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『僕らの出会い「おかえりモネ」菅波光太朗×「東京タワー」小島透が出会う世界線』坂口健太郎&永瀬廉ドラマ二次小説

※二次創作だからこそ可能なパラレルワールド?を描いてみました。
 
《同じ様な生き物ばかりなのに どうしてなんだろう わざわざ生まれたのは 世界が時計以外の音を失くしたよ 行方不明のハートが叫び続けるよ あっただけの命が震えていた あなたひとりの 呼吸のせいで》 BUMP OF CHICKEN 『月虹』
 
 昨夜まで降り続いた大雨が嘘みたいに晴れ渡り、無数の大きな水たまりに眩い太陽の光が揺らめいていた朝…。息子が生まれて半年が過ぎ、すくすく成長を遂げる息子に対する愛しさは日々、風船のように膨らみ続けていた。幸せボケで気が緩んでいたせいか、出勤早々、つまずいて転びそうになった。そんな僕の目の前に、突如、ざわめきを与える存在が現れた。
「大丈夫ですか?」
手を差し伸べてくれたその人を確認すると驚きのあまり、また転びそうになってしまった。
「大丈夫です、ありがとうございます。えっ…?及川…亮…くん?」
半年取得した育休明け、職場の呼吸器科に、かつての恋敵にそっくりな容姿の新しい医師が配属されていた。
「初めまして。菅波先生ですよね?ずっとお会いできる日を楽しみにしていました。僕は小島透と申します。」
彼はネームプレートを見せながら微笑んでくれた。びっくりした…他人の空似か。気仙沼で漁師をしている亮くんが、ここにいるわけないもんな。
「あっ…すみません。小島先生ですか。初めまして、菅波です。」
「菅波先生は半年前にお子さんが生まれたそうですね。おめでとうございます。」
「ありがとう。息子の名前は光音と書いて、アルトって言うんだ。育休を取得して気づいたけど、赤ちゃんのお世話は二十四時間休みがないから、たいへんだよ。でもそれを乗り越えられる幸せを息子から日々もらえることも分かったし、本当は育休延長したかったんだ。」
百太朗という名前も候補に入れていたけれど結局、息子の名前は光音に決めた。妻の百音さんと一緒に。アルトなんてややキラキラネームの気もしたけれど、百音さんの大切な楽器がアルトサックスだから、光音の読み方はアルトがベストだと思った。
「へぇー光音くんっていう名前なんですか。素敵な名前ですね。半年も育休取得して、さらに延長したかったなんて、菅波先生は子煩悩なんですね。」
「寝不足になるし育児は本当にたいへんなのに、どうしても光音のかわいさの方が勝るんだよ。息子から離れたくなくなって、医師やめることになってもいいから、このまま息子の側にいたいとまで考えてしまって、それを妻に打ち明けたら叱られてしまって…。あなたの帰りを待ってる患者さんがたくさんいるでしょ?光音の面倒見てくれるのは心強いし、すごく助かるけど、医師をやめてもいいなんて言っちゃダメ。もっと自分の仕事に責任を持ってなんて、説教されてしまってね。」
「しっかり者の奥さんなんですね。独身の僕には子どもがいないから、仕事をやめてまで子どもの側にいたいって気持ちはまだ分かりませんが、本当に菅波先生の復帰を患者さんもそして僕ら若手医師も待ち望んでいたんですよ。菅波先生にこの病院を辞められてしまったら、みんな困ります。」
「ありがとう。僕のことをそんな風に思ってくれて。でも買いかぶり過ぎだよ。僕は医者のお手本になれるような、そこまで立派な人間じゃないから…。まだ育休気分が抜けなくて、息子のことばかり考えてしまうし、もっと目の前の患者さんたちと真剣に向き合って、集中しなきゃって反省してたんだ。」
「息子さんのことを一番に考えてしまう人間らしさも菅波先生の良いところだと思います。医者だってひとりの人間ですからね。大切な人のことが忘れられないのは当然だと思います。」
「いや、でもね、医者だからこそ、時には優先順位というかトリアージしなきゃいけない場合もあるんだよ。一番大事な家族のことは家族を信じて任せて、目の前の患者さんを優先させなきゃならない時も多い。患者さんの治療に専念しなきゃいけないんだ。それが今の僕にはできていないから、医者失格だよ。」
「たしかに医者ってそういうものですよね。目の前で苦しみ続ける患者さんを放って、家族の元へ駆けつけることなんてできないと思うから。でも、菅波先生が医者失格なんてことはないです。すぐに仕事に専念できる状態に戻ると思いますよ。」
「ありがとう、小島先生。小島先生をがっかりさせないように、これから気を引き締めてがんばるよ。」
「実は…治療方針で悩んでいる患者さんがいて、中村先生に相談したら、菅波先生にも相談してみるといいって言われたんです。話…聞いてもらえませんか?」
かつて恋敵だった及川亮くんにそっくりの小島透先生は、患者さんの治療方針のことで相談に乗ってほしいと、初対面の僕に絶大な信頼を寄せてくれた。僕は自分のことが恥ずかしくなった。ただ顔や姿がかつてのライバルに似ているというだけで、小島先生を初めて見た時、怖気づいてしまったから。百音さんと僕が結婚するより先に、亮くんと未知さんは結婚した。もう互いに既婚者同士で、亮くんはとっくに百音さんに対する思いは断ち切って、未知さんだけを愛している。それなのに僕は、一方的に亮くんを見ると未だに心がざわついて、冷静でいられなくなる時が少なくない。そんなの僕の身勝手な思いで、亮くんや未知さんに対しては失礼なのに…。何年経っても、僕だけ独身時代の苦い思いも引きずっていて、それが消えてくれない。亮くんに対する嫉妬心が、百音さんと結婚し、光音という息子が生まれてもなお、古傷となり、時々胸の奥が傷んだ。それは百音さんにも誰にも言えない、秘密の気持ちだった。
 
 「僕で良ければ…いいですよ。じゃあ診療時間が終わってから。」
その日の診療後、呼吸器内科が専門の小島先生は、僕がいる呼吸器外科へやって来た。呼吸器内科と呼吸器外科は連携して治療することも少なくない。呼吸器内科で化学療法が難しい病気の場合、呼吸器外科で手術することになるパターンが多いから。
「宮川さんという四十代の患者さんなんですが、初期の肺がんと診断されています。ご本人は患部の切除に抵抗もあって、できれば化学療法で治療し、肺は温存したいと希望しているんです。でも初期だからこそ、切除は一部で済みますし、手術した方が患者さんのためになるんじゃないかと考えてしまって…。」
宮川さんという患者さんの名前を聞いて、若かりし頃、担当した宮田さんという患者さんのことを思い出した。
「なるほどね…たしかに初期の肺がんなら、一部切除で済むから手術をした方がいいと思うけれど、開胸した時、仮にもし予想以上に病気が進行していたら、切除する部位が大幅に増えて、肺にダメージを与えかねない。そういうケースもなくはないから、いくら患者さんより医学の知識がある医者でも、治療方針を医者の一存で患者さんに押しつけてはいけないと思う。僕の経験上、患者さんになるべく複数の治療方針を提示してあげて、選んでもらうのがいいと思うよ。責任逃れしたいわけじゃなくて、患者さんが望む人生を全うしてもらうためにも。」
「真剣に答えてくれてありがとうございます。でもちょっと意外です。外科医の先生方って手術できる病状なら、手術した方がいいって簡単に勧めることが多いので…。切らない治療もありだと言ってくれる外科医の先生は菅波先生くらいですよ。経験上って何かあったんですか?差し支えなければ教えてほしいです。」
少し悩んだものの、これからたくさんの患者さんと向き合うことになる小島先生の役に立てるかもしれないと思い、僕は宮田さんの話を彼に話すことにした。
「これは小島先生よりもう少し若かった頃の話なんだけど…新米医師の僕のことをすごく頼りにしてくれたひとりの患者さんがいたんだ。先生のおかげなんて言われると医者冥利に尽きて、ついやりがいを感じてしまって…。担当したその患者さんの治療方針に自信を持って、自分勝手に患者さんに押しつけてしまったんだ。医学知識のない患者さんからすれば、新米医師の僕が提案したとしても疑うことなく、正しいと信じてしまう。当時、自惚れていた僕はそれに気づいてなかったんだ。」
「菅波先生にもそんなことがあったんですか…。信じられないです。」
「僕は小島先生が思ってくれるほど、出来た医者じゃないからね。手術でミスするのはご法度だけど、細かなミスは今でもあるよ。僕のことを信じてくれて、僕に自身の病気を委ねてくれたその患者さんに対しては、細かなミスでは許されない過ちを犯してしまったんだ。結果的にその患者さんのその後の人生を奪うことになったから…。」
「何があったんですか?手術でミスしてしまったわけではないですよね?」
「まだ新米だった僕は、手術は助手として入ったんだけど、手術ミスではなくて、そもそも病気の見立てをミスしてしまっていたんだ。まだ初期と安易に考えて手術を急かしてしまった病気が思いの外、進行していて、肺の一部切除では済まなかったんだ。患者さんはホルン奏者だったから、肺は命そのものだったんだよ。肺の機能を失うということは、ホルン奏者としての人生は歩めなくなることを意味していたから…。僕の診断ミスで、彼の人生を台無しにしてしまったんだ。手術を焦らず、化学療法もしていれば肺の機能も救えて、彼の演奏家人生を守れたかもしれないのに…。」
「菅波先生にそんなことがあったなんて…。でもその患者さんは、ホルンは吹けなくなっても、命は取り留められたんですよね?」
「うん。命は取り留めたから、先生のおかげで助かりました、ありがとうございますって感謝されてしまったよ。感謝される資格なんてないのにさ。」
「いや、でも、命を救えなかったならまだしも、救えたなら医者としてはそこまで自責の念に駆られることはないんじゃないですか?患者さんだって、命は助かったから良かったって本当に思っただろうし…。」
「もちろん、医者としては何より患者さんの命を救うことを優先したくなるけど、患者さんにとって幸せな人生とは何かって考えると、命を救うことだけを一番に考えてはいけないのかなって思ってしまう時があるよ。命と引き換えにしても、守りたい、温存したい機能だってあるだろうし。幸せを考えた時、命より優先したくなるものって誰しもあると思うから…。」
「僕…やっぱり菅波先生に相談して良かったです。そんな風に悩んで考えられる医者ってそう多くはないから。菅波先生が若い頃の話を教えてくれたから、僕も話しますね。僕には大切な人がいたんです。年上の女性で…僕は彼女のことを愛してました。彼女の方は、二十歳以上年下の僕のことはどこかで距離を置いていたから、僕の片想いみたいなものでしたが…。彼女が五十歳過ぎた頃、子宮体がんと診断されて、子宮全摘出を担当医から勧められたんです。彼女は同意して、摘出手術を受けました。けれど子どものいなかった彼女は、すでに閉経を迎えた年齢でも、子宮を失ってしまうことに本当は少し、抵抗があったんです。女性にとって子宮って特別な臓器じゃないですか。たとえ産めないとしても、子宮があるだけで女性として自信が持てたり…。彼女は強い人だったから、弱音を吐くようなことは滅多になかったんですが、子宮を摘出した後、号泣していたんです。あんな彼女、初めて見ました…。本当は残したかった子宮を摘出したのに、彼女は数年後、亡くなってしまいました…。」
まだ若いのに小島先生は、僕が経験したことよりさらに過酷な経験をしていたと知り、ショックを受けた。亮くんも…震災でお母さんを亡くし、その後、アルコールに溺れるようになったお父さんの面倒を見ていたと聞いたことがある。見た目だけじゃなく、僕なんかより壮絶な人生を送っている彼らはやっぱりどこか似ていると思った。影を秘めているのに、それを隠して他者を労われて、相手を幸せにできる微笑を浮かべられるところまで、二人はそっくりだった。
「小島先生の方が僕よりつらい思いをしてたんだね。大切な人を病気で失っていたなんて…。でも子宮を失くす女性の気持ちを分かろうと、ひたむきな小島先生のやさしさはきっとその方に伝わっていたと思います。僕らは男だから、どうしたって女性の身体の仕組みや気持ちを完全に間違いなく理解することはできないけど、でも女性にしか分からない痛みや思いを分かろうと寄り添うことはできると思うから、それができた小島先生は男の鏡ですよ。」
「ありがとうございます。そうだといいんですが…あの時、もし僕がもっと早く一人前の医者になれていたら、愛する彼女を僕が救えたかもしれないのにって考えてしまって、未だに後悔してしまうんです。何かもっとできることがあったんじゃないかって。せめて彼女の望み通り、子宮を温存させられる治療も提示してあげれば良かったって…。命を救うために子宮を手放したはずなのに、結局命は助からなかったから、せめて彼女にとって大切な子宮を残してあげたかったって、今でも考えてしまいます。」
「医者はすべての患者の命を救うことはできないし、どんなに医療が進歩しても治してあげられない病も多い。結局、最終的には患者の心身の痛みや喪失感に寄り添うことしかできないと思うんだ。だから小島先生に限らず、自分は無力だって後悔する医師は多いと思う。僕だってそうだし…。僕はあの時、ホルン奏者の患者さんの命は救えたけれど、患者さんにとって命と同じくらい大切なホルンを演奏するという力を奪ってしまったから、悔いが消えることはないよ。でもね、そういう悔いも人間には大切だと今なら思えるんだ。過酷な経験をした小島先生だからこそ、患者さんと真摯に向き合い、心まで手当てできる医師になれると思う。小島先生にとって一番大切だった彼女にしてあげられなかったこと…例えば手術以外の治療方針も患者さんに提示してあげるとか、医師や患者さんが少しでも後悔を減らせる治療を、小島先生ならできると思うんだ。本当の痛みを知っている小島先生にしかできない医療があると思う。」
「菅波先生からそんなことを言ってもらえるなんて…感無量です。無力だけど僕にしかできない治療や医療があるなら、これからもっと精進したいです。彼女にしてあげられなかったことを、目の前の患者さんに後悔しないようにしてあげればいいんですよね。手術を勧める一択だけじゃなくて、なるべく多くの選択肢を提示できる医師になりたいです。菅波先生みたいな医師になることが、僕の目標になりました。菅波先生のおかげで、救われました。本当にありがとうございます。」
「まいったな…。先生のおかげでって言われると弱いんだよね。僕も小島先生を見習ってもっとがんばらないとな。」
初対面ながら、痛みを分かち合えた気がする小島先生からトラウマでもあった言葉を言われて、不思議なことに赦された気持ちになった。僕らはあまり公に言えない苦い体験を語り合えたのだから、医学的に言えばお互いにナラティブアプローチできたことになるだろうか。医師が患者から経験や出来事を聞き、それを受け止めることで信頼関係を築き、双方が満足できる医療を行うことをナラティブという。
 
《胸の奥 君がいる場所 ここでしか会えない瞳 ずっと変わらないままだから ほっとしたり たまに目を逸らしたり 思い出すと寂しいけど 思い出せないと寂しい事 忘れない事しか出来ない 夜を越えて 続く僕の旅》 BUMP OF CHICKEN 『なないろ』

《叱られてばかりだったから 俯いたままで固まった 遠くで響くトランペット 固まったままで聴いていた 途方に暮れて立ち止まって 泣いたら出来た水たまり 映した無数の煌めき 懐かしい声で囁くよ》 BUMP OF CHICKEN 『GO』

 「ところで菅波先生、ホルンで思い出したんですが、実は僕、趣味でトランペット、習ってるんです。まだ下手ですが、今度小さな演奏会に出ることになって…良ければ聴きに来てもらえませんか?会場は東京タワーも見えるS水族館の屋外プールなんです。」
トランペット…。たしか亮くんも中学生時代、百音さんたちと一緒に吹奏楽部に所属していてトランペット、吹いてたらしいよな。本当に何から何まで小島先生と亮くんはそっくりだと思った。
「へぇートランペット、習ってるんだ。水族館で演奏会なんてすごいね。もちろん聴きに行かせてもらうよ。S水族館って言ったら、たしか…サメの特別展も開催しているところじゃないか。僕はサメが大好きなんだ。妻の百音と息子の光音も一緒に行っていいかな?」
小島先生には申し訳ないけれど、S水族館と言えばサメが魅力の水族館で、推しがサメの僕は、演奏会より俄然、サメ熱が湧いて来た。光音が生まれて以来、しばらくサメには会えていなかったし…。
「菅波先生はサメがお好きなんですね。僕はどっちかって言うとイルカが好きです。是非、ご家族でいらしてください。でも…生後半年の赤ちゃんは大きな音、びっくりしちゃうかも…。」
「あーそうだよね。ごめん、ごめん。光音が泣き出したら迷惑掛けるし、その時はプールから離れて、遠くからこっそり聴いてるから。どうしても、光音にもちょっとは聴かせてあげたいんだ。妻も昔、吹奏楽してたから…。サメも見せてあげたいし…。」
「奥さんも楽器、吹いてたんですね。あっ、だから光音くんって名前なんですか?」
「うん、そんなところかな。アルトサックス担当だったから…。」
「そうなんですか。じゃあ菅波先生も一緒に何か楽器、どうですか?」
「僕は音痴だし、音楽のセンスもないから…。」
「楽器だから音痴は関係ないですよ。僕だって音楽のセンスなんてないけど、でも空の上にいる彼女に届くといいなって思いながら、練習してるんです。楽器の大きな音なら、どこまでも届く気がするから…。」
「そっか…トランペットも大切な人のために吹いているんだね。それなら、僕も何か始めてみようかな。まだ気が早いけど、光音が大きくなったら何か楽器やりたいって言い出すかもしれないし、家族三人で演奏会できたら楽しいだろうな…。」
「それ、いいですね!菅波先生の家族の演奏会に、たまにトランペットで僕も参加させてください。それまで腕磨いておきますから。」
「いつか…楽器を持って、僕の家族と一緒に、気仙沼にも行こうよ。小島先生に会わせたい人がいるんだ。きっと驚くと思うよ。」
「僕に会わせたい人…ですか?気仙沼って宮城にある海の町ですよね?行ったことないから、是非行ってみたいです。」
「そうそう、宮城の気仙沼。気仙沼は妻の故郷なんだ。いつでもおかえりって出迎えてくれる、すごく安心できるところだよ。そう言えば義理のお父さんもトランペットがすごく上手なんだ。小島先生と、会わせたい彼や光音と…みんなでセッションできたら楽しいだろうな…。」
敵わない恋敵だった亮くんにそっくりな小島先生に出会った瞬間、思わず動揺し、心のざわめきを覚えてしまったけれど、たくさん話をしているうちに自分の勝手なわだかまりは解けていくのが分かった。そして亮くんと同じく、どこかに強い信念を隠し持っているような小島先生にも敵いそうにないと気づいた。でもこれからもっと小島先生のことを知りたいし、完全には分かり合えなくても、誰にも言えない痛みを分かち合い、お互いを理解し合える関係になれたらいいなと思う。

 今夜は満月。月の周りには、ぼんやり七色の暈もかかっていた。病院から出た僕らをまんまるの月がやさしく照らした。昼間まで太陽の光が輝いていた少し小さくなった水たまりには、並んで歩く僕らの影が映し出されていた。
 
《君だけの思い出の中の 君の側にはどうやったって行けないのに 涙はそこからやってくる せめて今 側にいる そうしたいと思うのは そうしてもらったから 何も喋らないのにさ まんまるの月が 君の目に映る…流れ星ひとつも 気付けなくても 君を見つけて 見つけてもらった僕は 僕でよかった》 BUMP OF CHICKEN 『Small world』

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