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呪いの臭み #毎週ショートショートnote

絶対に出ていく。
いつもそう思って過ごしていた。

嫌いだと言っているのに毎日出てくる母のぬか漬け
この時代に平気で家の中で煙草を吸う父
出会いもない田舎で色気づいている姉の甘ったるい香水

臭い。臭い。全部嫌いだ。
私はこんな島から出て本土で暮らす。


島を出て1ヶ月。
母に無理やり持たされたぬか床をかき混ぜる。
別に何も漬けていないけど、やらないと痛むので仕方なくだ。

その3ヶ月後。
見慣れた銘柄の煙草を買ってみた。
吸わないと火がつかないということを初めて知った。
でもあんな煙、とてもじゃないけど吸えない。

さらに半年後。
デパートの化粧品売場を歩いた。
コスメに用はなかったけど、あの甘ったるくて男ウケを狙ったような匂いの正体を知りたくなった。


これは呪いだ。
ほら、臭いものは何度も嗅ぎたくなるって言うし。
私は呪いの臭みに取り憑かれてしまっただけ。

仕方がないから、今年の冬は島行きのチケットを買う。
帰るんじゃない。呪いを確かめにちょっと戻るだけ。


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