6/29分 第58作 蜘蛛の糸


蜘蛛の糸。僕は昔からそれが不思議で仕方がなかった。
あんなに細いのに、あんなに大きな蜘蛛と、さらには獲物がぶら下がっても切れることがない。

一体どれほど丈夫な糸なんだろう。
僕はそれが気になって仕方がなかった。

別にその丈夫さを解明してやろうとか、
そういう科学者的な好奇心はなかったけれど、
聞くところによると、科学的にもかなり注目されるくらいの強度があるらしい。

しかし僕はふと思うことがある。
この蜘蛛の糸のように、見た目はすごく細いのに、
実は驚くほどの強さの持ち主が、きっとどこかにいるのではないか。

世間全体を見渡せば、きっとたくさん、いるんだと思う。

女手一つで子育てしているシングルマザー。
両親に代わって年下の兄弟の面倒を見ている子供たち。

あるいは、街の外れで細々と生き残っている老舗の店舗もそうなのかもしれない。

それから気になることがもう一つ。
そんな細くて強い彼らが張り巡らせている糸には、
何が引っかかるんだろう。

形は違っていいけれど、どうかそれが、
「幸せ」につながるものでありますように。

どうか僕が生きているこの世界が、そんな世界でありますように。

そう願っているけれど、願うことしかできません。

だけど、あなたの糸が私の糸と交わる時、
その時はきっと、あなたが張り巡らせたその糸に、
あなたの肥やしになる何かを、そっと置いていきますね。

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