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謎と不思議たち

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理解出来ないことを理解しようと、沢山のことを考えて来たけれど、唯葛藤しただけだったのかも知れない。でも、読み返してみても、やっぱり〝変〟だったと思うことばかり。本当は私が一番変な…
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#祖母

嫁という存在⑦

 帰省中、割と調子の良かった祖母に、繰り返し言い聞かせたことがある。
「会社行くのに、歩いて行かんで良いんよ。ちゃんとバスで迎えに来てくれるけん。みんなでバス乗って行く方が楽しかろ?みんなばあちゃんと一緒にバス乗って行きたいって思っとるんよ。だからひとりで歩いて行かんと、遅くてもバス待っといたげてね」
 昔勤めていた会社が施設と同じ方向にあるせいで、祖母はデイサービスに行くのを仕事に行っているつも

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嫁という存在⑥

 祖母の認知症状は急ピッチで進み、叔父からの電話が鳴る度、母の表情は曇るようになっていった。植えたばかりの大根の苗を片っ端から抜いて行ったとか、風呂を空焚きして危うくボヤが出るところだったとか、いかに問題行動が多いかという訴えが続く。そして最後には「施設に入れることも考えないかん」という話へ向かう。しかし施設に空きはなく、空きのあるところへ入れようと思えば金がかかる。祖母の年金だけでは足りない。要

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嫁という存在⑤

 祖母が実家に戻って間もなく、同居している叔父から、母に再々連絡が入るようになった。
 病院に行った祖母が、カバンごと持ち物を失くしてきたとか、箪笥に入れておいたお金が無いと言って一晩中探し回ったとか、そんな類のことが頻発したのである。
 あまりにも訴えが多いので、その年の初夏に急遽母が実家を訪ねたのだが、探し物は見つからず、紛失した持ち物は出て来ないままで、通帳やら印鑑やらをすべて作り替えなけれ

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嫁という存在➃

 互いを支え合い、長年祖父と二人三脚で生きて来た祖母に、認知の兆候が見られるようになったのは、祖父の七回忌を過ぎた頃だったように思う。夏の帰省に合わせて早目の法要を終えた後、祖母は大阪まで旅をして、我が家で一週間を過ごした。
 翌、年明け、今度は大阪に嫁ぐことになった孫(冬子さんの娘)の結婚式の為、再び我が家を訪れた祖母は、一人で散歩に出てしまい、慣れない土地で迷子になった上、気分を悪くしたところ

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嫁という存在②

 母の実家である自宅に戻ると、冬子さんが台所で夕飯の支度をしていた。
 訪問しても挨拶ひとつしない人であるが、季節外れに一人でやって来ていながら、泊めてもらうのに黙っているのもおかしいので、私は祖母と共にこの叔母の元へ行き、「お世話になります」と頭を下げた。
 相変わらず愛想のない人であったが、今夜は祖父が戻らないこともあり、祖母と共に今日の報告をする。料理の手も止めず、聞いているのかいないのかわ

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嫁という存在①

 私の母には弟が二人おり、其々結婚している。それ故、母や祖母(母方の)にとって〝お嫁さん〟と呼ぶに値する人物も、二人いることになる。この二人が実に対照的なのであるが、それが性格や育った環境によるものだけなのか、義理の両親と同居しているか否かという、違いが関係しているせいなのかは定かではない。
 上の弟の嫁である冬子さん(仮名)は、小柄ぽっちゃりのかわいらしい人なのだが、まるで笑わず、夫や自分の子ど

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