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電波戦隊スイハンジャー

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神も仏も小人も天使も異星人も暴れるヒーロー戦隊もの
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2022年6月の記事一覧

電波戦隊スイハンジャー#3

第一章・こうして若者たちは戦隊になる華麗なる家族ゲンカ

瑠璃色の閃光が室内に瞬いて消えた。

「父さん、僕はスイハンジャーのササニシキブルー勝沼悟です!!」
瑠璃色に輝くササニシキブルーは力強く宣言した。

「悟…父さんはそれ見たのもう11回目だよ。最初の『変身』から1日1回。うちの化学解析部署でもその早着替えのメカニズムは解析不能だったよ。
某宇宙刑事の『蒸着』みたいなもんだろう、ってさ。

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電波戦隊スイハンジャー#4

第一章・こうして若者たちは戦隊になる

伝説の海人(あま)

季節は春から夏に移ろいゆく。

2013年5月の天草の海は白く凪いでいた。空は晴天、青空にちぎれた白い雲が切れ切れにあるだけ。

海辺の陽射しは都城琢磨《みやこのじょうたくま》の肌をじりじりと容赦なく灼《や》いた。

日焼け止めをSPF50のやつにしといとよかった。と琢磨は思った。

彼は仕事の事情で日本各地を旅している。太陽が空の一番

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電波戦隊スイハンジャー#5

第一章・こうして若者たちは戦隊になる渚のハイカラ修験者

「さっきから異族間懇親会見せてもらってたよお。君と女神のカラミまで見たかったけど、悪いがこれも仕事でねえ!」

薄地の服ごしだが、男の肉体は野生の獣のようにしなやかに鍛え上げられている。
「あなたは誰ですかあ?」
わざと呑気そうに琢磨は声をかけたが、彼の直感は男に対して「最大級の危険」を琢磨に告げている。

なんなんだ?この殺気…脇の下に冷

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電波戦隊スイハンジャー#6

琢磨が痛みで悶絶する4時間前。九州のとある中学校でとんでもない騒ぎが起こっていた。

3年2組担任、七城正嗣は、レザーサンダルを履いた足をばたばたいわせて、自分が受け持つ教室に入って行った。

美術の女性教師、室《むろ》先生が真っ青な顔をして、正嗣に向かって叫んだ。

「七城先生っ!生徒たちが…」

教室の中の教え子たちが半数は倒れ、半数はトランス状態に陥っている。

教室真ん中の机には、こっくり

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電波戦隊スイハンジャー#7

第一章・こうして若者たちは戦隊になる金剛さまの言うことにゃ

正嗣以外の会議室の人間は、まるで金縛りにでも遭っているかのように硬直していた。

ただ、全員の目だけがかっと見開かれ、瞳孔が散大したかのように正嗣には見えた。

意識を飛ばされたか?

「皆の記憶をこっくりさんを行う以前に戻した。簡単な逆行催眠じゃ。まーくんよ、後は任せる」

空海がぱん!!と手を叩くと、止まっていた会議室の時間が動き出

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電波戦隊スイハンジャー#8

第一章・こうして若者たちは戦隊になる勝沼悟熱血教室

勝沼酒造本社ビル離れのガラス張りの温室。

中央には勝沼家のモニュメントツリーである古びた葡萄樹が小さな実をつけ始めている。

昨日悟が破壊したガラスはすっかり修理されていた。

酒豪のレッド&ブルーも、さすがに「二日酔い」という生理現象には逆らえない…

葡萄樹下の白いガーデンテーブルに二人突っ伏し、ぎゅうぎゅう脳味噌を締め付けるような頭痛に

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電波戦隊スイハンジャー#9

第一章・こうして若者たちは戦隊になるバトルだよ、全員集合!前

東京、霞ヶ関。

農林水産省職員都城琢磨は夜7時過ぎに帰庁した。

はあ、今夜は電車ある時間に終わったよ…琢磨はいわゆる「キャリア組」官僚である。

深夜まで仕事してタクシー帰宅なんていつもの事。なんであるが…

入省して2年間で一通りの研修を終えた彼に、突然上司から「ある調査命令」が下った。

それから一年間、日本各地を調査して回り

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電波戦隊スイハンジャー#10

第一章・こうして若者たちは戦隊になるバトルだよ、全員集合!後

その頃、正嗣は夕食の席で「七城真魚」の免許証を凝視していた。写真の中の坊さんは確かに空海である。

「アヤシイ外国人が偽造した訳ではないから、たぶん警察の検問もスルーできるぞよ。TATUYAのカード作れた時は嬉しかった…」

「でも結局、偽造じゃなかですか?しかも住所ここですよね?

お大師さま、あんた一般人になりすまして何するつもり

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電波戦隊スイハンジャー#11

第一章・こうして若者たちは戦隊になるバトルの後はビールがうまい

「このクソ坊主っ!なんでミサンガにテレポート機能があるって事、先に言わなかった?うちの親父寝込んじまったじゃないかっ!」

グリーンの七城さんは、第一印象では温厚そうな人だと思ったんですが…ひとたびキレると、無茶苦茶怖い人になります。

小柄なお坊さん(空海さんと言うらしいです)に掴みかかって馬乗りになり、逆に金縛り攻撃かけられて、

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電波戦隊スイハンジャー#12

第一章・こうして若者たちは戦隊になるこれにて飲み会おひらき

「わたし、物心ついた時からコロポックル様が見えるんですよねー。

地元の北海道では松五郎さんたちみたいに絣に袴じゃなくて、アイヌの衣装着てましたよー。でも言葉はわたしに分かりやすいように、東北弁でした」

冒頭から電波な話ですいません。七城米グリーンこと、七城正嗣です。

私が何故きららホワイトこと、小岩井きららさんのトークの補足をする

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電波戦隊スイハンジャー#13

第二章・蟻と水滴、ブルー勝沼の憂鬱占いはBARにいる

「どとれとみとふぁとそとらとしとどの、おとがーでにゃーい。
どとれとみとふぁとそとらとしとどの、おとがーでにゃーい。
とーってもだーいじーに、しーてたーのにぃ、ぱーぱがだーいじーに、しーてたーのにぃ、
どーしよ?どーしよ?
きららねたーん、どーすればいいのぉ?」

照明の夕焼け色の光に照らされた古代幼児で自称「ひこ」が、ものすんごくゆるゆるな

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電波戦隊スイハンジャー#14

第二章・蟻と水滴、ブルー勝沼の憂鬱依頼人

ずばり的中。

占い師MAOさんが貴方の心を見透かします。

占いはBARにいる。

鑑定料3000円。

したまち@パッカーズのブログ、文末より。

七城米グリーンこと七城正嗣のジャージをひんむいて濃紺の作務衣を着せて、素足には下駄。スポーツ刈りの頭にキャスケットをかぶせ、おまけに黒縁眼鏡をかけたら、

心を見透かす占い師、『MAOさん』一丁あがりであ

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電波戦隊スイハンジャー#15

第二章・蟻と水滴、ブルー勝沼の憂鬱水を司る者

勝沼生命化学研究所主任の西園寺真理子は、実験データが書き込まれた分厚いファイルを手に上司で研究所長である勝沼悟の所へ歩いていた。

午後3時に悟が居る場所といえばひとつである。

本社ビルに隣接するガラスの温室。

その中央には、樹齢150年という驚異的な長寿を誇る葡萄樹が淡いグリーンの実をつけて、葡萄棚にもたれるように長い蔓を伸ばして鎮座している。

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電波戦隊スイハンジャー#16

第二章・蟻と水滴、ブルー勝沼の憂鬱蟻の哀歌

革製品ショップ「BENIYA(紅屋)」は両国国技館通り沿いの、築年数浅いテナントビル二階にあった。

一階はまるまる歯科医院で、キィィーン、と不愉快なドリル音が時折聞こえる。

土曜日の今日も夕方6時まで営業。と看板に書いてある。歯科医もフルタイム営業しないとやっていけない時代のようだ。

午前11時。勝沼悟と小岩井きららは、傘を並べてビルの入り口前に

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