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40.移住先をどこにするか問題

海外ではなく日本国内だとしても、いま住んでいる場所を離れまったく別の場所へ移住するとき、どんな基準を持ってそれを決めるでしょうか。
気候が良さそうだから、昔から好きだったから、1度行ったことがあるから、知り合いに勧められたから、などいろいろあると思いますが私の場合はもっと別の理由からでした。


とりあえずシチリアは外す

イタリア移住を決意したものの、具体的にどこにするかまでは全くイメージできていませんでした。

この流れで行くと、大好きだし知り合いも多いタオルミーナに住むのが妥当でしょう。
シチリア人の彼ともお別れしたとはいえ、いろいろ助けになってくれるでしょうし。

ただ、タオルミーナにはすでにトモコさんがいます。
これまで東京とタオルミーナの2拠点で旅のプランニングをしていたし、2人で同じところへいるより私は別の場所で活動したほうが仕事になりやすいのではないかと考えたのです。

それにしてもこの時点での私には選択肢があまりにも少なかった。
頭に思い浮かぶ移住候補地、というか、単純に行ったことのある場所は下記のとおり。

・3ヵ月ほど住んでいたピエモンテ州ブラ
・ブラ滞在中に何度か訪れたトリノ
・日帰りで様子を見に行ったミラノ
・旅行で訪れたジェノヴァ、チンクエテッレ、ローマ、アマルフィ、アルベロベッロ、パレルモ

……ぐらいだったでしょうか。

移住場所を決めた決定的な理由

好きとか気候が良いとか行ったことがあるから、というのは移住の理由として私には考えられませんでした。
それより、日本とのアクセスの良い場所にするべきだと思ったのです。

というのも、タオルミーナまで行くのはかなり大変だからです。
たとえ日本からイタリアへ直行便で飛んだとしても、東京~ローマ~カターニア~タオルミーナというルートを取らねばならず、丸1日かかります。
ブラになると、東京~ミラノ~トリノ~ブラで空港からブラまで4時間ほどかかるためやはり丸1日が必要。

私には高齢の両親がいます。
いつ急な帰国を余儀なくされる事態が起こるか分かりません。
直行便のある場所なら空港からすぐにアクセスできて、日本にも帰りやすいと思ったのです。

ここまで決められると選択肢は2つに絞られ、それは必然的にミラノ、またはローマになります。

消去法で決めたローマ

このときの私はローマに対するあこがれも興味も何もありませんでした。
最初の1番目からここまでお読みいただいた方なら察しがつくと思います。
私のイタリアへの興味の中心は、歴史や音楽や美術や映画ではなく食文化ただ一つだったのです。

なので、移住先はミラノでもローマでもどちらでも良かった。
しかも仕事探しならミラノと言われていたのもあり、この流れで行くとミラノを選ぶのが妥当でしょう。

しかし私はここでもまた違う判断をします。
1度しか訪れたことのないミラノですが町の様子が東京っぽくて、まったく住みたいという気持ちになれなかったのです。
タオルミーナから日本へ帰るついでにしか滞在したことのないローマですが、そちらのほうがまだマシだと思えました。

今でも当時の情景を記憶しているのですが、路線バスに乗ってヴァチカンからテルミニ駅へ移動したときのことです。
ヴェネツィア広場から一直線に伸びるナツィオナーレ通りを行き、レップッブリカ広場へ出ました。
バスは中央の噴水を迂回するように走ります。
するとボロッとしたファサードのそう大きくはない教会が目に飛び込んできました。
豪華なパラッツォの立ち並ぶナツィオナーレ通りから一転、まるで遺跡のように見える茶色いレンガの教会が現れて、その違和感というか舞台転換装置のようなドラマチックな展開に少し心を動かされたのです。

ローマはイタリアの首都。
一応、南イタリアになるし、何よりシチリアまで飛行機で1時間もあれば行けます。

移住の地として悪くないのではないか。

消去法ではあったけれど、最終的に自分でも納得して移住先はローマ、と決めました。

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