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こちら合成害獣救助隊

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街に溢れる合成害獣(キメラ)だって元は動物。殺させやしない!そんな団体で働く、人と猫のキメラ「レイ」の物語。冒頭は逆噴射小説大賞最終選考作品の栄誉を賜りました。
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こちら合成害獣救助隊

こちら合成害獣救助隊

看板の群れを回避しながら路地裏の底めがけて降下する。ひときわ大きな看板を避けて目標が視認出来た。狼の体に鮪の尾。合成害獣、通称キメラだ。部長の強化外骨格が掴みかかって動きを止めてる。あたしの接近に気付いた部長が身を引く。よろけたキメラにあたしはブースト全開の蹴りを叩き込んだ。

法整備と啓蒙が実を結び、人と暮らす動物は皆幸せになったはずだった。追い詰められた悪徳企業が「犬と猫を混ぜて売る」などと

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こちら合成害獣救助隊 2

こちら合成害獣救助隊 2

承前〈レイ、狙撃地点は仗禅寺通と栄筋の交差点だ。〉

〈りょーかい。ちょっと遠いね。〉

ビルの外壁を蹴り渡りながら、あたしはスピードを落とさず横道に入る。アーマーの調子は良好だ。あたしの跳躍力を充分に増幅してくれてる。

〈これでも最短距離の広場だ。罠の敷設ももうすぐ終わる。誘導頼むぞ。〉

〈任せて!〉

CRAAAAASH!!

振り返ると、狼型キメラは散乱したガレキやゴミを吹き飛ばしながら

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こちら合成害獣救助隊 3

こちら合成害獣救助隊 3

承前あたしは身体を支えていたスパイクを収納し、身体を強いてそちらに向き直る。アサルトライフルを担いだ迷彩服の男が苛立たしげな顔であたしを見ていた。

「何回言わせるのよ新庄。あたしたちは救助隊なの。」

「オメーらの雑な作戦の尻拭いさせられんのはこっちなんだよ。いっつも回りくどい事しやがって。」

「あんたたちに出番なんか作らせやしないから、帰って寝てたらいいのよ。」

「どうだか。」

くくく、

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こちら合成害獣救助隊 4

こちら合成害獣救助隊 4

承前

「だいじょうぶ、だからね。」

コンテナが研究所の隔壁の向こうへ行ってしまう直前、あたしはそれに手を当てて、中にいる狼型キメラにつぶやいた。自分が保護した子を引き渡す時、いつもそう祈らずにはいられなかった。

ーそのあたりの感傷を省いた報告書の作成も終わったので、あたしは自室の端末の電源を落とした。もうすっかり遅くなってしまっていた。報告書の綱渡り具合を思うとこれからの活動が不安になってく

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こちら合成害獣救助隊 5

こちら合成害獣救助隊 5

承前〈来た〉

開明(かいめい)市郊外の山林部、捜索の末発見した「飛行型キメラ」の巣の入口。巣の中に罠を仕掛け終えたあたしは身を潜めながら空中のキメラをモニターしていた。

その胴体と頭部は紛れもなくゴリラだけど、腕の代わりに生えているのは長大な翼だ。翼開長10m近い。ゴリラの体毛と同じ黒色で、幅広でありつつ先端が尖ってる。グンカンドリ系だろうか。脚はつま先から先が猛禽のそれに置き換わっていた。フ

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こちら合成害獣救助隊 6

こちら合成害獣救助隊 6

承前「あんた、一体どこのだれ…」

答えを待たず、重サイバネ男はあたしの両脚を逆手で掴み直す。戦慄したあたしの視界はぐるりと周り、そのまま地面へ叩きつけられた。舞い上がる土と草。そしてすぐにまた振り上げられ、叩きつけられる。

振り上げる。叩きつける。振り上げる。叩きつける。振り上げる。叩きつける。あたしはただひたすらに頭を守り、歯を食いしばって衝撃に耐える。視界に入る限り、眼を見開き重サイバネ男

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こちら合成害獣救助隊 7

こちら合成害獣救助隊 7

承前「ぎゃああああああああーッ!!!!」

キメラの巨大な猛禽の足に掴まれた重サイバネ男は悲鳴を上げる。あたしたちを捕まえたまま空高く上昇したキメラが、今度は急降下を始めたからだ。あぁ、この子すさまじく怒ってる。誰が自分に危害を加えたか、しっかりわかってる。このまま地面に叩きつけるつもりだ。ご愁傷様…。

あたしはすでに腕から脱出していた。キメラの気があいつに向いてるってものあるけど、あたしの体の

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こちら合成害獣救助隊 8(エピローグ)

こちら合成害獣救助隊 8(エピローグ)

承前(おまえ…その姿…)
(産まれてきてはいけないのだ)
(捕まえられる?本当か?)
(なぜ生きている)
(お前らが面倒を見ろ。救助隊)
(穢らわしい獣!)
(ぼくは大丈夫)
(穢らわしい獣!)
(違う…)
(だからみんなを)
(穢らわしい獣!)
(違うよ…!)
(助けてあげて)
(獣!)

「違う!」

そこであたしは目を覚ました。伸ばした手の先は見慣れた自室の天井。久し振りにひどい夢を見た。動

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こちら合成害獣救助隊 ライナーノーツ

こちら合成害獣救助隊 ライナーノーツ

「こちら合成害獣救助隊」のセクション1は例の逆噴射小説大賞に応募した作品だ。ありがたい事に二次審査を通過している。今も逆噴射先生はまだ立っている256篇のパルプと正面から殴り合い、1vs1の決闘の形になるまで全員ブチ倒しているのだろう。願わくばうちの子達も一太刀浴びせてから倒れて欲しいと思う。

ここまで書いて来た逆噴射投稿作品の続編は、大なり小なり人や化け物や神話存在が死ぬ話だった。パルプの定義

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強襲、阻止限界点。 1/5 #こちら合成害獣救助隊

強襲、阻止限界点。 1/5 #こちら合成害獣救助隊

晴れてゆく視界の先には、泥と草花で出来た高い天井が見えた。ここはどこだろう。

綺麗な花だ。草いきれが香る中で視線を少し動かせば、天井に立つ生き物が見えた。器用だな。

猿のような毛並みに逞しい体躯。上腕は翼で、頭はカマキリ。合成害獣(キメラ)だ。

ーーーキメラ?

瞬間、身体中に痛みが走り、あたしは一気に覚醒する。世界がぐるりと回り、自分が高い梢の上から真っ逆さまに落下中だと認識した。なに?あ

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強襲、阻止限界点。 2/5 #こちら合成害獣救助隊

強襲、阻止限界点。 2/5 #こちら合成害獣救助隊

前回

落石だ。
俺は最初そう思った。
巨大な岩塊が転がり落ちてきたのだと。

だがそれは岩ではなく甲殻だった。カニとかエビとかの、アレだ。トゲのある甲殻に覆われた、恐ろしく巨大なクマだ。

奴の足元に目をやれば、重機のようなものがしがみついている。救助隊のパワーローダーだ。フォークリフトに手足をつけたようなシロモノだが、パワーは折り紙つきだ。あれが捕獲したキメラを運んでいくのを何度も見た。それが

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強襲、阻止限界点。 3/5 #こちら合成害獣救助隊

強襲、阻止限界点。 3/5 #こちら合成害獣救助隊

前回

クマ型キメラに組み付いたあたしは回想する。今日のミッションについてだ。

そこまで危険なミッションじゃなかった。
通報を受けて出動したあたし達は、順調に救助作業を進めていた。あのカマキリ頭もそのうちの1頭。残す区画はあとひとつとなった時、チームの誰かが悲鳴をあげた。想定を超えた大型のキメラ、それがこのクマ型だ。狙われたのは防御兵装を持たない記録員。とっさにあたしが庇えたところまでは良かった

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強襲、阻止限界点。4/5 #こちら合成害獣救助隊

強襲、阻止限界点。4/5 #こちら合成害獣救助隊

【前回】

『取り直しだッ!』

ARGHHHHHHHH!!!!!!

甲殻クマ型キメラは猛然と突進してくる。瞬きひとつさせてもらえないまま、クマの顎門があたしを眼前に迫る。クマ本来の俊敏さは少しも損なわれていなかった。

あたしは目を離さない。
臆せば、死だ!退くもんか!

飛び散る唾液が空中で静止する。その牙が身体を貫く寸前であっても、あたしの身体はイメージ通り動いてくれた。顎門を裏拳でいなす

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強襲、阻止限界点。5/5 #こちら合成害獣救助隊

強襲、阻止限界点。5/5 #こちら合成害獣救助隊

【前回】

がっちりと装甲に喰らい付いたキメラの顎門。ヘルメット内が悲鳴で満たされる。牙の貫通こそ免れたけど、その衝撃がもたらす激痛だけで、あたしの思考は恐怖に塗りつぶされた。

かろうじて無事な右手を、めちゃくちゃにキメラの鼻にぶつける。キメラは意にも解さない。狩られる獲物のいじましい抵抗。ただそれだけなのだ。

圧が増す。
やだ。
因子解放。
だめ。
集中出来ない。
だめ。
やめて。
あぁ。

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