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百物語にて候。

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#小説

【短編小説】カワクボ

【短編小説】カワクボ

40代の男が二十歳やそこらの女子大生と付き合うことに少なからず後ろめたさを感じている。しかし、私には妻や子、家族はいない。

俺が若い女と付き合おうと勝手ではないか。

『皮久保です。河川のカワでなく皮膚のカワって書くんです』

『ステキ、ピッタリですね、私達』

街の婚活イベントで出会った剃町 由美子は俺の目を見つめそう言った。何がピッタリなのかと私は思ったが、俺は彼女の愛らしい顔と露出の多い肌

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【連作短編】探偵物語日記②〜桜吹雪は逃さない〜

【連作短編】探偵物語日記②〜桜吹雪は逃さない〜

会社のテレビは常に垂れ流しか社長が相撲を視る以外には使われない。今朝はたまたまニュースだった。「……から発見された複数の遺体は、」

 俺には聞き覚えのある地名だった。

 

 俺の勤める探偵社は不定休だ。その日も例のごとく「今日はは休みな。お疲れさん」と当日に社長から伝えられた。俺には予定も無く、隣町の公園に来ていた。公園と言っても元は巨大な溜池の周りに木を植え、遊歩道をつくり、申し訳程度のベ

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【連作短編】探偵物語日記③〜創造主は遊ばない〜

【連作短編】探偵物語日記③〜創造主は遊ばない〜

 依頼人は高校生だった。髪は長めで面長な様子から勝手に引退したサッカー部かと思ったが、野球部部長17歳、つまり高校2年生だった。今時の野球部は坊主頭がでなくていいらしい。依頼料が不安だったがお年玉とバイトで貯めた金は想像以上に纏まった額だった。しかし、相手は未成年。さすがにそのまま受け取る訳にはいかず、家を訪ねて保護者からも事情を聴くことにした。道中、身の上話を聞いた。  彼には失踪した歳の離れた

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【連作短編】探偵物語日記④〜山男は歩かない〜

【連作短編】探偵物語日記④〜山男は歩かない〜

生ぬるい雨がフロントガラスにぶつかって落ちる。壊れたカーエアコンは溜息のような風しか吐かない。

俺は雇われの身だ。職業は探偵、個人営業主ではない。所謂、サラリーマンだ。会社には申請していないが、俺には霊が視え、時には会話する、所謂、霊能探偵ってやつだ。

春とも冬とも言えない湿気に満ちながら、若干の肌寒さを残した中途半端な季節の夜10時、俺は車を運転していた。黒いデカい車を。こんな居心地の悪い夜

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【短編小説】春もどき

【短編小説】春もどき

「相談したいことがある」
 友人から呼ばれ私は喫茶店を訪れていた。この喫茶店は私と友人が学生時代よく通い他愛もない話 に耽った場所である。

 彼とわたしは大学生の頃に知り合った。入学直後の4月ではなく、正月もとっくに過ぎてしまった2月のころであった。彼は地面に這いつくばって何かをスケッチしていた。私は草を描いているのかと思ったが手元を覗くとソレ はサナギだった、蝶の蛹だった。私が不思議そうに見下

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【ショートショート】白銀の背中を

【ショートショート】白銀の背中を

白い轟音の中。皮膚はもはや痛みを感じること無く鋭く突き刺さるような吹雪の振動だけを伝える。まつ毛は凍りつき辛うじて目を開けることができる。僅かな視界の先に薄い人影を捉えながら、見失わないように必死で歩を進める。人影の正体は俺の相棒だ。しかし、アイツは俺を案内している訳ではない。俺はアイツを追い越さなければならない。さもなくば、俺は間違いなく死ぬだろう。三年前に俺が殺したアイツと同じように。

三年

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【ショートショート】ハザード

【ショートショート】ハザード

豪華客船が漂流し数十日、十分にあった食料も尽き、体力のないものから死者がで始めた。
食料は無く救助がいつくるかも分からない海の上、それは暗黙の了解である。
料理人が《ウミガメのスープ》だと言って、細かい肉の入ったスープを振る舞った。肉が細かく切り刻まれているのは、せめてもの配慮だろうか。出汁をが出やすくなるための工夫だろうか。やたらと塩味が強かったが、飢餓状態の人間にとっては堪らなく美味で、毎回貪

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【ショートショート】祖母・ボソボソ

【ショートショート】祖母・ボソボソ

 もともと商売人ではきはきとして元気だった私の祖母は祖父が亡くなって以来、歩く姿もふらふらと危うく、目に見えて気力を落としボソボソとしか喋らなくなった。
祖父は酔うと決まって話すことがある。祖母との馴れ初めだ。
「婆さんが結婚しなきゃ死ぬって言うからなぁ。橋から飛び降りてやるぅ、って言うもんだから仕方ななく…たなぁ」そう言って強くもない酒を煽る。祖母はその話が始まると照れくさそうにモジモジする。

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【ショートショート】雨宿主

【ショートショート】雨宿主

大工の亀吉は村外れの寺の修繕を終え、のんびり帰る道中だった。サワサワサワ。笹の葉が風と雨に揺れる音がする。
生暖かい風が背を押すと同時に雨が亀吉を濡らした。初めこそ温く優しい雨だったものだから、濡れながら歩けばいいと呑気に歩いていたが、次第に雷が轟き冷たい大粒の雨が降り出した。
風邪をひいては困ると、走り始めたが亀吉の住む長屋まではまだ遠く雨に打たれて走るのでは息も続かない。ふと、今朝、寺までの道

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【ショートショート】狼少年Zero

【ショートショート】狼少年Zero

「狼がでるぞ〜!」少年は必死に声をあげる。
姿すら見えない狼の襲撃を吹聴する少年はいつしか《狼少年》と揶揄されるようになった。そんな彼を村人達は「可哀想に……気を引きたいんだわ」と哀れみ。「嘘つきめ」と嘲笑う。
一月前、村人達は行き倒れていたのを保護して仕事まで与えてやったのだ。彼はその頃から、狼が出ると言っていた。

最近は狼の毛皮が高く売れるので、多くのハンターが森に入り狼を狩る。そう遠くない

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【ショートショート】攻略法

【ショートショート】攻略法

 
「おいっ、ミワコ、ミワコ、起きろよ」
「んっ、いたたたた、何、えっ、いやぁ」
 二人は下界が見えないほどの遥か上空で、透明な立方体に閉じ込められていた。
「どうゆうことなの、ねえヨシオ!どこなの、ここは!」
 「落ち着け、深呼吸だ。俺も最初はパニクッたよ、でもな多分これはゲームだ。ARだかVRだか知らんが、映画とかアニメで見たことあるんだよ、ゴーグルかけたり首にプラグ突っ込んだりさ。
「何?そ

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【ショートショート】ジュース

【ショートショート】ジュース

 ぶぅーん。という冷蔵庫の音が聞こえるほど静かだった。4LDKの部屋の中には俺と友人の2人だけ。いつもは明るく美人の友人の奥さんが手料理を振る舞ってくれるのだが、今日は彼だけだ。
 「聞いてほしいことがあるから」と連絡があり、昼過ぎに彼の家を訪れた時は明かりも点けずに、寝起きのスウェット姿の彼だけが出迎えた。
 さすがにリビングは照明がついているので暗くはなかったが、カーテンは全て神経質なまでに閉

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【ショートショート】ウルトラサイズの恋

【ショートショート】ウルトラサイズの恋

 涼平は文通相手に「会いたい」という内容の手紙を送ることは禁じ手だし、マナー違反だと思っていた。だが、彼女の美しい文字を目にする度に思いは再現なく膨らむ。
「私、涼平さんは素敵だと思います」と書かれていたりもした。涼平は大変興奮した。
 もちろん「会いたい」と手紙に書くまで躊躇いはあった。文通相手である弥生の中で亮平は随分と聖人君子の好青年に仕上がっているに違いない。やれ老人の荷物を持って助けただ

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【ショートショート】感謝

【ショートショート】感謝

 ある探検家がジャングルで熱病に罹り死にかけているところを、とある部族に助けられた。お互い様だが、全く言葉は通じない外国人である探検家を彼らは手厚く看病してくれた。そのおかげもあって探検家は回復し彼らと同じ物をたべ、やせ細っていた体は肉と活気を取り戻した。
 言葉は分からないままだが、探検家は心から感謝を込めて「ありがとう、ありがとう」と日本語で礼を言った。すると彼らは喜び踊り、大きな火の前に連れ

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