記事一覧
140字小説【新たな窮地】
「手伝おうか?」昔より太っていて最初は誰かわからなかった。車がぬかるみに嵌まる窮地に現れた古い友人、救世主だ!「待ってろ、同じ部屋の仲間も呼んでくる」「助かる!脱出できたら手伝ってくれたみんなに焼肉奢るよ」「よっしゃ!!」貫禄のある男たちの活躍で脱出した。力士たちの活躍で……。
140字小説【鑑定失敗?】
私の友人が夫と営む買取専門店へやってきた。要らないものは何でもここへ売りにくる。鑑定は友人の担当だ。ダメ夫と噂の旦那は奥でゲームをしているらしい。無数の偽物を見破ってきた目利きの鋭い友人に「昔に戻れるなら何がしたい?」と聞くと、友人は店の奥を睨みながら「鑑定をやり直す」と呟いた。
140字小説【もう少し、もう少し…】
轟音と共に家が揺れた。家族は暴走車が突っ込んできたのかと思ったらしい。自室の椅子が壊れ、代わりに購入したバランスボール。座り心地は悪くはない。でも背もたれが欲しい所だ。「あっ!壁があるじゃないか」壁の前にバランスボールを置いて座る僕。背もたれを倒すように傾き…「あ、あぁぁぁ!!」
140字小説【天才ロボット博士の闇】
天才ロボット博士と呼ばれた私には愛する妻子がいた。だが通り魔に襲われ二人を失った私は抜け殻のようになった。薬物と酒に溺れ死線を彷徨ったある日、私の中の悪魔が囁いた。「私なら作れる…」容姿、声、性格、できる限り忠実に再現した妻子そっくりなロボットが完成した。「行け!復讐の時はきた」
140字小説【ルール】
ビルとビルの間に一人がやっと通れる細い抜け道があった。左へ一回折れた先にはルールに縛られることを嫌う父がモツ鍋の店を営んでいる。すれ違いできないので合図する。手を叩く人。口笛を吹きながら進む人。歌う人。でもある日、合図した、してないと揉める客を見た父は呟いた。「合図を統一しよう」