7/8分 第67作 テーマ:オフィス

いつからだろう、オフィス勤務が楽しみになったのは。

コロナ禍でうちの会社はフルリモートワークになった。

そこからしばらくして、やむを得ない事情があった場合、あるいは会社から指示があった場合にのみ、出社することになった。

久々に出社すると、オフィス勤務は大変心地よかった。

周りの人間の話し声で程よく賑わっていたし、ちょうどよい緊張感で仕事ができるので、いつもより仕事が捗る。

前までは大変苦痛で、オフィスに漂う特有の匂いを嗅ぐだけでも嫌だった。
上司達が発する言葉にはとげがある気がしたし、自分は常に見張られているかのような感覚だった。

それなのに、今はオフィス勤務が楽しいと感じだ。

久々の出社だったこと、同僚や先輩と久しぶりに顔合わせ出来たこともその原因の一つだったのだろうが、
ある程度仕事になれ、上司ともフランクに話せるようになったことが大きかったに違いない。

立場が変われば、同じ場所でもこんなに見え方が違うんだ、一つ学びを得た。

では、家庭についてはどうだろうか。

新婚ほやほやは、大好きな妻がいる場所、何かあったらすぐ、いや、何もなくても、すぐに戻りたい場所だった。

子供ができて間もなくは、笑顔で出迎えてくれる子供の笑顔を見られる、常にいたい場所だった。

それが今やどうだろう。

妻との会話はほとんどなく、子供は反抗期で口も聞いてくれない。

そもそも、俺が起きる頃にはみんなまだ寝ていて、
俺が帰った頃にはみんな寝ている。

最低限の、すっかり冷め切った晩飯が置かれてあるのみ。

正直今の俺にとって、我が家は、特に休日は、大変居心地の悪い場所になってしまった。

この見え方の違いは一体なんなんだ?

俺の立場や考え方が変わったのに違いないのだが。

何がどういう風に変わったのか、
俺にははっきりとはわからない。

しかしなんだか、熟年離婚する夫婦の気持ちが、
少しだけわかってしまった気がする。

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