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旅と建築探訪記

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#美術館

【建築】翼を広げるミルウォーキー美術館(サンティアゴ・カラトラバ)

【建築】翼を広げるミルウォーキー美術館(サンティアゴ・カラトラバ)

最初に書いておくが、このタイトルは比喩ではない。
ホントに翼を広げるのだ。

2024年5月、シカゴから北へ150kmにあるミルウォーキーまでやってきた。
五大湖の一つ、ミシガン湖の西岸に広がるこの都市は、人口約57万人のウィスコンシン州最大の街である。

この街でどうしても見たい建築家の建物があった。
その建築家とはスペイン出身のサンティアゴ・カラトラバ。
建築家であり、構造家であり、芸術家でも

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【建築】重なり合うガラスが独自の空間をつくるトレド美術館ガラス・パビリオン(SANAA)

【建築】重なり合うガラスが独自の空間をつくるトレド美術館ガラス・パビリオン(SANAA)

妹島和世さんと西沢立衛さんによる建築家ユニット SANAA。このnoteでも何度か記事を書いているように、私のお気に入りの建築家である。今回、久しぶりに海外のSANAA建築を訪れるチャンスがやってきた。しかもアメリカ合衆国のトレドという微妙に不便な場所にある。これは行くしかない!

オハイオ州第4の街トレドは1970年代までは全米屈指の工業都市として栄えていた。またThe Glass Cityとい

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【建築】インドにも国立西洋美術館があった?(ル・コルビュジエ)

【建築】インドにも国立西洋美術館があった?(ル・コルビュジエ)

ル・コルビュジエ設計の建築として名高い日本が誇る国立西洋美術館。この国立西洋美術館とほぼ同じ建物がインドにもあるらしい。コルビュジエはインドでも仕事をしているので不思議ではない。
その美術館とはチャンディーガル政府博物館・美術館(Government Museum and Art Gallery, Chandigarh)。

今回はその"ほぼ同じ"という2つの美術館を比較しながら見てみよう。

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【建築】"作品を展示すること"に追求したブレゲンツ美術館(ピーター・ズントー)

【建築】"作品を展示すること"に追求したブレゲンツ美術館(ピーター・ズントー)

"作品を展示すること"
そんなの美術館なら当たり前じゃんって思うよね、普通は。

オーストリア・フォアアールベルク州の街ブレゲンツ。ボーデン湖畔にある街だが、ウィーンやザルツブルクからは遠く、観光としては少々マイナーだ。

もし人々がこの街を訪れるとしたら、主な目的は二つのいずれかだろう。
ブレゲンツ音楽祭か? あるいはブレゲンツ美術館か? もちろん私は後者だ。

1997年オープンのブレゲンツ美

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【建築】コレは雲か、魚か、帆船か? フォンダシオン ルイ・ヴィトン(フランク・ゲーリー)

【建築】コレは雲か、魚か、帆船か? フォンダシオン ルイ・ヴィトン(フランク・ゲーリー)

パリ郊外のブローニュの森といえば誰でも一度は耳にしたことがあるだろう有名な公園だ。市民の憩いの場として様々なレクリエーションを楽しめる。テニスの全仏オープンで有名なスタッド・ローラン・ギャロスや凱旋門賞の開催地であるパリロンシャン競馬場、国立民族民芸博物館やバガテル庭園といったスポーツ・文化施設も充実している。

そのブローニュの森に2014年、新たな施設がオープンした。

快晴の青空の中、最寄り

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【建築】爽やかな高原の森に抱かれた八ヶ岳美術館(村野藤吾)

【建築】爽やかな高原の森に抱かれた八ヶ岳美術館(村野藤吾)

日本列島のほぼ中央に位置する八ヶ岳。標高2,899mの最高峰・赤岳をはじめ多くの山々が南北に連なるが、その山麓には比較的なだらかな高原が広がり、自然豊かな森林の中に畑や別荘地が点在している。

快晴の初夏の高原はハイキングしても気持ちいいし、

ドライブしていても「快適」という言葉以外思い浮かばない。

そんな森の中に、ある美術館が佇んでいる。

八ヶ岳美術館。
地元の諏訪郡原村出身の彫刻家・清水

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【建築】これは美術館なのか? デポ・ボイマンス・ヴァン・ベーニンゲン(MVRDV)

【建築】これは美術館なのか? デポ・ボイマンス・ヴァン・ベーニンゲン(MVRDV)



オランダのロッテルダム。
第二次世界大戦で焼け野原となったこの街は「規則正しい都市計画」とは無縁で、現代らしくも奇抜でヘンテコなデザインの建物が並んでいる。

それらを設計する筆頭はロッテルダムを拠点とする建築事務所 MVRDV。

そのMVRDVによる注目の美術館、いや美術館ではない"ある施設"がミュージアムパーク(その名の通り、多くの美術館が集まる公園)に誕生した。デポ・ボイマンス・ヴァン

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【建築】圧倒的かつエレガントなイェール大学英国美術研究センター(ルイス・カーン)

【建築】圧倒的かつエレガントなイェール大学英国美術研究センター(ルイス・カーン)

旅行というものは時間が限られてしまう。なので行きたい場所があっても、どうしても都合が付かないことがある。海外旅行では特にそうだ。
2014年、イェール大学を訪れた。もちろん勉学のためではなく建築を見るためだ。趣のあるキャンパスやエーロ・サーリネン、Skidmore, Owings & Merrillなどの現代建築を堪能したものの、目的の一つである英国美術研究センターは残念ながら休館日だった。

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【建築】建築復活!! 京都市京セラ美術館(青木淳・西澤徹夫)

【建築】建築復活!! 京都市京セラ美術館(青木淳・西澤徹夫)

爽やかな秋晴れの中、突然思い立ってフラッと京都まで遊びに来た。市内を流れる白川の水は澄み、川に張り出してたわわに実った柿が美味しそうだった。

そんな街をしばらく歩いていると、見えて来たのは平安神宮の大鳥居。しかし今回の目的地は平安神宮ではなく、その傍にある京都市京セラ美術館だ。

京都市美術館は、京都の景観を損なわないよう帝冠様式で建てられ、1933年に開館した。以前から平安神宮周辺には何度も来

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アートか? ケンチクか?

アートか? ケンチクか?

タイトルに深い意味はない。アートはアート、ケンチクはケンチクである。そもそもどちらにも造詣が深くない私にそれを語ることはできない。
ということで、今回はアートが組み込まれた建築をピックアップしてみた。

名古屋市美術館(黒川紀章)ジョナサン・ボロフスキーによる動く彫刻ハンマリングマン。名古屋市美術館はあまり好きな建築ではないのだが、サンクンガーデンを背景にして見るハンマリングマンは私のお気に入り。

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【建築】絵に描いたような森の中のオードロップゴー美術館(ザハ・ハディッド)

【建築】絵に描いたような森の中のオードロップゴー美術館(ザハ・ハディッド)

今回の建築探訪はザハ・ハディッド設計の美術館だが、規模も小さいし、あまり有名でもない。しかも、予め調べて分かっていたことだが、増築工事のため長期休館中であった。それでも訪れた理由は、世界で最も美しいと評判のルイジアナ近代美術館への道中にあるからだ。つまり"ついで"だ。なのでサクッと進めよう。

コペンハーゲンから電車に乗ること20分。ルイジアナ近代美術館はもう少し先だが、途中のKlampenbor

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【建築】何度訪れても美しい豊田市美術館(谷口吉生)

【建築】何度訪れても美しい豊田市美術館(谷口吉生)

いつ訪れても何度訪れても、美しく、素晴らしく、圧倒される風景や建築がある。今回はそうした建築の一つ、豊田市美術館である。

地元が愛知県の私は、過去に何度もこの美術館を訪れている。しかしその訪問の度に、まるで初めて訪れたかのような新鮮さで「美しい!」と感じて、毎回写真に収めようとする自分がいる。

豊田市美術館の設計は谷口吉生氏。個人的意見であるが、現代建築の美術館をつくらせたら日本一、いや世界で

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【建築】村上隆 in アストルップ・ファーンリ現代美術館(レンゾ・ピアノ)

【建築】村上隆 in アストルップ・ファーンリ現代美術館(レンゾ・ピアノ)

2017年5月、ノルウェーでピーター・ズントー建築巡礼とフィヨルド観光を終えた私は、首都オスロまで戻ってきた。日本への帰国まではまだ数日あるので、このオスロでも建築や美術館を巡ることにしたのだ。

オスロの主要産業は海事・海運業である。以前は造船所や倉庫などの大きな施設もあったようだが、近年、市街に近い地区では再開発が行われ、現代的な商業施設やマンションが立ち並んでいる。
アーケル・ブリッゲはその

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【建築】世界一美しいルイジアナ近代美術館

【建築】世界一美しいルイジアナ近代美術館

「世界一美しい◯◯◯」
最近よくある宣伝文句だ。ルイジアナ近代美術館も「世界一美しい美術館」と呼ばれており、ググるとこの美術館がヒットする。また海外の旅行ガイドでも「1,000 Places to See Before You Die」に選ばれている。本当だろうか? これは是非確かめなくては!

美術館はコペンハーゲンから電車で30分のHumlebækという街にある。5月のHumlebækはまだ寒

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