相談室の扉が開くとき~決断と再生の物語~
「先生~っ!助けてくれぇ~っ!」
けたたましい叫び声と共に、
相談室の扉が勢いよく開かれた。
飛び込んできたのは、いつもの青年だ。
彼は大袈裟に肩で息をしながら、
ソファに倒れ込んだ。
「どうしたのよ、そんなに慌てて。
また推しに貢ぎすぎて破産寸前とか?」
私は楽しそうに
クッションを彼へと放り投げた。
「違うよ!今回はマジメな話!
俺、会社を辞めたいんだ!」
彼はクッションを抱きしめ、
真剣な表情で訴えた。
私は面白半分にニヤリと笑う。
「会社を辞める?アンタみたいなヘタレが、
一人で生きていけると思ってるの?」
「先生!そんなこと言わないでよ!
もう我慢の限界なんだ。
毎日毎日、上司のパワハラに耐えて、やりがいのない仕事をして…」
彼は深刻そうに話し始めた。
私は彼の言葉を遮り、
「例えばどんなパワハラ?
もしかして、好きなアニメの悪役みたいなセリフを吐かれたとか?」
「先生!もっと真面目に聞いてよ!」
彼は怒ったようにクッションを投げ返してきた。
私はそれをキャッチし、悪びれずに笑った。
「はいはい、わかったわよ。
で、どんなパワハラなの?」
「毎日、俺の仕事ぶりをネチネチと批判してくるんだ。
しかも、みんなの前で。
おかげで、すっかり自信をなくしちゃって…」
彼は肩を落とし、力なく呟いた。
「ふ~ん、それはキツいね。
でも、会社を辞めるってことは、収入がなくなるってことだよ?
生活はどうするの?」
私は彼の目を見て、真剣な表情で尋ねた。
「うっ…それは…」
彼は答えに詰まった。
彼はクッションを取り戻すと、
再び抱きしめた。
「ほら、やっぱり何も考えてないんじゃない。
会社を辞めるってことは、人生における一大決心だよ。
ちゃんと優先順位を考えなきゃいけないんだ」
私は彼のお腹の上のクッションをポンポンと叩いた。
「優先順位?」
「そう!あんたにとって何が一番大事なのかってこと。
安定した収入?やりがいのある仕事?
それとも、ストレスフリーな生活?」
私は彼をからかうようにウィンクした。
「う~ん…難しいなぁ。全部大事だけど…」
彼は頭を抱えて唸った。
「だったら、一つずつ考えてみようよ。
例えば、もし安定した収入が一番大事なら、
今の会社で我慢するのも一つの選択肢。
でも、やりがいのある仕事を優先するなら、
転職活動を始めるべきかもしれない。
ストレスフリーな生活が最優先なら、
しばらく休職してゆっくり休むのもアリかもね!」
私は、選択肢を広げるためにも、
彼が自分の価値観を整理し、主体的に考えられるよう、
あえてこれらの提案をしてみた。
「先生、それはさすがに…」
彼は苦笑しながらも、
少しずつ自分の気持ちと向き合い始めたようだった。
私は、彼が戸惑っている様子を見て、
「もちろん、これが正解というわけじゃないよ。
あくまで、考え方のヒントとして捉えてみてね」
と付け加えた。
「ねぇ、先生。
俺、本当にこの会社でやっていけるのかな…?」
彼は突然、不安げに呟いた。
私は彼の目を見て、真剣な表情で答えた。
「それは、アンタにしかわからないことだよ。
でも、もし今の仕事に少しでもやりがいを感じているなら、
上司との関係を改善する方法を探してみたらどうかな?
もしかしたら、誤解があるだけかもしれないし、
話し合えば解決できるかもしれない」
「上司と話し合う…」
彼は何かを考え込むように、目を伏せた。
「もちろん、それでもダメなら、
転職を考えるのも一つの選択肢だよ。
でも、その前に、本当に自分が何をしたいのか、
どんな仕事にやりがいを感じるのかを
じっくり考えてみる必要があると思う」
私は彼の手を握り、優しく励ました。
数日後、青年は再び相談室を訪れた。
「先生、決めたよ。
会社を辞めて、新しい仕事を探す!」
彼は決意に満ちた表情で報告した。
「そうか、それは良かった!
で、どんな仕事を探すことにしたの?」
私は興味津々に尋ねた。
「実はさ、前から興味があった
Webデザイナーの勉強を始めることにしたんだ。
未経験だけど、一生懸命勉強して、夢を叶えたい!」
「それは素晴らしいね!
アンタならきっとできるよ!
応援してる!」
私は彼に心からのエールを送った。
相談室を出て、
彼は夕日に照らされた街並みに向かって歩き出した。
彼の後ろ姿を見送りながら、
私は心の中でつぶやいた。
「彼の決意が、彼の世界を大きく広げていくんだろうな。
人生は選択の連続。時には迷い、戸惑うこともあるだろう。
でも、どんな道を選んでも、それは決して間違いではない。
その先に、必ず新しい景色が広がっているはずだから。
だから、どうか恐れずに、自分の信じた道を進んでいってほしい」
P.S.
相談は自分にはない発想を与えてくれる。
視野を広げてくれる。
だから、人に相談すると進むべき道が早く見えたりする。
頼る人がいるというのは、それほど素晴らしいこと。
僕はそう思うのです。
◆ご相談やお問い合わせについて
それでは、最後までお読みいただき、
ありがとうございました!
物語調にしてみましたが、
何かしら得るものがありましたら幸いです。
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