

電波戦隊スイハンジャー#191 生誕

第10章 高天原、We are legal alien!生誕

産院の前に横付けにしたタクシーから慌てて降りた野上祥次郎は、

「ちょっとお客さん!」と運転手からの注意が無いと愛器のバイオリン、ヴィヨームを紛失してしまう処であった。

受付から聞いた病室まで廊下を小走りに移動していたところを看護婦に注意され、右腕ににバイオリンケースを抱き、もう片手で海外旅行用トランクを転がしてたどり着いた、
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電波戦隊スイハンジャー#192 思惟、混沌より出づる

電波戦隊スイハンジャー#192 思惟、混沌より出づる

第10章 高天原、We are legal alien!思惟、混沌より出づる

思えば「私」というもののはじまりは

二億光年前の銀河三十星系の、
文字と発音で出来た言葉。

ありとあらゆるものを計測した結果である数字。

先人たちが石や木に刻まれた像、或いは紙に着色して描かれた絵。

生物の進化の遺伝子情報や過去に人が作り上げた文明や社会というものと、その末路。

という膨大な情報を与えられてそ

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電波戦隊スイハンジャー#193 三貴子

電波戦隊スイハンジャー#193 三貴子

第10章 高天原、We are legal alien!三貴子

その日、ユミヒコ王子は王宮の中庭に降る雨を物憂げに眺めていた。

灰色の雲の中で凝結した水滴が落下し、草木を濡らす不規則的な雨の音を聴いていると不思議とユミヒコの心は休まるのである。

「ねえ思惟」
「はい王子」
「昔我々の先祖が捨てた母星の自然というものはこの雨のように何者に対しても平等なのだな」

ユミヒコはコロニー内の惑星改造

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電波戦隊スイハンジャー#194将軍タケミカヅチの回想

電波戦隊スイハンジャー#194将軍タケミカヅチの回想

第10章 高天原、We are legal alien!将軍タケミカヅチの回想

とある未開の惑星に降り立ち、

「…この惑星はまだ若く大気も水も資源も豊富である。故に降下と居住に支障なし」

とひととおりの調査報告を終えた調査員のひとりが
「さてと」

とシートの中で大きく伸びをしてから…宇宙服兼戦闘服を着たまま調査船から亜熱帯の植物が繁り竜類の動物が跋扈する外に出ると、

数日前から目を付けて

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