葉月Lエンデ

本気で小説書いてます。連載小説「出口はどこですか?」は最終話まで毎日投稿します。 どう…

葉月Lエンデ

本気で小説書いてます。連載小説「出口はどこですか?」は最終話まで毎日投稿します。 どうしようもなくなって詩を吐き出すこともありますが、書きたいものは小説。小説を読んでくださる方々に心から感謝しています。ありがとう

マガジン

  • 【詩など】苦しみの産物

    人を喰う詩らしいので、閲覧注意です

  • 極秘任務の裏側

    軽快でドタバタな一ノ瀬たちの活躍をぜひ!【全18話】

記事一覧

【小説】出口はどこですか? 第5話

Prev……前回のお話  どういうこと?  動悸が激しいのに、呼吸は止まっているようだった。頭部には酸素も血液も足りないようで、沙樹は自分がパニック状態なのか放心状…

葉月Lエンデ
7時間前
22

【小説】出口はどこですか? 第4話

Prev…前回のお話 「いらっしゃ……おお、珍しいね」  星形の月の重いドアをくぐると、空いたグラスをトレイに乗せてフロアを歩いていたユウヤが振り返り、沙樹の後ろに…

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【小説】出口はどこですか? 第3話

Prev……前回のお話  待ち合わせ場所は、前に行ったことのあるカジュアルなイタリアン「こんにちボーノ」だった。星形の月と同じく、沙樹の最寄り駅にあるその店は、駅か…

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【小説】出口はどこですか? 第2話

Prev……前回のお話  土曜の朝。せっかくの休日だというのに、沙樹は電話で起こされた。 「え、今何時?」 「9時過ぎ。寝てた?」 「おー……」  電話の主は滉大。中学…

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【小説】出口はどこですか? 第1話

 目覚ましが鳴る。午後5時。仮眠室のベッドは硬いし狭いし、正直、寝心地が良いとは言えない。  また、あの夢をみた。遠い、遠い、悲しい記憶。夢だけれど、夢じゃない…

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【詩】守護天使

くだらない 吐き棄てなければ崩れてしまう 全ての光を錯覚にして どろどろに塗り潰す 小さな虫けらの抵抗は 暗い引力に届くだろうか まだここに 立っていたい 自分の足で …

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【死ンダ君モ愛オシイ】 あとがき的なやつ

この記事は「死ンダ君モ愛オシイ」を読み終えた方のみ、お読みください。なんとなく綴ってみた、「あとがき的なやつ」です。 最初から最後まで、一貫して問題作として仕上…

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【小説】死ンダ君モ愛オシイ 第28話【最終話】

Prev……前回のお話  んなわけねぇだろ!!  一矢は大声で叫びながら、K町のゴミ溜め通りを抜けた。周囲のゾンビ達がチラッと振り向くが、彼らにとっては日常のことな…

葉月Lエンデ
2週間前
48

【小説】死ンダ君モ愛オシイ 第27話

Prev……前回のお話  まだ午前中。今からホワイトメールにカチ込むか? 押し掛けたとして、どうすればいいだろう。茅野栞を尋問、脅迫。なんだか気が進まない。でもこれ…

葉月Lエンデ
3週間前
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【小説】死ンダ君モ愛オシイ 第26話

Prev……前回のお話  それは間違いなく、金魚だった。  ある日、金欠の男は、トレカを売るために女とカードショップに出向いた。「高額買取」で検索して見つけた店で、…

葉月Lエンデ
3週間前
50

【小説】死ンダ君モ愛オシイ 第25話

Prev……前回のお話  亜季の父親、今野を何かしらの方法でアズサが救ったのは、恐らく間違いない。亜季の写真を眺めていたと言っていたから、アズサは亜季のことを覚えて…

葉月Lエンデ
4週間前
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【小説】死ンダ君モ愛オシイ 第24話

Prev……前回のお話  金魚は何も言わない。この金魚を、アズサは「栞さん」と呼んでいた。そして今日、俺は「栞さん」という女性に出会った。無神経で品がない、横暴な女…

葉月Lエンデ
1か月前
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連載中の死ンダ君モ愛オシイ(略して死ン君)は全28話となります。
今週から最終話まで日曜と水曜、週2の投稿に切り替えますので、お見逃しのないようご注意ください。

引き続き最後までおつき合い頂けると幸いです🌟🌟

いつもありがとう!!

葉月Lエンデ
1か月前
39

【小説】死ンダ君モ愛オシイ 第23話

Prev……前回のお話  雑に散らかった、埃っぽく狭い応接室に似つかわしくないような、いや、逆に似つかわしいような、その派手な女性は、名刺を片手で差し出してきた。社…

葉月Lエンデ
1か月前
50

【小説】死ンダ君モ愛オシイ 第22話

Prev……前回のお話 「じゃあ、俺帰るけど……ほんとに大丈夫?」 「大丈夫だから」 「うーん……」  玄関まで来て、静流はまだ躊躇っていた。 「ねえ、ほんとに食べ物あ…

葉月Lエンデ
1か月前
50

【小説】死ンダ君モ愛オシイ 第21話

Prev……前回のお話 「俺が昔、知宏の家にお世話になってたことは知ってるんだよね?」 「ん……聞いた」 「柚希が来たのは、俺が出てった後だった。思えば、こないだ一矢…

葉月Lエンデ
1か月前
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【小説】出口はどこですか? 第5話

【小説】出口はどこですか? 第5話

Prev……前回のお話

 どういうこと?
 動悸が激しいのに、呼吸は止まっているようだった。頭部には酸素も血液も足りないようで、沙樹は自分がパニック状態なのか放心状態なのかの区別すらできなかった。
 絶対に他人に見られたくないものを、絶対に見られたくない人間に見られた。そこまでの現実で十分ダウンを取られているのに、追い打ちをかける衝撃の謎パンチ。

 「出口の場所、君も知りたいかい?」

 店内

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【小説】出口はどこですか? 第4話

【小説】出口はどこですか? 第4話

Prev…前回のお話

「いらっしゃ……おお、珍しいね」
 星形の月の重いドアをくぐると、空いたグラスをトレイに乗せてフロアを歩いていたユウヤが振り返り、沙樹の後ろに真尋の姿を見つけて、嬉しそうな声をあげた。
 前回ふたりでこの店に顔を出したのは、いつだったろうか。常連の人たちには関係も知られていて、つき合い始めの頃は、よく揶揄われたものだ。それでも真尋はまったく動じることはなかったし、沙樹もそう

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【小説】出口はどこですか? 第3話

【小説】出口はどこですか? 第3話

Prev……前回のお話

 待ち合わせ場所は、前に行ったことのあるカジュアルなイタリアン「こんにちボーノ」だった。星形の月と同じく、沙樹の最寄り駅にあるその店は、駅から少し離れた住宅街にある。真尋とふたりで見つけた店で、あれはたしか二回目のデートだったか。三回目だったかもしれない。四回目ではないはずだ。そんなに数えるほどデートは実現していないから、必死に思い出そうとすれば全部思い出せそうだった。

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【小説】出口はどこですか? 第2話

【小説】出口はどこですか? 第2話

Prev……前回のお話

 土曜の朝。せっかくの休日だというのに、沙樹は電話で起こされた。
「え、今何時?」
「9時過ぎ。寝てた?」
「おー……」
 電話の主は滉大。中学からの友達で、多分世間でいうところの「親友」ってカテゴリーに分類される程度の仲である。とはいっても、沙樹も滉大も「おまえは俺の親友だぜ」と熱い握手を交わすような人間ではないので、ずっとなんとなく一緒にいるうちに「多分この先もこんな

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【小説】出口はどこですか? 第1話

【小説】出口はどこですか? 第1話

 目覚ましが鳴る。午後5時。仮眠室のベッドは硬いし狭いし、正直、寝心地が良いとは言えない。
 また、あの夢をみた。遠い、遠い、悲しい記憶。夢だけれど、夢じゃない。あなたが届けた悪夢なら、いつまでも彷徨えるのに。
 時間に余裕もあるし、のんびり店の準備をしよう。仮眠室の薄い扉を開けると、何の変哲もない細い廊下。軋む階段を降りる前に、隣の大きな扉を振り向き、そっと手を触れる。重厚感のある、黒鉄の、誰も

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【詩】守護天使

【詩】守護天使

くだらない
吐き棄てなければ崩れてしまう
全ての光を錯覚にして
どろどろに塗り潰す
小さな虫けらの抵抗は
暗い引力に届くだろうか
まだここに 立っていたい
自分の足で
立っていたいのに

虚しく叩き落とされるなら
優しい破壊に手を貸そう
口の裂けた守護天使
貴方の異常なシナプスが愛おしい
気持ちいいね
熱い舌が記憶を舐めあげて
さあ 地の底へ案内しよう
何度も聞いた 奴の声

そもそも貴方という存

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【死ンダ君モ愛オシイ】 あとがき的なやつ

【死ンダ君モ愛オシイ】 あとがき的なやつ

この記事は「死ンダ君モ愛オシイ」を読み終えた方のみ、お読みください。なんとなく綴ってみた、「あとがき的なやつ」です。

最初から最後まで、一貫して問題作として仕上がりました。だいぶ尖っていましたね。途中で丸くならずに、尖ったまま終えることができて、そこは満足です。なかなか伝えたいことが伝わらなかったようで、悔いが残る部分もありますが、魂を込めて丁寧に練り上げた作品なので、思い残すことはありません。

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【小説】死ンダ君モ愛オシイ 第28話【最終話】

【小説】死ンダ君モ愛オシイ 第28話【最終話】

Prev……前回のお話

 んなわけねぇだろ!!

 一矢は大声で叫びながら、K町のゴミ溜め通りを抜けた。周囲のゾンビ達がチラッと振り向くが、彼らにとっては日常のことなので、驚きはしない。それどころか、ぼったくりバーの案内人が声を掛けてくる。うるさい。うるさい、うるさい! お前らもアズサの話で惑わせるつもりか? 知らないくせに。なにも知らないくせに!

 なんでこんなことになったんだ。あの女に会っ

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【小説】死ンダ君モ愛オシイ 第27話

【小説】死ンダ君モ愛オシイ 第27話

Prev……前回のお話

 まだ午前中。今からホワイトメールにカチ込むか? 押し掛けたとして、どうすればいいだろう。茅野栞を尋問、脅迫。なんだか気が進まない。でもこれがアズサの意趣返しになるのなら、暗い手段に手を染めることも厭わない。あいつの駒になってもいい。今更、あいつのためにできることなんて残っていないのに、このUSBメモリーはそのチャンスを与えてくれたのだ。
 とはいっても、茅野と一緒に写っ

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【小説】死ンダ君モ愛オシイ 第26話

【小説】死ンダ君モ愛オシイ 第26話

Prev……前回のお話

 それは間違いなく、金魚だった。
 ある日、金欠の男は、トレカを売るために女とカードショップに出向いた。「高額買取」で検索して見つけた店で、そのために電車賃410円もかかったのに、カードは大した額にならなかった。クソが。まあ、それはいい。駅までの帰り道、歩道橋の階段を上り切った瞬間、男は激写を狙っているカメラに気づいた。おいおい、プライベートなんだけど? 彼女は写さないで

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【小説】死ンダ君モ愛オシイ 第25話

【小説】死ンダ君モ愛オシイ 第25話

Prev……前回のお話

 亜季の父親、今野を何かしらの方法でアズサが救ったのは、恐らく間違いない。亜季の写真を眺めていたと言っていたから、アズサは亜季のことを覚えていたのだ。だからといって、他人を救うアズサは一矢の中でどうも想像できない。それも自分の知っているアズサではなく、知らない「柚希」なのか? でも、反社風の人間とアズサの繋がりなんて、あるだろうか。あってほしくないけれど。ホワイトメールの

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【小説】死ンダ君モ愛オシイ 第24話

【小説】死ンダ君モ愛オシイ 第24話

Prev……前回のお話

 金魚は何も言わない。この金魚を、アズサは「栞さん」と呼んでいた。そして今日、俺は「栞さん」という女性に出会った。無神経で品がない、横暴な女性だった。俺の知っているアズサが、あの女性を慕って、金魚に名前を付けるなんて思えない。思いたくない。

 ――私が、間違いかもしれない、とは考えませんか?

 この言葉の意味を考える。考えるんだ。どうにか、都合のいいように。納得できる

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連載中の死ンダ君モ愛オシイ(略して死ン君)は全28話となります。
今週から最終話まで日曜と水曜、週2の投稿に切り替えますので、お見逃しのないようご注意ください。

引き続き最後までおつき合い頂けると幸いです🌟🌟

いつもありがとう!!

【小説】死ンダ君モ愛オシイ 第23話

【小説】死ンダ君モ愛オシイ 第23話

Prev……前回のお話

 雑に散らかった、埃っぽく狭い応接室に似つかわしくないような、いや、逆に似つかわしいような、その派手な女性は、名刺を片手で差し出してきた。社長のくせにマナーも知らないのか。悔しいから自分も片手で受け取り、こちらの名刺も片手で押し付けてやろうかと思いながら、一矢は丁寧に両手で受け取り、両手で差し出した。同じレベルに成り下がって品位を失うわけにはいかない。

 しかし……この

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【小説】死ンダ君モ愛オシイ 第22話

【小説】死ンダ君モ愛オシイ 第22話

Prev……前回のお話

「じゃあ、俺帰るけど……ほんとに大丈夫?」
「大丈夫だから」
「うーん……」
 玄関まで来て、静流はまだ躊躇っていた。
「ねえ、ほんとに食べ物あるの? 俺買ってくるよ?」
「あるって。大丈夫。ありがとな」
「うーん……」
 半ば追い出すように、さりげなく、強引に、ドアまで促した。

 わざわざここまで来てくれたのは、とてもありがたかった。佐倉に頼まれたからとはいえ、親身に

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【小説】死ンダ君モ愛オシイ 第21話

【小説】死ンダ君モ愛オシイ 第21話

Prev……前回のお話

「俺が昔、知宏の家にお世話になってたことは知ってるんだよね?」
「ん……聞いた」
「柚希が来たのは、俺が出てった後だった。思えば、こないだ一矢から聞いた『アズサさん』の間違い探し、あれは柚希が知宏の家に来る前の話だったんだね……。勘当されたって話。俺たちは『なにか事情があって行き場のない子』ってことしか知らなかったけど」
 名状しがたい気持ち。なにも知らずにアズサの話を聞

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