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三題噺

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アプリでランダムにでてきた三つの単語から、短編物語をかいています。
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記事一覧

【三題噺 お題】夕方 お化け 煙 【ゥ゙ィーガンと第六感】

【三題噺 お題】夕方 お化け 煙 【ゥ゙ィーガンと第六感】

父が亡くなってから五年ほどになる。
ある日の夕方、おじいちゃんというものの存在を知らない、もうすぐ二歳になろうという息子が、
「お化け。でた。お化け。でた」と、ニコニコしながらかけ寄ってきた。
「どこにでたの? こっちの部屋?」ミエはやさしさのつまった声でそう尋ねると、息子は仏壇の置いてある薄暗い部屋の方を指差しながら黙ってうなずいた。
仏壇の置いてある部屋は、家の中でも一際涼しく日差しが直接入り

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【小説 お題】 破られた 約束 パズル

【小説 お題】 破られた 約束 パズル

彼は彼女との約束のことを軽く考えていた。彼に破られた約束は、純粋な彼女のパズルのようなこころのピースを失わせてしまうことになった。

【三題噺 お題】 境界 調査 滅びの

【三題噺 お題】 境界 調査 滅びの

 ある日の某新聞アプリにこんな記事が載っていた。「コンピューターの進化と人類滅びの境界についての調査結果 ◯✕大学教授」という、私には興味深いタイトルの記事を見つけた。「滅びの境界」とは、一体何を指しているのだろうかととても気になった。そんな目に見えない境界とやらをどうやって調査したというのかも不思議ではあったが、大学の教授というのは、面白いところに目をつけるものだなぁ、と、改めて関心させられた。

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【三題噺 お題】 城 養殖 閉ざされた

【三題噺 お題】 城 養殖 閉ざされた

 冒険者たちは魔女が住んでいるという城に、ようやくたどり着くことができた。深い霧と闇に閉ざされたその城の地下深くで冒険者たちが目にしたものは、ゾンビの養殖場だった。わけのわからない、腐ったような汚い色をした卵のようなものから、ゾンビが次々と起き上がって生まれてくるのだった。世界中を渡り歩き、色々なものを見聞きし戦ってきた、つわ者の冒険者たちであったが、ゾンビの養殖などとは初めて目にするものだった。

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【三題噺 お題】 孤独 週末 加速

【三題噺 お題】 孤独 週末 加速

バックミラーに何台ものバイクが迫ってくるのが映った。私の車に手をあけて合図をしながら颯爽と追い越してゆく。
いつもの独り孤独な週末のドライブの途中でのよくある光景だった。それにしても、随分と一人というものに慣れてきた。妻と別々の道を歩む選択をしてからどれくらいの時間が過ぎただろうか?もう、寂しいと感じる感覚は殆どなくなっていることにも気がついていた。

私は孤独という言葉自体があまり好きで

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【三題噺 お題】 ショッピングモール 完璧 楽園

【三題噺 お題】 ショッピングモール 完璧 楽園

Pにフラレてから一年が経つというのに、まだ頭の片隅には彼女のやさしかった笑顔が残っている。Pのやさしさに依存しきっていたAのこころは寂しさで破裂寸前のところまできていた。自分でもコントロールがきないほど傷んでしまっていた。
そのこころの辛さは誰にもわからないのだろうが、とうとう衝動買いというかたちで爆発したのだった。寂しさは、人によっては買い物に現れるという。
Aはそのタイプであったようだ。

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【三題噺 お題】 おいなりさん 空 合体

【三題噺 お題】 おいなりさん 空 合体

意味不明な夢を見た。いなりさんの油あげと白い酢飯が、昭和のアニメのように空中で合体するというものだ。

昨日の夜に家族で食べに行った回転寿司でこんな事があったからだろうか?
大好きなおいなりさんを注文しようと備え付けの端末を手に取った。
「あ。おいなりさんが売り切れてるなんて、珍しいよねえ?」
「そうだなあ。それは、あまりないかもな。オレはトロな」と、父はめったに注文しないトロを注文した。

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【三題噺 お題】 ダイエット 仮面 登山 【タイトル  ポーカーフェイス】

【三題噺 お題】 ダイエット 仮面 登山 【タイトル ポーカーフェイス】

その日も地下鉄に揺られていた。つり革をつかみながら、珍しいタイトルのポスターを見かけた。
最新ダイエット!「仮面で登山でダイエット!」芸能人の〇〇さんも、オススメ!小さな字で(かも)。と、書かれていた。そりゃあ、誰もそんなイベント企画しないわなあ……。珍しいわけだ。と、呆れてながめていた。
色々な推測が頭に浮かんだ。
仮面をつけて、登山するのだろうか?なんのひねりもないが?とか、それって危なくない

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【三題噺 お題】 期待 クッキー なめこ【タイトル 否定】

【三題噺 お題】 期待 クッキー なめこ【タイトル 否定】

パティシエになった彼女がキノコとクッキーを組み合わせた新製品を開発していると聞いた。
「一般的に考えてさぁ。キノコ+クッキーはありえないよ?なんで、そもそもキノコなの?しかも、なめこ?」
「いいじゃない。なめこクッキーくらい。時代はもう昆虫クッキーよ?」
「確かに、それはそうなのだけど。女性にうけなきゃ。男性だって食べないよ?」
「何よ、否定ばかりじゃない!私の発案を台無しにする気なの?」
「え。

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【小説練習 お題】 悪魔 擬態 サツマイモ 【神様の食卓】

【小説練習 お題】 悪魔 擬態 サツマイモ 【神様の食卓】

擬態する能力をもった悪魔と戦っていた。勇者はとっさに思いついた。
勇者は悪魔にこう言った。「お前、プライド高そうだからさ、ここにあるサツマイモそっくりには、なれるわけないよな?」と、隣にあったサツマイモをつつきながら悪魔にそう言った。
「そんな、簡単なことやってみせるぞ! まぁ、見てろ」
そう言うと、すぐにサツマイモに擬態して見せた。その瞬間。上から降ってきたフォークの先端が見事にサツマイモにな

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【三題噺 お題】 緑茶 自宅 リサイクル【タイトル 茶柱】

【三題噺 お題】 緑茶 自宅 リサイクル【タイトル 茶柱】

両親もこの家も随分と歳をとった。古くなった自宅を今後どうしてゆくか、家族で話し合っていた。
皆で思いつくことを書き出していった。
無理して立て直す。経費を抑えてリフォームする。 思い切って売りに出す。色々な意見が出てくる。
「売りに出しだってこんな田舎町の家なんて売れないわよ?」
「だろうなあ」
「田舎町を売り文句に、シェアハウスとかは?」と、妹が家のリサイクルをすればいいんじゃないのかと

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【三題噺 お題】雷雨 目 しっぽをふる 【作戦】

【三題噺 お題】雷雨 目 しっぽをふる 【作戦】

塾の帰り道の雷雨の中、目にいっぱいの涙をためている迷い犬がいた。首輪がついていたので、飼い犬だとわかる。
なんだか、汚なそうで僕は犬の前をさっと素通りした。
後ろに何か動物的なものの気配を感じる……。
何かが僕の後ろをついてくる。ずっとついてくる……。
さっきの犬だ……。
きっとママに怒られる……。
まだ、ついてくる……。
あの角を曲がると、もうすぐ家だ。
さっと振り返ると、まだついてくる……。

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