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【読書感想#15】芥川賞を受賞した実力派作家渾身の一作。(ネタバレなし)

【概要】

作品名:ブラックボックス
著者:砂川文次
発行所:講談社
発行年:2022年
頁数:170頁
ジャンル:フィクション

【あらすじ】 

自分の中の怒りの暴発を、なぜ止められないのだろう。
自衛隊を辞め、いまは自転車メッセンジャーの仕事に就いているサクマは、都内を今日もひた走る。

昼間走る街並みやそこかしこにあるであろう倉庫やオフィス、夜の生活の営み、どれもこれもが明け透けに見えているようで見えない。張りぼての向こう側に広がっているかもしれない実相に触れることはできない。(本書より)

気鋭の実力派作家、新境地の傑作。

【評価】

3/5

【感想】

※ネタバレは含みませんのでご安心ください

本作は、第166回芥川賞を受賞した傑作純文学小説。
著者は砂川文次(すながわぶんじ)。元自衛官であり、現在は地方公務員として働いているという異色の経歴を持つ兼業作家だ。
芥川賞受賞の会見では、その飄々とした風格やラフな話口で話題を呼んだが、本作では類まれなる実力を遺憾無く発揮している。

主人公は、公的な書類や書簡などを配達する「メッセンジャー」という仕事をしているサクマ。本文では彼の心の中を述懐する場面が多く、それがなんともリアルでとても共感させられる。
今まで自分は何をしてきたのか。何を学んできたのか。何のために生きてきたのか。その内向的な思いが切実に語られており、最後の展開に繋がっていく。
主人公の中に眠る萌芽を見逃さずに注目していただきたい。

純文学ではあるが、とても読みやすい文体で、かつ170頁と文量も少なめなので、とてもおすすめの一作だ。
ぜひ読んでみてはいかがでしょうか。

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