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『不都合にもほどがある!(前編)ひきこもっちゃダメですか?~ふぞろいな俺たちの出会い~』不適切にもほどがある!スピンオフ(二次小説)秋津睦実編

※これは宮藤官九郎さん脚本のドラマ『不適切にもほどがある!』ファンでふてほどロス真っ只中の人間が、ムッチ先輩×不登校の佐高強をメインに考えた物語です。前編、後編合わせて3万字程度です。前編は懐メロミュージカル調、後編は少しややこしいSFに突入し、最後はちょいエロ?ファンタジーに着地します。以下、本編が始まります。

《飲んで 飲んで 飲まれて 飲んで 飲んで 飲みつぶれて眠るまで 飲んで やがて男は 静かに眠るのでしょう》 河島英五 『酒と泪と男と女』

 失恋のショックで飲めない酒を浴びるほど飲んだ後、朝帰りした俺は泥のように眠った。昼に一度、目を覚ましたはずだが、どうやら二度寝してしまったらしい。次に気づいた時はとっくに太陽は沈んでいた。はぁ…うおぉーって太陽に向かってほえることもできなかった…。何もやる気になれない。大好きなバイクさえ、乗る気になれない。後ろに乗せた純子の感触を背中が思い出してしまうから…。人生で初めて無断欠勤してしまったぜ。職場から電話がかかって来たらしく、俺は具合が悪いってことにしてくれたと、昼におふくろから聞いた気がする。

 しばらく働く気にもなれないや…。明日も仮病を使って休もう。登校拒否する奴らの気持ちがやっと分かったぜ。中学生の頃、学校をばっくれることはあったけど、登校拒否とは違ったからな。さぼってひとりで家にこもっていたわけでもなく、バイクを乗り回したり、ケンカしたりして、外の世界を謳歌していたわけだから。恋に挫折したら、外に出たくなくなったし、誰にも会いたくなくなっちまった…。

 こういうのって、そうだ。ひきこもりって言うんだ。もしこのままずっと働かなくなったら、ニート。登校拒否のことも不登校って言うらしい。全部、未来に行って覚えた言葉。俺、ひきこもりニートの先駆けになっちまうんじゃね?

 手持ち無沙汰にラジオをかけてみた。今まではラジオなんて、喫茶店で耳にするくらいだったけど、初めて自主的に聴きたくなった。

「続いてのリクエストはこちらの曲です。ラジオネームは…」

《幸せを数えたら 片手にさえ余る 不幸せ数えたら 両手でも足りない…Sachiko 思い通りに Sachiko 生きてごらん それが悲しい 恋でもいい 笑い方を忘れた時は 思い出すまで そばにいるよ》 ばんばひろふみ 『SACHIKO』

 サチコ…あぁそうだった。幼稚園児の頃、初めて好きになった子の名前は「幸子」だった。泣き虫で、いっつも泣いてたけど、泣き顔さえかわいかったな。でもかわいそうだから、俺がおどけてみせて笑わせてたんだっけ。さっちゃん…元気にしてるかな。でも今は幸子より、純子のことを思い出してしまう。純子、おまえが泣いてる時は俺がそばにいてやりたかったぜ。俺がおまえのことを必ず笑顔にするから。

「『SACHIKO』に続いてお送りするのはこちらの曲です。」

《記憶の陰にぽつりと座り 淋しげに白い指先 ピアノを弾く女 「ショパンが好きよ 悲しい調べ奏でれば 恋のできない私に似合い」と言った女…子供のような僕のことなど見もせずに 真珠のように かたく心を閉ざしてる》 村下孝蔵 『ゆうこ』

 小二の頃、担任だった優子先生。ピアノと歌が上手なきれいな先生だった。さっちゃんの次に好きになった女。「大きくなったら優子先生と結婚する」なんて宣言したけど、優子先生は子供の俺なんて相手にしてくれなかった。「先生は、睦実くんのことも、みんなのことも大好きよ」って微笑みながら、大人らしい適切な返事をしておしまいだった。俺は本気だったんだけどな…。

 でも今は優子先生より、純子の方が運命の女だったと思える。告白を通り越して、プロポーズしたのに、あっけなく断られてしまった…。

 敗因はなんだろう。あの時…俺の愚か者がギンギラギンにならなかったせいだろうか。経験豊富なフリしてるけど、実は童貞だからつい緊張しちまったんだ。あの時、ちゃんと結ばれて、付き合えていたら、プロポーズも成功していただろうか。いや…純子が未来に感化された時点で、俺に勝ち目はなかったと思う。俺は他の男ではなく、未来という時間に純子を奪われてしまったんだ。未来に負けたんだ、きっと。

 「令和を知っても自分のスタイルを貫けるムッチ先輩はやっぱりカッコいいです。」なんて純子は最後に言ってくれたけど、令和の時代を知って純子は変わった。確実に変わってしまった。髪型は聖子ちゃんカットじゃなくなったし、明菜っぽいメイクでスケバン姿が似合っていたのに、未来から帰って来て以来、ぶりっ子みたいな清楚系に変わってしまった。今のナチュラルな純子もかわいいんだけど、俺の知ってた純子ではなくなってしまった気がして、少し寂しかった。未来が純子を変えてしまったんだ。だからたぶん、俺も未来を知ったからには、変わらなきゃいけないんだと思う。マッチに憧れて、マッチを真似して生きてたけど、それじゃあ好きな女を振り向かせることはできないのかもしれない。今はカッコいいマッチだって…将来は不倫騒動を起こすことも令和に行って知ってしまったし。マッチだけを好きなままの俺ではダメなのかもしれない。

「最後はチェッカーズの最新曲をお送りします。」

《ねぇ ナナ おまえが死ぬほど好きなのに ねぇ ナナ もう迷う仲じゃないはずさ 言いのがれがうまい女だね…Want you please 未来に生きて 燃えてくれ please 過去を引きさけ You don’t cry 未来に感じ 濡れてくれ cry 過去 脱ぎすてて やろうぜ ナナ》 チェッカーズ 『NANA』

 優子先生にフラれ、傷心だった俺を癒やしてくれたのは小三の頃にクラスメイトになった奈々ちゃんだった。奈々ちゃんさえそばにいてくれたら俺は生きていけると思った。けれど奈々ちゃんとは、中学校は離れ離れになってしまって、会えなくなった。

 ひとつ年下の純子が同じ中学に入学してきたのは、俺が中二の頃。ひとめぼれだった。中学生になって以来、硬派気取りの俺は自分から好意を伝えるようなことはしなかった。純子の前では特にカッコつけて、自然と純子を振り向かせて、俺のものにしてやろうと思っていた。俺の思惑通り、純子は俺に惚れてくれた。少し前までは順調だった。未来に純子を奪われるまでは。高校へ進学しなかった俺のことを、純子は変わらず「ムッチ先輩(ハートマーク)」って慕ってくれていたし、純子と結婚できると信じていた。あんなあっけなく、あっさりフラれるなんて想定外だった。格好悪いふられ方だった…。

 未来を知った者として、純子と同じように変われたら、見直してもらえるだろうか?フミヤが歌うように、過去を引き裂き、未来に生き、過去を脱ぎ捨て、未来に感じられる俺になれたら、未来に染まった純子を取り戻せるだろうか?

 ねぇ、純子。おまえのことがまだ死ぬほど好きさ。俺は、俺は…マッチ改め、フミヤになってやるぜ。

《ちっちゃな頃から 悪ガキで 15で不良と呼ばれたよ ナイフみたいにとがっては 触わるものみな 傷つけた あーわかってくれとは 言わないが そんなに 俺が悪いのか ララバイ ララバイ おやすみよ ギザギザハートの子守歌》 チェッカーズ 『ギザギザハートの子守歌』

 純子に傷心の俺は、フミヤになるべく、革ジャンとバイクは放棄して、チェック柄の服を買いに自分の足で走った。自分を変えるために。フラれても諦めきれない愛すべき女を振り向かせるために。ヴィヴィアンのチェック柄の服で全身かためてみたけれど、到底フミヤになれた気はしなかった。マッチの時は、服装だけでしっくりきたのに。

《盗んだバイクで走り出す 行き先も解らぬまま 暗い夜の帳りの中へ 誰にも縛られたくないと 逃げ込んだこの夜に 自由になれた気がした 15の夜》 尾崎豊 『15の夜』

《信じられぬ大人との争いの中で 許しあい いったい何 解りあえただろう うんざりしながら それでも過ごした ひとつだけ 解ってたこと この支配からの 卒業》 尾崎豊 『卒業』

 フミヤになりきれない道化師みたいな俺の耳に届いたのは、街中で流れる尾崎豊の曲だった。バイクを乗り回し始めた15歳の頃が懐かしい。初めて後ろに乗せた女は純子だった。中学を卒業する時、学ランの第二ボタンをもらってくれたのも純子だった。何をしていても、結局、純子のことを思い出してしまう。俺は…フミヤじゃなくて、尾崎になろう。

 尾崎豊と言えば、白Tのイメージがあるから、買ったばかりのヴィヴィアンは脱ぎ捨てて、ジーンズに白T姿になった。白Tと言えば、もうじきブレイクするらしい吉田栄作みたいだけど。

 純子にフラれたからって、敬愛するマッチを捨てて、フミヤになるとか、尾崎になりたいとか、何やってるんだろう…俺。何者になったとしても、未来に染まった純子が俺の元へ戻ってくることはないと分かっているのに。馬鹿馬鹿しい。本物の愚か者とは俺みたいな人間のことを言うんだろう。

《愚か者よ おまえの流した涙を受けよう 愚か者よ 私の胸にほほをうずめて 今夜は眠れよ》 近藤真彦 『愚か者』

 年が明けたら間もなくリリースされるマッチの曲を口ずさんだ。令和に行った時、ホストの先輩がカラオケで歌っていたのを聴いて覚えた。俺は今、とんでもなく愚か者の気分だぜ…。結局、俺はマッチに救われ、マッチに着地するんだよな。もう、自分らしさを封印するのはやめよう。どうしたって、俺はマッチが好きなんだから。純子を忘れられないのと同じように、マッチのことも忘れられない。身体と心にマッチが染み付いてしまっているから。

《安奈 おまえに会いたい 燃えつきたろうそくに もう一度 二人だけの愛の灯をともしたい 安奈 クリスマス・キャンドルの灯は ゆれているかい 安奈 おまえの愛の灯は まだ燃えているかい》 甲斐バンド 『安奈』

 一瞬だけ身にまとったチェック柄の服を紙袋に忍ばせて、白T姿で帰宅するとまた部屋に閉じこもった。ラジオをつけるとその曲が流れていた。最近は女の名前の曲ばかりで、俺に対する嫌がらせかと思った。何を聴いても純子を思い出す。今年のクリスマスは純子と二人きりで過ごしたかったのに。愛の灯をともしていたのは俺だけだったのか。純子の眼差しはもはや、俺ではなく未来を見据えていたのか。

 そうだ、俺もラジオ番組に何かリクエストしてみよう。仕事もほったらかして、ひきこもり生活を始めた俺は、人生で初めてラジオ番組宛てにリクエストハガキを書いた。

「忘れられない女がいます。最高の女でした。彼女を奪った未来が憎い。でも未来には敵いっこない。部屋にひきこもってばかりの愚かな俺にこの曲を聴かせてください。長渕剛の『順子』をリクエストします。ラジオネーム・未来に降り立った男」

 リクエストハガキが読まれるかもしれないと思うと、ドキドキして部屋の中にしかいなくても、案外楽しめることに気づいた。ラジオを聴きながら、ゴロゴロするのが実は性に合っているのかもしれない。バイクに乗らなくても、ケンカしなくても、誰とも会わなくても、生きていけると知った。

「睦実、いつまでぐうたらしてるつもり?仕事、クビになるよ?もし整備の仕事が嫌になったのなら、だんご屋を継いでもらうからね。」

 呑気な俺とは対照的に、おふくろはピリピリしていた。無理もない。中卒で学歴も何もない俺が仕事をさぼって、ブリーフ姿で寝転んでラジオばかり聴いて過ごしているのだから。だんご屋なんて継ぐつもりはないけど、いざとなったら家業を手伝うしかないのかな。あーぁ、めんどくせー。このまま何もしないでぼんやり暮らしていたい。純子と結ばれない世界で生きていても虚しいだけだから。

「汚れっちまった悲しみに 今日も小雪の降りかかる 汚れっちまった悲しみに 今日も風さえ吹きすぎる…」

 ラジオからは時折、詩の朗読も流れた。そろそろ小雪が舞う季節。ひゅーひゅー隙間風が吹きつける俺の心にその詩は響いた。詩なんて興味なかったけど、あまりにも勉強しない俺に、昔おふくろが詩集を買ってくれたことがあった。中原中也の詩集を。マンガに紛れてホコリをかぶっていた中也の詩集をパラパラ眺めた。

「みちこ そなたの胸は海のやう おほらかにこそうちあぐる。はるかなる空、あをき浪、涼しいかぜさへ吹きそひて 松の梢をわたりつつ 磯白々とつづきけり。…」

 中也、今ならおまえの気持ちがよく分かるぜ。純子の胸は海のようだった。純子という存在は俺のすべてを包容してくれるような、大きな存在だったから。忘れられない。忘れようとしても思い出してしまう。

純子を乗せて海までバイクで走ったあの夏のきらめきを。海風になびく純子の髪の毛。海風に揺れる長いまつ毛。夕日に朱く染まる頬。瞳を閉じて、波音に耳をすます純子の横顔。純子の唇を奪いたいとチャンスをうかがっていた俺。砂浜には純子と俺の重なり合う影が長く伸びていた…。

 あれ?俺、もしや詩人に向いてる?中也を目指すのもアリかな。詩人なら、部屋に閉じこもったままでも可能な仕事だし。

「サーカス小屋は高い梁 そこに一つのブランコだ 見えるともないブランコだ 頭倒さに手を垂れて 汚れ木綿の屋蓋のもと ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん…」

失恋して以来、道化師みたいな俺だし、いっそピエロを目指すのもアリかな。

 突如出会った中也に感化され、また我を見失いかけていた矢先、ついに待ち望んでいた瞬間が訪れた。

「続いてはラジオネーム・未来に降り立った男さんからのリクエストにお応えします。…」

《離れない 離さない 離したくない君 いろんな言葉で君に愛を告げてきたけれども 終わりさ みんな終わりさ 僕のひとりよがり 君へつないだ心の糸は今プツリと切れた 順子 君の名を呼べば僕はせつないよ やさしさはいつも僕の前でカラカラから回り 順子 君の名を呼べば僕はかなしいよ だから心のドアをノックしないで ノックしないで》 長渕剛 『順子』 

 やった。俺のリクエストが読まれたぞ。もしこのラジオを純子も聴いてくれていたら、俺の一途な想いが伝わるんじゃないか。純子の心のドアを俺はラジオを通してノックし続けてやる。どうせ純子のことは忘れられないんだから。詩人にも道化師にもなれやしない俺はフラれた純子に執着するしかないんだ。そういうのってたしか未来ではストーカーっていうらしいけど。ヤバイかな、俺。

 「ねぇ、マスター、ムッチ先輩って最近ここに来ないよね?」

喫茶店・すきゃんだるを訪れていた戸倉明美がマスターに尋ねた。

「秋津くんなら最近顔出さないね。どうしたんだろ。」

「やっぱり…ムッチ先輩、純子にフラれたことが相当ショックなのかな。」

明美はラジオから流れる長渕剛の『順子』を聴きながら呟いた。

「あー…そうかもしれないね…。」

「マスターは二人が最後に会ってるところ見たんでしょ?どんな感じだった?」

「うん、まぁ、見たけど。純子ちゃんはあっさりしてたよ。秋津くんはちょっと放心状態だったかな。」

「やっぱり…あの時だったんだ…。」

「えっ?どういうこと?」

「ううん。何でもないです。」

《夕暮れの街角 のぞいた喫茶店 微笑み見つめ合う 見覚えある二人 あの娘が急になぜか きれいになったのは あなたとこんなふうに 会ってるからなのね 好きだったのよ あなた 胸の奥でずっと もうすぐわたしきっと あなたをふりむかせる》  石川ひとみ 『まちぶせ』

 中学生の頃から私はずっとムッチ先輩だけを見つめていた。なのにムッチ先輩ったら、純子にぞっこんで私のことなんて見てくれないんだもの。ずっと純子が羨ましかった。先輩の第二ボタンをもらえたのは純子だったし。仕方なく、私は第三ボタンをもらった。ムッチ先輩にかわいがられて妬ましかった。純子だけ、先輩のバイクに乗せてもらえて悔しかった。悲しかった。苦しかった。不良のムッチ先輩につり合うように、強気なスケバン演じてたけど、陰ではいつも泣いていた。ムッチ先輩に愛してもらえなくて…。

《出逢いは風の中 恋に落ちたあの日から 気づかぬうちに心は あなたを求めてた 泣かないで恋心よ 願いが叶うなら 涙の河を越えて すべてを忘れたい せつない片想い あなたは気づかない》 小泉今日子 『木枯らしに抱かれて』

 最近発売されたキョンキョンの新曲みたいな心境だった、ずっと。ムッチ先輩をフルなんて純子のことが許せなくもあるけど、やっと私に巡ってきたチャンスを逃すわけにはいかない。傷心のムッチ先輩を癒やしてあげられるのは先輩だけをずっと見ていたこの私だけ。先輩のことなら何でも知ってるんだから。純子にぞっこんなこともかなり早くから察知していたし、純子とムッチ先輩が二人きりで会ってる時も陰からこっそり見てたし。さっきラジオで読まれたリクエストもきっとムッチ先輩のハガキだわ。少し前に先輩がポストに何かを投函するのを目撃したし。

《だから私の恋は いつも 巡り巡って ふりだしよ いつまでたっても恋の矢は あなたの胸には ささらない》 長渕剛 『巡恋歌』

《悲しい位に私 いつもあなたの前では おどけて見せる道化師 涙なんていらない わかりきってる強がり 平気で言ってみても 一人ぼっちの時には そっと涙を流す…私 待つわ いつまでも 待つわ たとえあなたが ふり向いてくれなくても…》  あみん 『待つわ』

 悔し涙を流しながら待った甲斐があったわ。マッチをやめて、フミヤを意識した服を着てみたり、尾崎みたいな白T姿になってみたり、自分を見失って彷徨っている不安定なムッチ先輩をモノにするなんてきっと容易いわ。今じゃ仕事も休んで、ほとんど部屋に閉じこもってばかりだもの。弱っている時こそ、チャンスよね。私は、ムッチ先輩がマッチでもフミヤでも尾崎でも何を目指しても構わない。どんな先輩のことも愛する自信がある。先輩の心のドアをノックし続けるわ。私の深い愛で、ムッチ先輩の傷を癒やしてあげる。

《ああ できるのなら 生まれ変わり あなたの母になって 私のいのちさえ 差しだして あなたを守りたいのです この都会は 戦場だから 男はみんな 傷を負った戦士 どうぞ 心の痛みをぬぐって 小さな子供の昔に帰って 熱い胸に 甘えて》  岩崎宏美 『聖母たちのララバイ』

 俺の次に読まれたリクエスト曲は岩崎宏美の『聖母たちのララバイ』だった。何つーか、女の歌って重いし、怖い。圧を感じる。『待つわ』とか『まちぶせ』も男からしたら恐怖。好きな女からそう思われたら嫌じゃないけど、好きでもない女から密かにそんなことを考えられていたらと思うとぞっとする。その点、男の歌はいいよな。失恋ソングも純愛ソングも、女が歌うラブソングと比べたら、あったかくて心に沁みるぜ。

 二週間ほど過ぎた頃、俺のリクエストハガキを聞いたリスナーから、番組宛てにハガキが届き、それがまた読まれた。

 「『順子』をリクエストした未来に降り立った男さん、部屋にひきこもってばかりで、自分のことを愚かだと思ってしまう気持ち、よく分かります。私もそうだから。でも失恋を経験したあなたのことが少し羨ましいです。私は恋を知らないから。誰かを好きになったことがないんです。私は不登校で、部屋でファミコンばかりして過ごしています。恋は知らないけど、ゲームと音楽ならちょっと詳しいです。私が最近、気になる曲をあなたに送ります。ラジオネーム・不登校のキョーコさんからのリクエストは…」

《悲しまないで きみを責めないで 真面目に生きてるのに悩まないで 淋しさだけの若さはいらない 無口なほど情熱を感じるから…きみに逢えてから本当の孤独が優しさにあると知ったよ》 大江千里 『きみと生きたい』

 俺と同じく部屋に閉じこもっている不登校のキョーコちゃん…。俺のことを気にかけてくれて、俺のためにリクエストハガキを書いてくれてありがとう。きみの気持ちは受け取ったぜ。やさしくて沁みる曲だな…。学生のキョーコちゃんは恋を知らないのか。失恋はつらいけど、恋の素晴らしさを教えてあげたいな。俺、キョーコちゃんのこと好きかも…。純子にフラれて、もう恋なんてしたくないって思った時もあったけど、やっぱり恋はいいものだよ。好きな人のことを考えるだけで、生きる力が湧いてくるから。キョーコちゃんに会ってみたい。キョーコちゃんに会いたい気持ちが止められない。俺の運命の女はきっと、不登校のキョンキョンだったんだな。キョンキョンと出会うためのラジオだったんだ…。

 俺のためにハガキを書いてくれたキョンキョンに恋に落ちた俺は慌てて返事のハガキをしたためた。

《渚のはいから人魚 キュートなヒップにズキンドキン 渚のはいから人魚 まぶしい素足にズキンドキン》 小泉今日子 『渚のはいから人魚』

 タイミング良く、ラジオから流れてきたキョンキョンの曲を聴きながら、キョーコちゃんの姿を妄想した。キョーコちゃんは高校生かな。髪は長いのかな。おしりやおっぱいは大きいのかな…。夏になったらキョーコちゃんと一緒に海に行って、まぶしい水着姿を見たいぜ。冬になったばかりだというのに、俺は来夏の渚に思いを馳せていた。純子のことは一生忘れられない、純子以上の女なんていないと思い込んでいたけど、新たな恋なんて案外、突然訪れるものなんだな。この世に女は純子だけじゃないもんな。これから俺はキョンキョンとの恋に生きるぜ。キョンキョンが教えてくれた大江千里になりきってさ。

 何、この女…。私のムッチ先輩に公共の電波を使って公衆の面前でアプローチするなんて許せない。ラジオを聴いていた明美は慌てて睦実の家へ向かった。

「先輩、ムッチ先輩。私、明美です。たまには一緒にすきゃんだるに行きませんか?」

睦実の家に勝手に上がり込んだ明美は、睦実の部屋のドアをノックした。

「誰?あっ、純子のダチの…。」

「明美です。先輩のバイクに乗せてください!」

「ごめん、今から俺忙しいからさ。バイクはもう乗らないし、やることがあるから。」

「じゃあ先輩のお手伝いさせてください。何でもしますから。」

「そう?じゃあ大江千里になるの手伝ってくれる?これから千里っぽい服を買いに行こうとしてたからさ。」

失恋して落ち込んでいたはずの陸実がすっかり元気を取り戻し、意気揚々としているものだから、明美はすぐに勘付いた。

(先輩…ラジオの子が気になってるんだわ。本当は嫌だけど、先輩の動向を探るためにも、大江千里になることに協力しないとね。)

「分かりました。どこへでも付き合いますよ。千里っぽい服売ってるお店、知ってます。」

「ほんと?助かるぜ。」

 純子のダチのおかげで、千里っぽいメガネやジャケットをすぐに見つけられて助かったぜ。後は俺のハガキがまた読まれることを祈るだけだな。

 新たな恋のパワーで仕事にも復帰できた俺は、ワルたちとつるむのもやめて、直帰するとすぐラジオにかじりついた。

「未来に降り立った男さんから、不登校のキョーコさんへ返事のハガキが届いています。公開文通みたいになってますね。キョーコちゃん、素敵な曲を教えてくれてありがとう。きみの思いやりが心に刺さったよ。恋なら俺が教えてあげるよ。いつかキョンキョンと一緒にファミコンしたり、音楽を聴けたらいいな(ハートマーク) リクエスト曲は…」

《夕焼けのモータープールに 借りたてのレコード返しに行く ルックスや性格さえ よく知らなくても すぐに友達になれる…BOYS&GIRLS BOYS&GIRLS 十年経っても出逢ったその時も ラストは君と》 大江千里 『BOYS&GIRLS』

 キョーコちゃんの好きな大江千里の曲で愛の告白をしたつもりだった。ラジオパーソナリティはよく読んでくれたな。こんな公開告白みたいなハガキを。

それから二週間、ドキドキしながら返事のハガキが読まれる瞬間を待った。返事なんてもうこないかもしれないけど。

 「またまた未来に降り立った男さん宛てに不登校のキョーコさんからハガキが届いています。恋はできなくてもいいんです。一緒にファミコンしたり、音楽聴けたりする友だちならいて、不登校の私を気にかけてくれる子ならいるから。未来に降り立った男さんとも友だちになれたらいいな。ほとんど家から出ない私ですが、時々すきゃんだるという喫茶店でクリームソーダを飲むのが好きです。リクエスト曲は…」

《Baby スニーカーぶる~す Baby この世界中 Baby 涙でびしょぬれ Babyスニーカーぶる~す Baby 俺達はまだ Baby 青春知らずさ》 近藤真彦『スニーカーぶる~す』 近藤真彦 『スニーカーぶる~す』

 俺がマッチ信者だったことをキョンキョンは知らないはずなのに、マッチの曲をリクエストしてくれるなんて…。しかもすきゃんだるでクリームソーダ!キョーコちゃんは案外近くに住んでるってことだ。運命としか思えない。友だちになれたらいいって遠回しにフラれた感もあるけど、でも会えらたきっとキョンキョンも恋におちてくれるはず。

 「不登校のキョーコちゃん、俺も…俺もすきゃんだるのクリームソーダが好きです。それから新作のキャラメルフラペチーノがおすすめ。おいしいよ。いつか会えたらいいね。 未来に降り立った男」

《もしも 願いが叶うなら 吐息を白いバラに変えて 逢えない日には 部屋じゅうに飾りましょう 貴方を想いながら Darling,I want you 逢いたくて ときめく恋に 駆け出しそうなの》 小林明子 『恋におちて Fall in love』

 気づけば俺は苦手なはずの重い女のラブソングをリクエストしていた。そして未来で飲んだキャラメルフラペチーノというドリンクがすきゃんだるにあるという作り話をしてしまった。クリームソーダより、どんな飲み物だろうって興味を示して来てくれるかもしれないと思ったから。タピオカミルクティーも捨て難いけど、タピオカはすぐには準備できそうにない。うちのだんご屋でタピオカに似たものは作れるかもしれないけど、開発するまで時間がかかりそうだし、今のすきゃんだるで、すぐに新メニューにできそうなのはタピオカより、キャラメルフラペチーノ。ミルク、キャラメルシロップ入りのコーヒーにホイップクリーム乗せてキャラメルソースをかければいいんだから。

 睦実とキョーコのラジオのやり取りを静観していた明美はすきゃんだるにいた。

(ムッチ先輩はきっとすぐにここに来るはず…。)

「マスター、キャラメルフラペチーノとかいう飲み物あるの?キャラメルのクリームソーダみたいな感じ?」

「ラジオで聴いたんだけど、キャラメル何とかください。」

すきゃんだるのマスターはラジオを聴いた客の対応に追われていた。

 明美が予想した通り、間もなく睦実が現れた。

「もしかしてラジオのハガキ…秋津くんなの?困るよ。勝手にキャラメル…フラ…フラペチーノとかってドリンクがうちにあるって宣伝されちゃ。」

「すみません。だからそのドリンクの作り方をこれからマスターに教えますから。看板商品になること、間違いないですよ。クリームソーダより人気出るはずですから。」

 睦実はマスターにキャラメルフラペチーノを伝授すると、休みや仕事帰りはすきゃんだるに入り浸るようになった。キョーコがすきゃんだるに来るかもしれないからだ。

 「秋津くんが教えてくれたドリンクが好評なのはうれしいけど、お客さん多すぎて困っちゃうよ。ひとりじゃ対応しきれないから、休みの日はうちを手伝ってくれる?」

「もちろん、そのつもりです。」

睦実はキャラメルフラペチーノを運びながら、クリームソーダを注文する客に注目していた。クリームソーダ好きのキョーコが客の中に紛れているかもしれないから。

「キョーコちゃん、キョーコちゃん…。キョンキョン、キョンキョン…。」

「何、秋津くんってキョンキョンファンだったの?」

「あっ、はい。まぁ、そんな所です。」

「前に一度、うちにキョンキョンが来てくれたことはあったけど、そう何度も来てくれるわけな…。」

マスターと睦実がキョンキョンの噂をしていたところへ本物の小泉今日子が現れた。

「いらっしゃいませ…。」

「キャラメルフラペチーノって飲み物ください。ここのそのドリンクおいしいって聞いて。」

人目も気にせず、キョンキョンは混んでいる店内に現れた。

「えっ?キョンキョン?」

「キョンキョンに会えるなんて…この店に来て良かった。」

「キョンキョン、サインください。」

あっという間にキョンキョンは客に囲まれてしまった。

「マスター、こういう時のためにテイクアウトドリンクも使った方がいいですよ。」

「テイクアウト?」

「持ち帰りってことです。そうすれば混んでいても、ドリンクだけ買えるお客さんが増えますから。」

「なるほど。その手があったか。秋津くん、アイディア豊富だから、うちの店継いでくれない?俺もそこそこ歳だからさ。後継者ほしいのよ。」

「大丈夫ですよ。マスターは将来もひとりでちゃんとこの店を切り盛りしてますから。夜は手伝ってくれる人も現れますし。」

「何?どういうこと?とりあえずキョンキョンに早くキャラメルフラペチーノ届けて。」

客たちがキョンキョンに群がる中、ひとりの少年だけは彼女に見向きもせずに、店の片隅でクリームソーダを飲んでいた。

 睦実はなんとなく、その少年が気になり、声をかけた。

「きみは、キョンキョンとか興味ないの?せっかくアイドルに遭遇できてるのに。」

「僕は…アイドルとか興味なくて。一番興味あるのはゲームと音楽、それからラジオくらいで。」

「へぇ…ゲームと音楽とラジオね…。きみ、名前は?」

「佐高強です。」

「強くんか。俺は秋津睦実っていうんだ。」

睦実は強の顔をじろじろ見ながら言った。

(端正な顔立ちしていて、美少年ではあるけど、女…じゃないよな。まさかな…。)

「秋津さんは大江千里みたいな格好をしているんですね。」

「えっ?あぁ、まぁな。好きな子が…千里ファンみたいだから。」

「ふーん。なるほど…。」

クリームソーダを飲み終えた強は追加注文した。

「キャラメルフラペチーノってドリンクもください。ラジオで知り合った人が、ここのそのドリンクを勧めてくれたから。」

「ラジオで知り合った人…。」

(まさか、まさかな…。だってキョンキョンはキョーコって女の子なんだから。強くんがキョンキョンなわけない…。)

 店内から本物のキョンキョンが去り、静けさを取り戻した頃、睦実は強にキャラメルフラペチーノを届けた。

「秋津さんはもしかして…未来に降り立った男さんですか?」

睦実は無言で固まっていた。

「僕…キョーコです。不登校のキョーコ。」

《ヤマトナデシコ七変化 素顔の方がウソつきネ ヤマトナデシコ七変化 絵になるネきわめつけ 純情・愛情・過剰に異常 どっちもこっちも 輝け乙女》 小泉今日子 『ヤマトナデシコ七変化』

 パニック寸前の睦実の脳内ではその曲が流れていた。と思ったら、ラジオからもその曲が流れていた。

「えっ…きみが…キョーコちゃん…?女の子…じゃなかったの…?」

睦実は呆然としながら尋ねた。

「はい。なんか勘違いさせていたら、すみません。僕がキョーコです。強だから強子ってラジオネーム考えたんです。友だちにバレたくなかったから、女のフリしてました。ごめんなさい。」

「はは…なるほど強子でキョーコね…。別にきみは悪くないよ。勝手に勘違いしてた俺が悪いんだからさ。」

キョーコのことを渚のはいから人魚なんて妄想していた睦実は純子の時とは全く違う敗北感を味わっていた。

《好きな女に裏切られて笑いを忘れた道化師が すがる失恋レストラン もうおどけることもない 今は ネェーマスター つくってやってよ 涙忘れるカクテル》 清水健太郎 『失恋レストラン』

 睦実を偵察するために、同じくすきゃんだるでアルバイトしていた明美は二人の関係が分かると心の中で歓喜を上げていた。

(なーんだ。ムッチ先輩が片想いしていたラジオの子って男の子だったんだ。心配するまでもなかったわ。私の勝ちね。)

「ねぇーマスター。ムッチ先輩にも何かドリンクを。とびきり元気の出るスペシャルなやつ。」

《時の流れに 身をまかせ あなたの色に染められ 一度の人生それさえ 捨てることもかまわない だかれ お願い そばに置いてね いまは あなたしか 愛せない》 テレサ・テン 『時の流れに身をまかせ』

《僕達は小さな舟に 哀しみという荷物を積んで 時の流れを下ってゆく 舟人たちのようだね 君のその小さな手には 持ちきれない程の哀しみを せめて笑顔が救うのなら 僕は道化師になれるよ 笑ってよ君のために 笑ってよ僕のために きっと誰もが同じ河の ほとりを歩いている》 さだまさし 『道化師のソネット』

「時の流れには抗えないものですね。過去も未来もどうにも変えられない。出会った人たちと共に作り上げてゆくものなんでしょうね。時間は。」

ラジオパーソナリティーがそんな総括をしながら、次々時にまつわる曲を流していた。

《時の過ぎゆくままに この身をまかせ 男と女が ただよいながら もしも二人が 愛せるならば 窓の景色も かわってゆくだろう》 沢田研二 『時の過ぎゆくままに』

《疲れを知らない子供のように 時が二人を追い越してゆく 呼び戻すことができるなら 僕は何を惜しむだろう》 布施明 『シクラメンのかほり』

 俺は…俺は…。とんだ道化師さ。勝手に女だって決めつけて、舞い上がって、ときめいて、恋して、事実を知って、失恋する前にフラれた気分。なんて格好悪いんだろう。整備や喫茶の仕事なんてやめて、ほんとに道化師目指そうかな。

 いっそ、未来へ戻りたい…。純子も架空のキョーコのことも忘れられる令和の時代へ。今度こそ、ホストになって、億稼げる男になりたい。先輩ホストに言われたし。おまえ、ホストに向いてるよって。こんな、こんな…失恋しかない昭和にいるより、令和でたくさんの女たちと遊んで、気を紛らわしたい。俺は馬鹿だから、こんなことしか考えられないぜ。

「このドリンクすごくおいしかったです。あの…秋津さん、未来に降り立った男さん。本当に僕と友だちになってくれますか?」

いつの間にかキャラメルフラペチーノを飲み干していた強が睦実に尋ねた。

「友だち…?あぁ、そんな約束したような。いいぜ。ダチになるくらい。」

睦実はひとりで繰り広げていた妄想をやめて我に返った。

「まさか強が男だったとはな。やられたよ。中学生?」

「はい、中二です。不登校ですけど。」

「中二か。俺は女子高校生だと思い込んでたよ。」

「すみません…。僕も秋津さんのことは同い年くらいだと思ってました。大人をからかってごめんなさい。」

「別にいーよ。そもそもラジオなんて顔も年齢も何も分からないからこそ、想像がふくらんで楽しめるのかもしれないしさ。それからムッチでいいよ。俺、ムッチ先輩って呼ばれてるんだ。」

「睦実だからムッチ先輩なんですね。ムッチ先輩のラジオネームに惹かれたんですよ。未来に降り立った男なんてどんな人だろうって。」

「あーそれな。実は本当なんだよ。」

睦実はニヤリと笑いながら呟いた。

「えっ?本当って?どういうことですか?」

「強、今日は時間あるか?」

「はい、今日はってより、毎日ずっと時間だけはあります。学校行ってないから…。」

「だよな。じゃあ顔貸せよ。」

「すみません、マスター、俺早退します。後は頼んだぞ、明美。」

睦実は強と一緒にすきゃんだるから出て行った。

 えっウソ、今初めて私のこと名前で呼んでくれた。どうしよう、うれしい。録音しておきたかった。お店、頼まれちゃったけど、二人のことも気になる…。男って分かってほっとしたけど、まさかムッチ先輩、男のことも好きだったりしないよね?たまにあるからな。風と木の詩みたいな男同士のラブストーリーも…。ちょっと心配。だけどムッチ先輩から名前でお店頼まれたから、仕事がんばらなきゃ。

《あなたと逢った その日から 恋の奴隷になりました…あなただけに 言われたいの 可愛い奴と 好きなように 私をかえて あなた好みの あなた好みの 女になりたい》 奥村チヨ 『恋の奴隷』

後編へ続く

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