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根気より呑気でたのしむ外国語

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英語をはじめ、外国語のもつ “おかしさ”、“たのしさ”、“おもしろさ” について、のんびり気楽に書き留めていく。雑考。
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#英単語

#101. ある雨の日の英語考

#101. ある雨の日の英語考

雨の日のことも好きになれたら、きっと毎日が楽しいだろう。

数年前、フィンランドの首都ヘルシンキの街を歩いていたとき、強めの雨が降っているのに、街の人たちがいっこうに傘をささないことに驚いた。

その日の雨は土砂降りで、ぼくはすぐにでも屋内に入りたくなったのだけれど、そこらにいた現地人たちは、とくべつ雨を気にしていない様子だった。

そのとき一緒に歩いていたイタリア人のロレンツォにワケを尋ねてみた

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#97. 絶望の先に希望がある

#97. 絶望の先に希望がある

フランスでは、飼っている動物にどんな名前をつけても全く問題ないが、これにはひとつだけ例外があり、「ブタに『ナポレオン』と名づけること」だけは法律で禁止されているらしい。

かの有名なフランスの英雄、ナポレオン・ボナパルトに対する不敬罪にあたるという。

「わたしの辞書に『不可能』という文字はない」の言葉で有名なナポレオンだが、さすがに自分の名前でブタが呼ばれることだけは、「不可能」とせざるを得なか

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#96.  2020 年に台頭してきた英語たち

#96. 2020 年に台頭してきた英語たち

日本では、年末になると「今年の漢字」や「流行語大賞」が発表されるが、それと同様に、英語界隈では、世界的に権威のあるさまざまな辞書が、その年を最も象徴する英単語 "Word of the Year"(今年の一語)を決めるという慣習がある。

2020 年は、日本史や世界史、現代社会や政治・経済など、未来の子どもたちが使う社会科系の教科書において間違いなく太字で記されるであろう目まぐるしい年だったわけ

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#95. 年末年始にピッタリだけど、役には立たない英単語

#95. 年末年始にピッタリだけど、役には立たない英単語

クリスマスには、不穏な話題がつきものである。

先日もこんなツイートが話題になった。目にした方も多いだろう。

若年層がターゲットであるカナル 4℃ のネックレスを 30 代の女性に贈るのは違う、という主旨のツイート。これを書いているいまの時点で 4.6 万件のいいねを集めている。

プレゼントというのは、往々にして難しい。

一年の中で唯一、世界中がいっせいにだれかに贈り物をするこの 2 日間。

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#89. 今日の夜ごはんに「ブリナー」はいかが?

#89. 今日の夜ごはんに「ブリナー」はいかが?

あまり信じてもらえないのだが、ぼくは朝ごはんは絶対食べないし、なんならお昼も食べないときがある。

夜こそしっかり食べるけれども、それ以外は別に必要性を感じない。

「よく生きていけますね」と言われたときは、「日中は光合成をしているので」と真顔で答えて相手の顔を引きつらせるのがルーティンである。



最近は日本語としても浸透しているが、英語で「朝とお昼の間に食べる食事」を brunch(ブラン

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#88. 腹が減っても、優しくはできる

#88. 腹が減っても、優しくはできる

つい最近、久々に友だちと外食をしたが、入ったピザ屋の店員が着ていた T シャツの背中に "Are you hangry?" と書いてあった。

もちろんこれは、制作者による hungry のスペルミスだろうが、実は hangry という単語自体は、近年使われはじめたスラングとして存在する。

2018 年には、英語辞典における最大の権威である Oxford English Dictionary に

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#86. 信じることは、愛することか

#86. 信じることは、愛することか

「信じる」の believe と「愛する」の love は、語源の上でつながっている。



現代英語の believe は、むかしの英語(古英語)では belyfan などとつづられており、これをさらに(英語やドイツ語などの祖先である)ゲルマン祖語までさかのぼっていくと、もともとは *ga-laubjan という単語が大元であるとされている。

この *ga-laubjan は、(ユーラシア大

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#83. アボカド弁護士

#83. アボカド弁護士

スペイン語では、「弁護士」のことを abogado(アボガド)という。

なんだかアボカド(avocado)みたいだなあと思っていたら、語源の上でもこの二単語は、奇妙なつながりを見せていた。

(※細かい部分は諸説あるようだが、今回は、膨大なソースをもとに作成されているウェブサイト Online Etymology Dictionary の説明を参照した)



まず、果物としてのアボカド(av

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#81. 「コロンブスる」とはどういうことか?

#81. 「コロンブスる」とはどういうことか?

前回の記事で、英語では milk, champion, treasure といった、本来モノを表す名詞がそのままの形で動詞としても使われることを紹介した。

その数日後、以下の本を読んでいたところ、

同じ動詞化の例としてたいへん面白いものに遭遇した。

なんと、あの 1492 年にアメリカ大陸に到達したことで有名なコロンブス(Columbus)の名前が、ここ数年動詞として使われているようなのだ。

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#80. モノだっていつか歩き出す

#80. モノだっていつか歩き出す

意思を持たないモノがひとりでに動き出すような奇跡は、現実世界じゃまだ起きないが、言葉の上ではこういうミラクルがしょっちゅう起こる。

英語の世界では、モノが勝手に動き出すのだ。



すこし大げさな言葉を使ったが、英語では、無機質なモノを表していたはずの名詞が、形も変えず、勝手に「動詞化」することがある。

たとえば、ヒトの「目」を表す eye は、そのままの形で「~を見る,凝視する」という意味

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#78. スマートな痛み

#78. スマートな痛み

和製英語としてずいぶん前から定着し、英語学習の序盤で意味を訂正される言葉の一つに smart がある。

日本語の「スマート」は「シュッとした,細身の」というような意味なのに対し、英語の smart は「賢い」という意味である。

イギリスでは、身なりや外見などに対して「おしゃれな,小ぎれいな」という意味で使われることもあるが、やはり「痩せている」というニュアンスはない。



ここまでは、ある

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#76. 感動のある毎日に、退屈はない

#76. 感動のある毎日に、退屈はない

目の前で見たことや聞いたことに対し、「感動」をしなくなってきたら、それは人間的に腐ってきた証拠かもしれない。

幼いころは、身の回りで起きることすべて、新しく、感動的だったはずである。

いまでも時々 SNS のタイムラインに流れてくる、「生まれて初めて雨を見た女の子の動画」を観ていると、いろいろと思うことがある。

満面の笑みで手を前に伸ばし、体全体で雨を感じようとする様子がこの上なく可愛い。

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#70. 「オムレツ」はむかし「オレムツ」だった

#70. 「オムレツ」はむかし「オレムツ」だった

毎日言葉に関わっていると「コミュニケーション」という日本語をよく耳にするのだが、これをよくよく聴いてみると、「コミニュケーション」と言っている人が多いのに気づく。

元となった英単語である communication のつづりを見れば、「コミュニ」の方が正しいのだが、どうも「コミニュ」派の方が優勢であるようにすら感じる。

これと同じことは「シミュレーション」にも言える。simulation のカ

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#69. イックネームはありますか?

#69. イックネームはありますか?

名前は忘れてしまったのだが、むかし「笑っていいとも!」にケータイの誤変換を紹介するコーナーがあり、

「いま髪とかしてるから待ってて!」と打とうとしたのに「いま神と化してるから待ってて!」と変換されたという話に、兄と一緒に爆笑したのを覚えている。

本来なら「かみ/とかしてる」という風に分解されるべきところを、ケータイの変換機能が「かみ/と/かしている」と誤って分析した結果起きた事件だろう。

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