6/25分 第54作 テーマ:筍

あなたは人間のどんなところが好きですか?
そう問われたら私は、きっとこう答える。

長い間の苦労が報われて、ようやく芽を出し、
これからぐんぐん成長しようとしているところ。

なぜそこが好きなのか?
そこが1番、苦味も甘味もあるからだ。
人間として最も味のある瞬間だと思っている。

芽を出すまでの経験値と、これからさらにぐんぐん大きくなっていこうとする努力ともがきの過程で、
自信と期待と不安が入り混じった複雑な感情を抱えている。

そんな状態の、ちょっと触れたら折れてしまいそうな、
脆くて強い状態がたまらなく愛おしい。

彼は彼女は、これまでどんな経験を積んできたのか?
これからどんな道程を、どんな人生を歩んでいくのか?

私にはそれが気になって仕方がない。

その人の酸いも甘いも、その全てを噛み締めて味わってあげたい。

まるで、漸く地面に出てきて、これから立派な竹になろうとしている筍に舌鼓をうつ人間のように、
私は1人の人の人生を思いっきり、味わいたい。

それが、私の描く小説の、最大のネタなのである。

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