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2022年3月の記事一覧

こたつから出てこない娘と手をつなぐ

こたつから出てこない娘と手をつなぐ

ある日、私が鼻歌を歌いながらリビングへ行くと、さっきまでアニメ映画を見ていた娘のハトちゃんの姿がなかった。無印良品の「人をダメにするソファー」は、人の形にへこんだままになっている。

「ハトちゃーん!どこー?」

と声をかけると、コタツの中あたりから気配がする。そして、ズビッズビッという鼻を啜る音。

「どうしたー?」

と言いながら、テレビ画面を振り返って見ると、たった今まで見ていた『カールじい

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「午後ティー」の功罪

「午後ティー」の功罪

思えば子どもの頃から、疑似恋愛の多い人生でした。恋に恋してうっとり、そしてそんな自分にうっとり。同級生から先輩、芸能人、漫画や小説の登場人物。相手は男性とは限らず、好みのルックスであれば女性でも気にしません。女子バスケット部のクールなあの子、素敵でしたもの。

この週末、バイクの後ろに乗せてもらうと疑似恋愛ができるんよと友人と語り合い、大笑いしました。タンデムシートは恋の入り口。運転手の背中に密着

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コンセプトのつくりかた

コンセプトのつくりかた

Wiiの産みの親、玉樹さんのご著書「コンセプトのつくりかた」の読書感想文です。

要約前提・コンセプトの定義

「いかにしてWiiという商品が考え出されたのか?という切り口で考えて頂くことも可能ですが、それはあくまできっかけにすぎない」と玉城さんは言います。
コンセプトとはもっと大きなもの。

なぜ私たちはこの本を手にとっているのか?
(本の中でこの本を手に取るきっかけの具体例を交えながら)共通し

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ひとり暮らしをして初めて気づく「買わないと、ないもの」

ひとり暮らしをして初めて気づく「買わないと、ないもの」

実家というところには、なんでもある。

もちろんいろんな家庭環境があり、賛否両論のある話題だとは承知しているが、少なくともわたしの実家はそうだ。特に、祖父母同居の三世代暮らしだったこともあり、古いものやら便利グッズやらが、家の中にわんさか置かれていた。

だから、ひとり暮らしをすることになったとき、「物のない暮らしになるんだろうな~(実家比)」と考えたのは、必然だ。
祖父しか使わない酒器(日本酒用

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生ける

生ける

前回の定期便で届いたユリの花が、まだ咲き誇っている。もう2週間経つ。
この間、花瓶の横を通り過ぎようとしたら、キラリと小さな光が目の端に飛び込んできた。思わず立ち止まった。振り向いて気づいたが、光っていたのは雌しべだった。私は顔をすれすれまで近づけてじっと見つめた。
雌しべは濡れて、照明の灯りを受けて輝いていた。
最初に咲いた花、次に咲いた花のどちらの雌しべも潤っていた。

花びらの中心に真っ直ぐ

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渇いた泥。

こんなことなら、セックスするんじゃなかった。
教授が死んだ。単位くれる前に。朝、13℃、晴れ。だる。代わりにめんどくさいがやってきた。晴れのちくもり。週末は雨。今日は閉店気分で、まだ寝てたかったのに。眠い。カラダが重い。はぁ。留年する。ぜんぶ心に押し込んで、煩いインターフォンに答える。

「……はい。」
「お休みのところ申し訳ありません。私、鷹見と申しまして、こういうものです……。少しお話を伺いた

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