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【小説】出口はどこですか? 第5話
Prev……前回のお話
どういうこと?
動悸が激しいのに、呼吸は止まっているようだった。頭部には酸素も血液も足りないようで、沙樹は自分がパニック状態なのか放心状態なのかの区別すらできなかった。
絶対に他人に見られたくないものを、絶対に見られたくない人間に見られた。そこまでの現実で十分ダウンを取られているのに、追い打ちをかける衝撃の謎パンチ。
「出口の場所、君も知りたいかい?」
店内
【小説】出口はどこですか? 第4話
Prev…前回のお話
「いらっしゃ……おお、珍しいね」
星形の月の重いドアをくぐると、空いたグラスをトレイに乗せてフロアを歩いていたユウヤが振り返り、沙樹の後ろに真尋の姿を見つけて、嬉しそうな声をあげた。
前回ふたりでこの店に顔を出したのは、いつだったろうか。常連の人たちには関係も知られていて、つき合い始めの頃は、よく揶揄われたものだ。それでも真尋はまったく動じることはなかったし、沙樹もそう
【小説】出口はどこですか? 第3話
Prev……前回のお話
待ち合わせ場所は、前に行ったことのあるカジュアルなイタリアン「こんにちボーノ」だった。星形の月と同じく、沙樹の最寄り駅にあるその店は、駅から少し離れた住宅街にある。真尋とふたりで見つけた店で、あれはたしか二回目のデートだったか。三回目だったかもしれない。四回目ではないはずだ。そんなに数えるほどデートは実現していないから、必死に思い出そうとすれば全部思い出せそうだった。
【小説】出口はどこですか? 第2話
Prev……前回のお話
土曜の朝。せっかくの休日だというのに、沙樹は電話で起こされた。
「え、今何時?」
「9時過ぎ。寝てた?」
「おー……」
電話の主は滉大。中学からの友達で、多分世間でいうところの「親友」ってカテゴリーに分類される程度の仲である。とはいっても、沙樹も滉大も「おまえは俺の親友だぜ」と熱い握手を交わすような人間ではないので、ずっとなんとなく一緒にいるうちに「多分この先もこんな
【小説】出口はどこですか? 第1話
目覚ましが鳴る。午後5時。仮眠室のベッドは硬いし狭いし、正直、寝心地が良いとは言えない。
また、あの夢をみた。遠い、遠い、悲しい記憶。夢だけれど、夢じゃない。あなたが届けた悪夢なら、いつまでも彷徨えるのに。
時間に余裕もあるし、のんびり店の準備をしよう。仮眠室の薄い扉を開けると、何の変哲もない細い廊下。軋む階段を降りる前に、隣の大きな扉を振り向き、そっと手を触れる。重厚感のある、黒鉄の、誰も
連載中の死ンダ君モ愛オシイ(略して死ン君)は全28話となります。
今週から最終話まで日曜と水曜、週2の投稿に切り替えますので、お見逃しのないようご注意ください。
引き続き最後までおつき合い頂けると幸いです🌟🌟
いつもありがとう!!