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DEIとイノベーションの関連性: フィンランドと日本から得た洞察

ダイバーシティ(diversity多様性)、エクイティ(equity公平性)、インクルージョン(inclusion包摂性)を意味するDEIは、まさに現代のビジネス感覚に欠かせないものです。DEIがどのようにイノベーションを起こし、意思決定を改善し、成長を加速させるのかを見てみましょう。

  • ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン(DEI)は、ビジネスのイノベーションと成長の推進に今や不可欠であり、フィンランドと日本は、異なる文化的背景の中でDEIがどのように受け止められているかを示している。

  • フィンランドは、インクルーシブなゲーム開発や先進的な男女平等法の制定などにみられるように、ビジネスや教育にDEIが統合されている実例であり、長年にわたりその価値観を重視している。

  • ヘルシンキ・パートナーズは、フィンランド企業の国際的な人材誘致を進めており、グローバルなビジネスリーダーやイノベーターをひきつける「90 days Finn プログラム」でもヘルシンキ市のDEIを推進している。


気候変動や人権問題など、私たちの社会のサステナビリティ(持続可能性)への懸念は、ビジネスの景色を一変させ、企業の存続に重大なリスクをもたらしています。KPMGグローバルCEO調査2022年によると、企業の価値に最も影響を与えるサステナビリティ関連の課題のトップ3は、人的資本、気候変動、そして多様性です。 

DEI(多様性、公平性、包摂性)が個人的な問題ではなく、社会的な課題としてとらえられるようになった今、DEIへの率先した取り組みはもはや「した方がいい」というレベルではなく、効果的なリーダーシップを発揮するための要(かなめ)だという認識が企業に広がりつつあります。経済のグローバル化や少子高齢化といった変化に対応していくためには、包括性や公平性に大きな価値を置く経営手法が欠かせません。 

本記事では、私たちが2023年に日本で開催したDEIイベントで得られたフィンランドと日本の相互理解をもとに、フィンランドと日本、それぞれのビジネス界でのダイバーシティの受け入れ方を掘り下げていきます。  
(日本についての記述は主に経済産業省など日本側の、フィンランドに関する記述は主にフィンランド大使館商務部などフィンランド側のプレゼンテーションをもとにしています。)


DEIを進めることがイノベーションに必須である理由 
DEIはイノベーションに不可欠。
多様で包摂的な組織は、アイデアが商品化される可能性が76%ときわめて高く、イノベーションによる収益が19%増加する
 DEIは人材を引き寄せ、定着させる。Z世代の求職者の83%は「働く企業を選ぶとき、その多様性と包括性へのコミットメントを重視する」と答えている。
DEIがチームのパフォーマンスと業績を向上させる。多様性のあるチームでできた企業は、その収益性が同業他社を上回る可能性が36%高くなる。
DEIは意思決定を改善しリスクを減らす。多様性のあるチームは、リスク認知が30%向上する


フィンランドに根付くDEI  

フィンランドでは、子どもが小学校に入学したときからイノベーションについて教え始め、包摂性と個性を伸ばしていきます。世界的に注目されるフィンランドの教育システムでは、共同創造、批判的思考、そして社会的感情的スキル(自分や他者の感情を認知する能力)に強く焦点が当てられています。 

フィンランドはこの数十年間にわたり、男女平等推進の最前線の一つであり、今では世界で3番目に男女平等を実現している国です。北の小国だったフィンランドの近代史を見てみれば、戦時中は女性を含めてすべての成人が労働力として貢献することが求められていました。女性たちは工業と通信分野で重要な役割を担い、家庭と社会の両方で女性の立場はすっかり変わりました。 


「 ヘルシンキでは、肌の色や宗教、性別に関係なく、誰もが平等だと感じています。」
Basma Ragab氏 「ヘルシンキから私の自由の物語」 


現在、フィンランドには以下のようなDEIを実現するための関連法や計画があります。

包括的差別禁止法 
欧州アクセシビリティ法 
ジェンダー平等EU指令 
男女間賃金格差透明化EU指令 
ジェンダー平等計画 

フィンランドでは多くの人がDEIの重要性を認識しています。実際、フィンランドの大手企業の従業員の95%が「DEIは将来の競争力にとって不可欠だ」と考えています。そして今後も現在の会社にとどまる予定だという従業員の平均で90%が、その企業文化も含めて判断しています。 

フィンランド企業のDEIの到達度はそれぞれ異なりますが、いくつかの注目すべきDEIの取り組みがあります。例えば、北欧を拠点とするグローバルDEIエージェンシーであるdeideiは、DEI追求の旅の途上にある企業を支援するため、最善の方法を集めたDEIマニュアルを発表しました。また、グローバルなDEIコンサルタント会社Inklusiivも、組織が実際にDEI変革を進めるための支援をしています。

SupercellやRovioのような主要なゲーム会社は、DEI分野での彼らの業務をさらに透明化しています。Supercellの戦略では、まず包摂性を受け入れなければ(包摂的な文化を持つ組織は、6倍も革新的で変化が速い)、会社はイノベーションに必要な多様性を達成することはできないと強調しています。また、Rovioの包摂的なゲーム開発マニュアルには、業界を俯瞰したベストプラクティスが収納されており、業界全体に影響を与えています。 


「私たちは、多様性がチームをより良くすることを目の当たりにしました。未来の職場というものは、基本的にインターナショナルなものになるでしょう」
Supercell 代表取締役、Ilkka Paananen 氏  


フィンランドのいくつかの組織も、国際的な人材募集の支援をしています。例えば私たちヘルシンキ・パートナーズは、ヘルシンキ市を拠点とする企業と連携して国際的人材を誘致し、多様なグローバル人材と交流するために活動しています。
また、Väestöliitto(家族連盟)Business Finlandはそれぞれ、多様性と包摂性のスキルを向上させ、国際的人材を見つけ、多国籍チームの効果を発展させたいという企業や事業者と連携しています。

日本におけるDEIの取り組み 

日本とフィンランドの文化には、自然に畏敬の念があり、ともに持続可能性とESGという目標を持ち、技術と革新を重視するなど、多くの共通点があります。例えば、NordicNinjaのような日本の投資家は、ヨーロッパの拠点として、フィンランドの首都であるヘルシンキ市を選び海外事務所を置いています。ヘルシンキ市はまた、株式会社Junkanがテキスタイルの持続可能性における画期的なイニシアチブをとるための理想的な出発点でもありました。 

 アジア地域では、国や人々の多様性があるにも関わらずDEIの取り組みはあまり認識されていません。例えば、BCGの調査によると、東南アジアでDEIに取り組んでいるという企業は58%に過ぎず、世界平均の96%よりかなり低くなっています。 日本では特に、ジェンダー不平等が大きな問題となっています。2023年の世界経済フォーラム(WEF)の「Global Gender Gap Report」(世界男女格差報告書)では日本は125位にランクされ、G7諸国の中でも東アジア・太平洋地域でも最下位でした。 

 しかしながら、日本企業におけるDEIの重要性や認知度は高まってきており、DEIに取り組む企業は増えてきました。経済産業省は、ダイバーシティ・マネジメントの推進、女性のエンパワーメントの奨励、ニューロダイバーシティの推進、外国人材の登用に関する新たな政策を打ち出しています。 
 2022年、日本政府は正社員301人以上の企業に男女間の賃金格差の開示を義務付ける法律を改正しました。東京証券取引所の最上位「プライム市場」に上場する企業の役員について、2025年までに少なくとも1名の女性取締役を擁し、2030年までに女性取締役の割合30%という目標案もあります。


「これまでは、経済成長を大前提に、利益や規模の拡大をめざし、そのために生産性を向上させたり、競争に打ち勝つことが仕事の主な目的でした。しかし、これからは、持続可能な社会、地球環境を実現するためにさまざまな課題を解決し、すべてのステークホルダーの「しあわせ」を実現することがビジネスの目的になってきます。」

株式会社丸井グループ 代表取締役社長 代表執行役員 CEO 青井浩


近年は、企業の価値を判断する際に、経営に人権や多様性といった社会課題への配慮があるかを重視する「ESG投資」が注目されています。多くのビジネスリーダーが、トップダウンとボトムアップの両方のアプローチで、組織内にDEIの文化を根付かせることの重要性を認識しています。丸井グループ出光興産のような企業のリーダーたちは、DEIなくして市場での競争力は得られず、ビジネス変革に不可欠であると強調しています。

ヘルシンキ・パートナーズのDEI 

私たちは、フィンランド企業の国際人材誘致を支援します。その企業と、DEIの様々な側面に取り組む人々や組織とをつなぐことで、ヘルシンキ市の多様性と公平性、そして包摂性を高めていきます。2023年には、特に幹部チームを中心に全スタッフを対象に、DEI戦略の策定からSNSでの認知向上まで、DEIに対する意識を高めるワークショップを実施しました。このような基盤の上に、今後も一層、DEIの取り組みを進めていけることを楽しみにしています。

日本の企業がDEIに関する問題を扱う際に、私たちが協力すれば、ヘルシンキのビジネス習慣や社会的構造の理解が容易になるでしょう。またDEIを重視する組織と連携すれば、グローバライゼーションの中でますます重要化している国際的なコンプライアンスや倫理基準に、確実に合致させることができます。  

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●転居サポート: ヘルシンキに滞在するあなたとご家族のために、手間のかからない転居をお約束します。また、他の参加者とともに、オンラインでの準備プログラムもご用意しています。
●ヘルシンキでの豊富な経験: コワーキング・スペース、毎週のネットワーキング・イベントや企業訪問のほか、さまざまなアクティビティ(サウナ、コンサート、美術館、森の中でのキノコ狩りやベリー摘みなど)で、フィンランドの文化やライフスタイルを体験することができます。現地の担当者や、他の参加者とのつながりが、あなたの生活をサポートします。

90 Day Finnプログラムの詳細 

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ヘルシンキ・パートナーズについて
ヘルシンキ・パートナーズについてもっとお知りになりたい場合は是非ヘルシンキ・パートナーズのウェブサイトをご覧ください。リンクはこちらです

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