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Essay

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音楽のことからニューヨークでの生活まで、分類していないごった煮のエッセイです。
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#キリスト教

無となれるか

無となれるか

演奏する時の気持ちの持ち方、意識の向け方というものを最近はずっと考えている。サックス奏者のImmanuel Wilkinsは自身のアルバムへのコメントに

と言っていた。「無」であるという状態、ここに自分を持っていきたいと思いながら、それはとてつもなく長い道のりであるように思われてならない。

3日前にDizzy'sに行った。夜11時15分からLate Nightのショーをやっていて、比較的若いミ

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三浦綾子「塩狩峠」感想

三浦綾子「塩狩峠」感想

本との出会いはふしぎなもので、その時々に必要な本、読むべき本というものが与えられているような気がする。今回もとても良いタイミングで、読むべき本が与えられた。

読んだ本は三浦綾子の「塩狩峠」である。名前とあらすじこそ知ってはいたものの、読んだことはなかった。今回夫のご家族——いわば私の大切な家族でもある——が日本からわざわざ買ってきてくれた。元々その本をお願いしていたわけではないけれど、もしまだ読

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何のための音楽か 2023.06.24

何のための音楽か 2023.06.24

今日もレストランギグだった。帰りの電車でこのnoteを書いている。

今、日本からきている友人らが私のアパートに泊まっている。昨日私は予定があったので行けなかったのだが、彼らはImmanuel Wilkinsを観に行ったらしい。そういえばImmanuelの曲でGrace and Mercyが好きだったことを思い出し、今朝聴いていた。彼はもしかしたら(もしかしなくとも、そんなタイトルをつける時点で勘

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遠藤周作「深い河」感想

遠藤周作「深い河」感想

なんでも簡単に答えが出る

ような気にさせられてしまう世の中に生きている。きっと今私たちが苦しんで生み出している音楽も、もう少し時間が経てばテキストから簡単に生成されてしまうのだろう。そんな未来を思うと、今苦しんで、たくさん勉強して、寝ずに作業している私たちって滑稽なのだろうかという考えが頭をよぎる。これだけ時間をかけたり、苦しんだとしても、納得のいくものが出来上がる保証があるわけでもない。きっと

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