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電波戦隊スイハンジャー

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神も仏も小人も天使も異星人も暴れるヒーロー戦隊もの
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2023年1月の記事一覧

電波戦隊スイハンジャー#105

第六章・豊葦原瑞穂国、ヒーローだって慰安旅行阿蘇4

ぴちょん!

と露天風呂を覆う木屋根の天井からしずくが落ちて、ちょうど鉄太郎のいる辺りに波紋を広げた。

(おい、テツ)と小角はかつての武術の弟子に心の声で呼びかける。

(おまえの狂言の筋書きに、おれ様も少彦名も乗ってやってるんだぜ。お釈迦様は予想外だったが…多少のフライングには目をつぶれ!)

戦隊の男どもは湯けむりの中で赤くなった顔を見合

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電波戦隊スイハンジャー#106

第六章・豊葦原瑞穂国、ヒーローだって慰安旅行

阿蘇5

からんころん、と赤い鼻緒の下駄が庭の飛び石の上で鳴る。

浴衣の女子2人、きららとウズメが旅館離れにある貸し切り浴場に向かっている。

きららの浴衣は青い白地に朝顔柄、ウズメは白地にすすきの穂が描かれた柄である。

「んふふー、働いた後でおいしいお肉食べてーぬっくい温泉で疲れ癒すなんて贅沢だべさー」

旅の気楽さからつい地元の方言が出てしま

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電波戦隊スイハンジャー#107

第六章・豊葦原瑞穂の国、ヒーローだって慰安旅行阿蘇6

小角と男メンバー6人が泊る離れ、鷹の間は壁面と屋根を黒くした古民家風の2階建てであった。

夕食から帰ると1階に4組、2階に3組と分けて布団が敷かれてある。

窓を開けると、冷房も要らない程の夜気が部屋中を満たす。阿蘇だけ一足早く秋へと進んでいる…

その夜は「これが独身最後の旅だべなー、みんな、ありがとな」と3日後に結婚式を控えた隆文をきっ

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電波戦隊スイハンジャー#108

第六章・豊葦原瑞穂国、ヒーローだって慰安旅行野上の姓1

以降は、七城米グリーン七城正嗣が大学時代にまとめたレポート「野上鉄太郎の生涯」を参考にして話が進行する。

興梠葛生は、この赤ん坊を「阿蘇の神からの授かり物だ」と養子にして籍に入れ、大事に育てた。

が、4年後に突如、東京神田の柔術家である真鍋廣一《まなべこういち》に鉄太郎を託すことになる。

「何で?願掛けしてまで授かったと思って育てた子

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電波戦隊スイハンジャー#109


第六章・豊葦原瑞穂国、ヒーローだって慰安旅行野上の姓2

旅館から帰る途中、隆文は「夕飯はおらが作る!」と何やら張り切って食材を買い求めていたが…

隆文のエコバッグから出てきたのは鶏肉、人参、大根、ごぼう、小松菜、麦みそに小麦粉…だし用に干ししいたけと鰹節だった。

「どう見ても『だご汁』を作る気ですね」と正嗣が言われるでもなく野菜を洗い始めた。

父と二人の男所帯で当然のように料理している男

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電波戦隊スイハンジャー#110

第六章・豊葦原瑞穂国、ヒーローだって慰安旅行

野上の姓3

和歌山県伊都郡九度山町という所に、九度寺と呼ばれる慈尊院がある。

九度寺の謂れは、空海の母、玉依御前が「息子空海が開いた高野山を見たい」との一心で老いた身ながらはるばる讃岐から出てきたものの…

空海自身が高野山より七里四方は女人禁制の聖地、としてしまった為、御前はこの場所より先まで行けなくなった。

御前はこの寺に逗留し、ご本尊の弥

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電波戦隊スイハンジャー#111

第六章・豊葦原瑞穂国、ヒーローだって慰安旅行野上の姓4

それはなんとも、奇妙な光景であった。

ストーンヘンジを思わせる巨石群のふもとの地面で、7人の若者と阿蘇の地霊が円を作って座り込んでいる。

蘇りの始まりの地で、全てが明かされる。ブッダの予告通りになった、と悟は思った。

阿蘇山の神健磐龍命からいま、真実が明かされるのだ。

悟は緊張して隣の隆文にも聞こえるほどごくり、と音を立てて唾を呑み

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電波戦隊スイハンジャー#112

第六章・豊葦原瑞穂国、ヒーローだって慰安旅行

野上の姓5

「読んでみよ」とミコトが聡介の手に握りしめられた鉄太郎の手紙を手持ちの扇で指した。

聡介は肩身をすくめて6人の仲間を見回した。

5月のGWまでは「普通の人々」だった戦隊の仲間たちは、皆それぞれの覚悟を持って肯き返した。

言われるまま聡介は封筒から便箋5枚の長い手紙を声に出して読み始める…

聡介へ

緋沙子さんが野上の家を出たのは

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電波戦隊スイハンジャー#113

第六章・豊葦原瑞穂国、ヒーローだって慰安旅行エピローグ、海王の舞

「どうもすいませんねぇ、いつも息子がお世話になっとります…」

翌日の午後5時過ぎ、熊本の七城町の小高い丘の上にある古刹、泰安寺の住職で正嗣の父親七城正義は、

息子の職場の美術教師である室街子を前にえへ、えへと相好を崩しそうになるのを辛うじて抑えた。

今年24歳になる室先生は若々しい肌でいつも薄化粧。

カチューシャで長い前髪

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電波戦隊スイハンジャー#114

第七章・東京、笑って!きららホワイトプロローグ「Tokyo,japan!」

そこは夜も昼も、無き場所である。

ひとりの若者が瞑想するかのようにカードを丁寧に切ってテーブルの上に広げていた。

銀髪に銀の瞳の、明らかに異星人高天原族の特徴を持つそれはそれは美しい若者は、やがてすうっと目を開き「よし」と一枚のカードを選んでめくった。

はっ、と若者は一気に胸中の吐き出し「これはいけないわ」とまだ寝

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電波戦隊スイハンジャー#115

第七章・東京、笑って!きららホワイトPrincess KAGUYA1

遡って、早朝5時39分青木が原樹海。

ご来光を浴びた美しい富士山を左背後に、

藍地に銀の星座模様の刺繍を施したパワースーツを着たツクヨミ王子が時速150キロで昏い森を駆け抜ける。

シャトルを樹海の地下深くに隠したから見つかる事は無いわね。

ま、光学迷彩とトラップで磁界狂わせまくっているのは私の仕業なんですけどー。くすっ

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電波戦隊スイハンジャー#116

第七章・東京、笑って!きららホワイトPrincessKAGUYA2

今ではもう昔のことになるが

竹取の翁という者が都の外れの山中で様々な竹細工を拵えて暮らしていた。

翁の名は讃岐の造といった。

ある日、いつものように竹林に入ると一筋の銀色に光る竹を翁は見つけた。

まあまあなんでオマエ竹の中に入れたんだよ!って言いたい気持ちすごくよく分かる。

私ツクヨミ王子の特殊能力は形態変化。

その

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電波戦隊スイハンジャー#117

第七章・東京、笑って!きららホワイト

PrincessKAGUYA3

なぜ、かぐや姫はあまたの貴公子の求愛を最後まで拒み通したか?

ここまで話聞けば分かるでしょ?だってその時、私の体は「男」だったんだもん。

あったりめーだろうがよ。

裳着の式から程なく私の男性期が始まった。媼と千鳥は私の体の秘密を知っていた。

だってー、湯殿の世話の時に裸体を見られちゃったのよ。

そりゃ二人とも「この

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電波戦隊スイハンジャー#118

第七章・東京、笑って!きららホワイトPrincessKAGUYA4

「姫からご相談の文をいただきまして

『私のような野育ちの卑しい身分の娘が尊いお方のおそばにお仕えするなどとてもとても畏れ多いこと。

かと言って無下にお断りしても

齢七十になる父にどのような禍が及ぶか思いわずらい

このうえは今を時めく空海阿闍梨におすがりして

髪を下ろし、尼になりとうございます』と

ここまで姫がお苦しみ

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