こし・いたお

140字小説の鬼

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  • 140字小説

    削って削って、磨いて磨いて仕上げた140字小説です。

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    10秒足らずで読める物語にて、爽快な落ちをお届けします。

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    隙間時間にサクッと読めて、落ちを楽しめるのがショートショートの魅力です。

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    数万字に及ぶ小説を書いたのは「不死者の決戦場」が初めてです。創作初期の作品です。文字数が多くなると誤字や脱字が多発します。僕だけだと数百字の短い物語でさえ、誤字が発生しても気付けないことがあります。ましてや数万字ともなればもう…そこで力を貸してくれたのがMさんでした。Mさんは続編の「凍てつく魂の地下迷宮」でも力を貸してくれました。二作品ともMさんの力なしでは未完成のままだったと思います。Mさん、その節は大変お世話になりました!!

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固定された記事

140字小説【届け!!】

「特技はありますか?」それは私がお見合いの時にした夫への質問。「肩だけは強いんです。遠投なら誰にも負けません。役に立ったことは一度もないですけどね」そう言って笑…

こし・いたお
9か月前
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こし・いたお
6時間前

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140字小説【天才ロボット博士の闇】

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140字小説【君は独り言が多い】

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私は超ど田舎の買取専門店で働いている。馬鹿すぎる店長がなんでも買取ってしまうので今月も赤字だ。今日は本物と見間違えるほどリアルな熊の着ぐるみを買取ろうとしている…

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140字小説【脱ぎ捨てた仮面】

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140字小説【僕なら少年Aを止めれたのに】

「おはよ」朝からA君が刺すと引っ込むオモチャのナイフで僕の背中を突いた。A君はクラスの女子に愛の告白をする前も、就職の面接に行く前も、僕を使って練習した。昔からA…

こし・いたお
2週間前
5
140字小説【届け!!】

140字小説【届け!!】

「特技はありますか?」それは私がお見合いの時にした夫への質問。「肩だけは強いんです。遠投なら誰にも負けません。役に立ったことは一度もないですけどね」そう言って笑った夫の顔が一周忌に蘇り泣いた。あの時、夫と共に川で流された娘は岸へと戻れた。夫が最後の力を振り絞り、投げてくれたから。

140字小説【新たな窮地】

140字小説【新たな窮地】

「手伝おうか?」昔より太っていて最初は誰かわからなかった。車がぬかるみに嵌まる窮地に現れた古い友人、救世主だ!「待ってろ、同じ部屋の仲間も呼んでくる」「助かる!脱出できたら手伝ってくれたみんなに焼肉奢るよ」「よっしゃ!!」貫禄のある男たちの活躍で脱出した。力士たちの活躍で……。

140字小説【プラチナチケット】

140字小説【プラチナチケット】

私はチケットを求める行列にいた。ひと月待ってやっと私の番がきた。「どの国をお求めですか?」「日本です!」「無理ですね…貧困で治安も悪い国か、独裁者が恐怖によって支配する国のチケットしか残ってないです。日本は人気な上に出生率も下がっていますので転生希望者の中からクジ引きになります」

140字小説【警笛鳴らせ】

140字小説【警笛鳴らせ】

僕が車で山道を走っていると(事故多発)の看板と(警笛鳴らせ)の標識が見えてきた。この辺りは霧が発生しやすい上に急カーブの連続。僕は路肩に供えられた花を横目に慎重にハンドルを操作した。「動物が飛び出してくるから気をつけて!私はそれで…」僕はクラクションを鳴らして声をかき消した。

140字小説【君も凄いね…】

140字小説【君も凄いね…】

発掘調査員の僕は助手である妻と共に高度な古代文明の痕跡を追っていた。そんなある日、ヒマラヤ山脈の地下で広大な古代都市を発見した。遺跡の壁を照らしながら妻が言う。「わぁ!凄い!昔は地下に人工の太陽でもあったのかしら」妻は光る目で壁を照らしながら、まるで幽霊のように壁をすり抜けた…。

140字小説【鑑定失敗?】

140字小説【鑑定失敗?】

私の友人が夫と営む買取専門店へやってきた。要らないものは何でもここへ売りにくる。鑑定は友人の担当だ。ダメ夫と噂の旦那は奥でゲームをしているらしい。無数の偽物を見破ってきた目利きの鋭い友人に「昔に戻れるなら何がしたい?」と聞くと、友人は店の奥を睨みながら「鑑定をやり直す」と呟いた。

140字小説【もう少し、もう少し…】

140字小説【もう少し、もう少し…】

轟音と共に家が揺れた。家族は暴走車が突っ込んできたのかと思ったらしい。自室の椅子が壊れ、代わりに購入したバランスボール。座り心地は悪くはない。でも背もたれが欲しい所だ。「あっ!壁があるじゃないか」壁の前にバランスボールを置いて座る僕。背もたれを倒すように傾き…「あ、あぁぁぁ!!」

140字小説【天才ロボット博士の闇】

140字小説【天才ロボット博士の闇】

天才ロボット博士と呼ばれた私には愛する妻子がいた。だが通り魔に襲われ二人を失った私は抜け殻のようになった。薬物と酒に溺れ死線を彷徨ったある日、私の中の悪魔が囁いた。「私なら作れる…」容姿、声、性格、できる限り忠実に再現した妻子そっくりなロボットが完成した。「行け!復讐の時はきた」

140字小説【ルール】

140字小説【ルール】

ビルとビルの間に一人がやっと通れる細い抜け道があった。左へ一回折れた先にはルールに縛られることを嫌う父がモツ鍋の店を営んでいる。すれ違いできないので合図する。手を叩く人。口笛を吹きながら進む人。歌う人。でもある日、合図した、してないと揉める客を見た父は呟いた。「合図を統一しよう」

140字小説【タンポポ】

140字小説【タンポポ】

作家になる夢を追う夫。でも花を咲かせるどころか芽の出る気配もない。作家の世界はそんなに甘くないのだろう。石の上にも三年と夫は言うけれど、石の上では根も生えない。だから私はそのまま腐ってしまいそうな夫を手のひらに乗せ、次こそ芽が出ますようにと息を吹きかける。夫はまるでタンポポの種。

140字小説【学び舎】

140字小説【学び舎】

「みんな集まって!講義を始めます。本日のお題は承認欲求に囚われないです」定年退職した僕は一人で田舎に移住した。購入したのは激安だけど訳ありの古い屋敷。誰もいないのに廊下や階段から聞こえる足音。複数の影が目の前を通り過ぎる。でも僕が本で学んだことを語ると、“生徒たち”は静かになる。

140字小説【食べないけどね】

140字小説【食べないけどね】

おにぎりの具は無数にある。僕の中では梅干しが一番だ。流行病に苦しんだ時、病み上がりで最初に食べたのは梅干し入りおにぎりだった。五月病の新入社員みたいに会社を辞めると呟いた時、辞めるなと口を酸っぱくして応援してくれた君は、僕にとっては梅干しだった。でもたまには違う具も食べてみたい。

140字小説【君は独り言が多い】

140字小説【君は独り言が多い】

「ちょっと待って!君さ、以前から気になっていたんだけど、君は一人で過ごす時間が多いせいか、やたらと独り言が多すぎないか?頭の中を整理しているのかい?僕はね、まるで君が誰かと会話していると錯覚する時さえある。キモいんだよ!」最近やたらと独り言が多いので言ってやった。鏡の中の自分に。

140字小説【買取らないで…】

140字小説【買取らないで…】

私は超ど田舎の買取専門店で働いている。馬鹿すぎる店長がなんでも買取ってしまうので今月も赤字だ。今日は本物と見間違えるほどリアルな熊の着ぐるみを買取ろうとしている。店長の話では変わった客で着ぐるみを着たまま売りにきたという。「売りたいならそれを脱いで!」急かす店長と後ずさりする私。

140字小説【脱ぎ捨てた仮面】

140字小説【脱ぎ捨てた仮面】

私は仮面を被って生きてきた。この仮面は息苦しい。私を守る為に被っていたはずの仮面にじわりじわりとエネルギーを奪われ苦しかった。ある日、私はあまりの息苦しさに仮面を脱ぎ捨てた。すると仮面は鳥になり、まるで感謝するように私の周りを幾度も回り大空に消えた。仮面の名はつまらないプライド。

140字小説【僕なら少年Aを止めれたのに】

140字小説【僕なら少年Aを止めれたのに】

「おはよ」朝からA君が刺すと引っ込むオモチャのナイフで僕の背中を突いた。A君はクラスの女子に愛の告白をする前も、就職の面接に行く前も、僕を使って練習した。昔からA君は本番前に必ず予行演習する癖があることを僕は知っていた。だからA君がいじめっ子を刺し殺したのは、僕にも責任がある。