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「バッカスの巫女たち」J・コルタサル著 木村榮一訳 『遊戯の終り』所収 国書刊行会
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【あらすじ】
劇場で催されたコンサートへ僕は行く。
芸術には無縁なこの街に、一人のマエストロが熱狂を持ち込む。
曲が終わるたびに、マエストロ・指揮者は盛んな喝采を受ける。聴衆は皆感動を抑え消れずに興奮している。
泣いている婦人、痙攣を起こした娘などで、劇場内はますます狂気の体であふれかえった。僕はそんなバカ騒ぎに加
飛行機に乗ったカタツムリ
六歳の女の子がどこで手に入れたのか、梨を包む紙を持っている。紙は薄くて艶があり、表面はかなり滑らかにできている。色は、濃いめの緑である。
女の子は二丁目の、誰もいない公園のブランコに腰を掛け、鼻歌を歌いながら緑色の紙を折り始める。ブランコを揺する回数がしだいに減ってきたのに合わせ、両足をしっかり地面に着けた。立ち上がって右手を高く掲げる。指先に緑の紙飛行機が挟まれている。今まさに、空へ飛び立っ