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ぐん税ニュースレター vol.48 page04 -FP通信- Part 2

Part 1の記事では日経平均の乱高下と投資の立ち回りについて解説しました。

Part 1の記事

Part 2の本記事では7月11日の日経平均最高値から8月5日の大暴落までを順を追って見てみようと思います。

今回の株価の乱高下は以前から言われている通り、日米(あるいは日本とそれ以外の先進国)の金利差や米国証券市場の影響が大きいと思われます。
3月に日銀がマイナス金利を解除した際も大きな政策転換でしたので記事にしたのですが、その後も市場は日銀の利上げを一つの大きな材料としてみています。結構いろんな材料が出尽くしているので、先進国のインフレ鈍化(=利下げ)か日銀の利上げぐらいしか材料がないとも言えるかもしれません。

マイナス金利緩和の際の記事

そのなかで行われた6月の日銀金融政策決定会合では市場の注目が集まるなか金利は据え置きとなりました。これは金利を上げないという意味ですので円安要因となります。当然、為替市場では円が売られ、円安=海外投資家から見れば日本株がお買い得、または緩和路線の決定なので大企業にとって追い風、という判断で日経平均が上昇しました。この結果起きたことが7月11日の日経平均最高値です。重要なのは時を同じくしてドル円レートは163円手前まで円安が進み、こちらは歴史的安値となっています。日本株と日本円の価値が逆相関になっていますね。つまり中央銀行の金融政策を見ることは株式市場の動向の判断材料になるわけです。

ちなみにこの7月11日は米国の経済指標であるCPI(消費者物価指数)が発表され、これが下振れたことからインフレ過熱感が和らぎ(=米ドルの利下げ思惑)ドルが急激に売られ、おそらくこのタイミングで日銀は為替介入(ドルを売って円を買う=ドル円レートが下がる)を実施したようです。日経平均最高値を記録したこの日のドル円レートは最終的に162.74円から157.44円まで一気4円以上も下落する(=円高の動き)という事態になっています。

基本的に市場は短期的な材料で値動きしながら長期的なトレンドを形成していきますので、目下の値動きはこうした材料を引きずりながら値動きします。この7月11日を境に、CPIを発端とする米国経済の不透明感や7月の日銀金融政策決定会合での利上げの思惑が働いて日経平均とドル円レートの下落が続きます。そして米国の経済指標も影響していますが、決定打となったのは7月31日に市場の思惑どおり日銀が政策金利を0.25%に引き上げたことで、この流れが一気に加速し8月5日の大暴落へと繋がります。

6月の金融政策決定会合と逆の決定をしているわけですから、市場もその時と逆の反応をします。金利が上がった日本円を買う→円高になる→株を売る、という流れですね。基本的には金利が下がっていく(または低い)通貨よりも金利が上がっていく(または高い)通貨を持ちたいので、日本円の買戻しがはじまり、円高要因となっています。
以前にも解説したように、金利が上がることは企業にとっては利息が発生するため借り入れがしづらくなります。また輸出が多い大企業にとっては海外で獲得したドルを日本円に換える時のレートが悪くなりますので、日経平均を構成するこうした企業にとっては不利な状況(=業績に悪影響)になります。こうした材料が連鎖し株が売られます。

中央銀行の決定は市場の思惑通りだと、すでにその情報が織り込まれているためあまり市場が反応しない、または反発することさえあるのですが、今回一段と流れが加速したのは日銀の植田総裁が年内の追加利上げを示唆したことが要因とも考えられています。
株価の大暴落が騒がれると、早速日銀の内田副総裁が「金融市場が不安定な状況では利上げはしない」といった発言をして火消しをしています。これを受けて、再び株価は上昇を続け38,000円台まで戻している状況ですね。もちろん再び円安も進んでいます。
しかし、この日銀の内田副総裁の発言は植田総裁の発言と整合性が取れているかというと疑問が残る部分もあります。ある意味、市場参加者以上に慌てていたのは日銀自身だったのかもしれませんね。

次に日経平均最高値となるのはいつか、しばらく下降トレンドになるのか、円安はまだ続くのか、これらはまだ先行きがわかりません。
日銀の金融政策決定会合のほかに自民党総裁選という大きな材料も控えています。利上げに対する考え方や財政規律の考え方など候補者によって異なります。これらは当然証券市場にも影響してきますので、今後の動向に注目していきましょう。

ファイナンシャルプランナー 原


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