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「科学的根拠があります」ってアヤシくない?本当に信じていいの?

日本人はもともと「科学的根拠」という言葉を嫌う傾向にあります。
「科学的にこうなっているのだから~」といくら説明しても、聞き入れてもらえない。

例えば、「水素水を飲んで内側からキレイに!」と言っている人に対して「プロテインに含まれるシステインも肌をキレイにしてくれますよ」と言っても、「マッチョになるから飲まない!」と返される、みたいなことは何度も経験してきました。

普段は、できるだけ客観性のあるデータを出しながら、誰にでもわかりやすくフィットネスについて解説しようと心がけている筆者ですが、今回は【科学的根拠を盲信するのは良くない】というお話をしてみようと思います。

●日本人のサイエンスリテラシーは上がっている

「科学」よりも「根性」「同調」を重視する文化のある日本でも、コロナウイルス関連のニュースが連日報道され、官民ともに「エビデンス」という言葉を好んで(都合よく?)使うようになってきた感覚があります。

ここで筆者は、「エビデンスの使い方が間違っている!」とか批判するつもりはありません。
メタ的な視点で物事を見る姿勢が何より大事だと思うからです。
(メタ的な視点≒一歩引いて俯瞰的に物事を見るということ)

論理的思考は後天的に鍛えることができるので、短期的な正しい正しくないはそこまで重要ではない。
むしろ、意見を出すことによって議論が活性化されるので、プラスだと考えます。日本人は議論が苦手なので、もっともっと議論をして練習すべきだとも。

特に健康関連の情報に関しては、n=1で判断するのではなく、より確率の高い方法を取ったほうがいいと筆者は考えています。

「プロテインを飲む飲まない問題」をつとっても、プロテインを飲んだ時期とプロテインを飲まなかった時期を分けて比較して…なんてことを自分の身体のみで試していたら、人生が何度あっても足りません。

なので、科学的に証明された論文などからある程度あたりをつけて、「成功しやすそうな傾向」を絞ることが大事なのです。

●間違った科学への理解

一方で、科学を理解するにあたって、「ん?その解釈で大丈夫?」と思うようなことがあります。

例えば”新サプリX”が開発されたとします。
研究者は、「新サプリXは筋肥大を刺激する効果があるだろう」と仮説を立てます。

仮説を実証するためには実験が必要です。
実験の結果、なんと「新サプリXは筋肥大を刺激する」ことがわかりました。
研究者はこの結果をシェアすべく、論文を発表します。

めでたく、「新サプリXは筋肥大に効果がある」という世界の共通認識ができました!

これ、何がいけないかわかりますか…?
もう一つの例を見てみましょう。

例えば”新サプリX”が開発されたとします。
研究者は、「新サプリXは筋肥大を刺激する効果があるだろう」と仮説を立てます。

仮説を実証するためには実験が必要です。
実験の結果、なんと「新サプリXは筋肥大を刺激する」ことがわかりました。
研究者はこの結果をシェアすべく、論文Aを発表します。

すると他の研究者たちは、
「その実験本当に正しいの?たまたまじゃないの?」
「論文Aはトレーニング初心者が対象だったからじゃないの?」
「同じ方法で高齢者に対してやっても再現できるの?」
という疑問を持ちます。

そこで、発表された論文Aの実験を再現してみた論文B、別の方法でも新サプリXに筋肥大効果があるのかどうか調べた論文C、更には論文ABCを参考にした論文Dがでてきます。

何名もの研究者が実験をした結果、やっぱり「新サプリXは筋肥大に効果がある」ことがわかった時にはじめて、
「新サプリXは筋肥大に効果があると今のところ推測できる
という結論になるのです。

一つの説に対して、他の人が同じ実験をして裏が取れることを「再現性がある」といいます。
筆者はド文系なので間違っていることを言っていたら申し訳ないのですが…
いくらすごい研究結果が出たとしても、再現性がなければ、科学ではないのです。

「アビガンがコロナに効いた!」というどこかのニュースを見たからといって、目の前の患者さんに投与して効果がなかったら意味ないですよね。
再現性が証明・担保されていないものは、「効くかどうかわからない」ので、実用レベルとは言えません。

●科学的根拠の問題点①再現性が低い

Scienceという有名科学ジャーナルが、「有名な科学雑誌で発表された心理学の論文100本の再現が取れるか」という実験をしたところ、100本中39本しか元論文で発表されたものと同じデータを再現することができませんでした。

世の中には、再現ができない、つまり実用に値しない論文が半分以上もあるのです。

●科学的根拠の問題点②ポジショントーク

論文の再現性が低いことは、世の中のほとんどの人に知られていないと思います。実際、筆者もつい最近まで知りませんでした。

有名なメーカーが自社製品に関して、自分達に都合の良い(≒再現性のない)論文だけを引用して「この製品はこれだけ効果があります!」と主張しても、それが本当かウソか、ほとんどの人が判断できないのです。

研究者としても読者としても、「新サプリXは筋肥大を刺激しない」という論文より、「新サプリXは筋肥大を刺激する」という論文のほうがおもしろいですよね?

研究者も人間なので、「正しい」よりも「おもしろい」「自分の地位を上げてくれる」ものに惹かれてしまうこともあります。
そのため、たとえ後者の論文が1本しかなくて、前者の論文が10本あったとしても、「研究者や企業の利益になる」ものが優先されることにもなりかねません。

●トレーニング界でどのようなことが起こっているか

筋トレに関する研究が本格化したのは、あくまでここ十数年のこと。
化学や物理、人文科学などの中には数十年~百数十年かけてブラッシュアップされていったものも少なくありません。

筆者も可能な限り信頼性の高い情報を紹介するように心がけてはいますが、筋トレに関する最新の研究結果といっても、あくまでそれは「現時点での最新エビデンス」であり、明日には覆っている可能性もあることを覚えておきましょう。

例えば、ここ数年激しい議論が巻き起こっているのがHMB。

「HMBの効果がすごいらしい!」(2017年)という話から、
「実は初心者にしか効果ないんじゃね?」(2018年)
「十分なタンパク質を摂取していればHMBを摂取する必要はなさそう」(2020年)
とまで、かなり結果が動いています。

たとえ間違っていようと、「●●な理由で××って▲▲だ!」という主張をすることは大事だと思います。
そこから議論が生まれ、本当に正しいかどうかが検証され、間違っていれば理由とともに反論されるからです。

HMBに関して言えば、「HMBめちゃくちゃ効果あるでぇ!」という論文があったからこそ、「まじ?HMBって本当に効果あるの?」「こういう条件にしてみたらどうなるのかな?」という視点が生まれ、議論が加速していきました。

ちなみにHMBに関して個人的な感覚でいうと、初心者の頃に飲んだクリアマッスルは増量にめちゃくちゃ体感がありました。
プロテインや食事に気を使い始めたもののなかなか体重が伸びなかったときに、クリアマッスルを飲むことで確かに体重(≒筋量)増加を感じることができました。
中級者になる頃にはあまり効果を感じられなかったので、今は飲むのをやめていますが、当時は摂って良かったと思えるサプリの一つです。

ダルビッシュ選手や、ウエイトリフティングの山本俊樹選手は2018年の時点で「体感がある」と明言されています。

一方で、HMBに関しては誇大広告が多いことも事実です。

このあたりは薬事法の問題もあったり何とも言えないのですが、まさに都合の良いエビデンスを都合よく使っている典型例ではないでしょうか。

●科学的根拠との付き合い方の結論

「Aという論文があるからサプリXには効果があるんだ!」という短絡的思考はやめましょう。

「確かに、Aという論文はある。でもBという論文ではこの結果が再現できていないし、Cという論文ではこの条件に限って効果が出るとされている。
そういえば有名人のZさんはこう言ってたな…自分の身体に合うかどうかちょっと試してみるか。」
くらいまで考えるのが理想です。

「いやいやちょっと待て、全ての事象に対して、自分でそこまで調べて検討するのは無理だろ!」

そういう気持ちもわかります。筆者も、全部の論文をあたって記事を書いている訳ではありません。
でも、「信頼できそうな情報源」を見つけることはできますし、それに加えて「最新の知識をアップデートする」モチベーションも必要です。
「自分で判断してやってみる。そして結果を観察する」こともできます。

こういう細かいことの積み重ねこそが、ボディメイクの楽しさなのではないかと筆者は思います。

●まとめ

・「科学的な根拠」とは、研究→論文→その論文を元にした研究→論文…という過程を経てブラッシュアップされていくもの。

・世の中には、一言に「論文」とされていても再現性が取れないものがたくさん混じっている。

・ネガティブな研究結果はシェアされづらい。

・企業が発信している「科学的根拠」がポジショントークでないか、一歩引いて考えてみよう。

・科学的根拠と結果を出している人の経験、自分の経験を踏まえて総合的に判断しよう。

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