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7/10分 第69作 テーマ:救急車
小さい頃、救急車が好きだった。
他の車とは違い、合法的に信号無視ができる。
大きな音を鳴らして、注目をかっさらいながら、悠然と走ることが出来る。
そんな他人とは違う特別感に、幼心に憧れを抱いていたのかもしれない。
だから俺は、救急車のサイレンが聞こえると心を躍らせていたし、近くに救急車が止まったと見るや、全てを放り出して、駆け寄って見に行った。
あるとき気が付いた。救急車を目撃できるのは
7/9分 第68作 テーマ:素麺
素麺。そう聞くと俺の頭には、様々な素麺、様々な思い出が湧き上がってくる。
まず第一に色付きの素麺。素麺の束の中で、ほんの数本だけピンクや緑の色付きの麺が混ざっている。その色付き麺に出会えることに喜びを感じた。
味噌汁の中に入っている素麺。普段は麺つゆをかけて食べているが、我が家でごくごくたまに食べられる、レアな組み合わせだった。
あるいは、何もかけずに、麺だけで食べる素麺。なぜだか幼少期、こ
7/8分 第67作 テーマ:オフィス
いつからだろう、オフィス勤務が楽しみになったのは。
コロナ禍でうちの会社はフルリモートワークになった。
そこからしばらくして、やむを得ない事情があった場合、あるいは会社から指示があった場合にのみ、出社することになった。
久々に出社すると、オフィス勤務は大変心地よかった。
周りの人間の話し声で程よく賑わっていたし、ちょうどよい緊張感で仕事ができるので、いつもより仕事が捗る。
前までは大変苦
7/7分 第66作 テーマ:チョコレート
バレンタインのチョコレートに関する永遠のテーマ。
気持ちの篭った美味しくない手作りチョコか、
それとも、気持ちはそこそこだが味はいい市販のチョコか。
もらうなら、あるいはあげるなら、どちらを選ぶだろうか?
自称ビジネスの第一線で生きてる俺は、断然後者派だ。
思いは大事。そんなのは当然だ。
しかしそれも、相応の結果があったればこそ。
とにかく何事も、結果が全てなのである。
いくら一生懸命
7/6分 第65作 テーマ:文鎮
俺は幼い頃、習字を習っていたのだが、その当時は、文鎮というものの価値がどうしてもわかりかねていた。
文鎮がなんのためにあるのか、その意味を頭の中で理解はしていた。俺たちが字を書く間、半紙が動いて、文字に意図せぬ乱れが発生しないように、半紙をしっかり固定してくれる、そんな役割だ。
しかし俺には、必要性が分からなかった。文鎮など使わなくても、半紙が大きくずれることなどないと思っていたし、使うにして
7/5分 第64作 テーマ:頂上
いつだったか富士山に登ったとき。
頂上から見る景色がとても綺麗だったのを覚えている。
タワマンの最上階に住んでいる知人の部屋から街を見下ろしたとき、壮観だったのを覚えている。
どちらも高いところから綺麗な景色を見下ろしたには違いなく、素敵だなと感じ、景色に圧倒されたのも事実なのだが、両者の感覚は全然違っていた。
富士山とタワマンじゃ高さが全然違うからそんなの当たり前?
いや、そうじゃない。あ
7/4分 第63作 テーマ:スイカ
スイカ。夏の風物詩。楽しかった思い出。
俺はスイカが好きだったけど、唯一思っていたネガティブなことは、「ほとんど水じゃん」。
今思えば、別にそれは、スイカに限った話じゃない。まず第一に、そもそも俺自身がそうだ。人間の身体は80%が水分でできている。
もっと言えば、その人間が暮らしている地球だって、表面積の7割は水なんだ。
水って、俺たちの周りを当たり前のように埋め尽くしている。
そんな水
7/3分 第62作 テーマ:ふせん
付箋の思い出と言えば、高校の時の、付箋塗れになった女子の英単語張が浮かんでくる。
それはもう信じられないくらい大量の付箋が貼られているのが普通だった。
単語帳の上からも下からも、ニョキニョキ付箋が生えてきている、そんな印象だった。
かくいう俺も、付箋はよく使うから気持ちはわかる。
間違えたもの、そうでなくても、若干記憶が曖昧なもの。
そういうものに付箋を貼った経験は俺にもあるから、
その気持
7/2分 第61作 テーマ:カレーライス
俺はいつの日からか、カレーライスのルーとライスを分けて食べるようになっていた。理由はよく覚えてない。
カレーライスだけではなく、ありとあらゆる食べ物に対してそうだった。
かつ丼がでてきたらとんかつとご飯を切り分けて食べていたし、
天ぷらが出てきた時でさえ、衣と中身を切り離して食べていた。
物心ついた時から、「そういえばそうだったな」というレベルだったので、本当に理由はよく覚えていない。
7/1分 第60作 テーマ:一輪挿し
一輪挿しにぽつんと刺さったひまわりを、朝日が照らす。
毎朝目覚めると同時に目に飛び込んでくる光景だ。
たった一本で立つひまわりが、陽光を浴びて輝く。
いや、見る角度が違えば、陽光を浴びてすっと影を落としているようにも見える。
俺はふと思う。なぜ一輪挿しに立つ花は、こんなにも美しいのだろうか。
一輪の花よりも花束の方が断然きれいなはずなのに、一輪挿しにささった花は、花束の中で咲くどんな花よ
6/30分 第59作 テーマ:屋台
小さい頃、お祭りでよく見かけた屋台。
屋台には不思議な力が働いていた。
なんの変哲もない物なのに、そこで売っているものをすごく魅力的な物に見せる魔力。
なぜだか知らないけれど、いつのまにか視線が惹きつけられてしまう引力。
そんな力が働いて、少年時代の僕には、屋台は大変魅力的なものに映っていた。
屋台で商品を売っている、頭にタオルを巻いた、色黒のお兄ちゃんをかっこいいとも思った。
しかし大
6/29分 第58作 蜘蛛の糸
蜘蛛の糸。僕は昔からそれが不思議で仕方がなかった。
あんなに細いのに、あんなに大きな蜘蛛と、さらには獲物がぶら下がっても切れることがない。
一体どれほど丈夫な糸なんだろう。
僕はそれが気になって仕方がなかった。
別にその丈夫さを解明してやろうとか、
そういう科学者的な好奇心はなかったけれど、
聞くところによると、科学的にもかなり注目されるくらいの強度があるらしい。
しかし僕はふと思うことがあ
6/28分 第57作 テーマ:砂漠
広漠な砂漠の旅。皆どんな旅だと想像するのだろう?
何もなく、単調な道を、喉の渇きと灼熱の気候に耐えながら、ひたすら前進を続ける旅。
そんなところだろうか。
イメージは様々あるとしても、ポジティブなイメージを描く人はいないのだろう。
何もない、ただ前進を続けるだけの旅は、誰しも好まないのだ。
では、「人生山あり谷あり」と例えられるその「人生」とやらを歩く旅はどうだ?
これは意見がはっきり
6/27分 第56作 テーマ:メガネ
人には必ずギャップがある。
私にとってそのギャップの象徴は、メガネだった。
父も母も研究職で、仕事中は常にメガネをかけていた。
しかし、私と会話するときには必ず、2人ともメガネを取って話してくれた。
両親とも、メガネをかけると、少しだけ強面に変わる。
裸眼の時はすごく優しく温かい表情をしているのに、メガネをかけると少しだけ、怖い表情に変わる。
両親もそのことは自覚していたようで、私をはじめ、
6/26分 第55作 テーマ:カブトムシ
もしもあなたがカブトムシだったら?
これはあなたにとって、嬉しい想像か、悲しい想像か。
おそらく大半の答えが、前者なのだろう。
昆虫界で最も羨望の眼差しを受け、スポットライトを浴び、人間からもピックアップされる。
力も強く、樹液争いでは、クワガタと並んで双璧をなす。
強さは互角なはずなのに、その見栄えの良さで、クワガタムシよりも注目度が高い。
どこからどう見ても、素敵ではないか!
そん
6/25分 第54作 テーマ:筍
あなたは人間のどんなところが好きですか?
そう問われたら私は、きっとこう答える。
長い間の苦労が報われて、ようやく芽を出し、
これからぐんぐん成長しようとしているところ。
なぜそこが好きなのか?
そこが1番、苦味も甘味もあるからだ。
人間として最も味のある瞬間だと思っている。
芽を出すまでの経験値と、これからさらにぐんぐん大きくなっていこうとする努力ともがきの過程で、
自信と期待と不安が入り