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コーチングの定番であるGROWモデルを利用した人材育成とは?

社内の人材育成の手法として、コーチングを取り入れる企業が増えてきています。なぜ今、コーチングが必要とされているのか?そして、コーチングの定番とされているGROWモデルとはどんなものなのか?について、今回は書いてみたいと思います。

なぜマネージャー(上司)がコーチングをしなければならないのか?

世の中には、工場のラインワーカーのように同じことを繰り返し実施する仕事に従事するマニュアルワークと、医者のように、知識を活かし、課題を解決する仕事に従事するナレッジワークの二つの種類が存在すると、ピーター・ドラッカー氏は、彼の著書の中で提唱しました。そして、こちらの論文によると、1920年では、マニュアルワーカーとナレッジーワーカーの割合は2対1であったのに比べ、近年では、70%以上がナレッジワーカーになったと述べています。

マニュアルワーカーが主流の場合、マネージャー(上司)の役割は、どれだけ部下が、マニュアルに従い、間違えなく作業をさせることができるかどうかがポイントでした。そのため、人材育成とは、同じ作業を繰り返しできる人をどれだけ増やすことができるかということを意味していました。そして、その仕事の経験が長く、より上手にできる人がマネージャーになっていましたので、マネージャーはどのようにすればより正しく、早くできるか等を指導し、どれだけ正確にそして効率良く業務が行われているかを管理することが主な職務でした。

しかし、現在では、VUCAと言われるように「変動(Volatility)」が激しく、「不確実(Uncertainty)」であり、さらに「複雑(Complexity)」で「曖昧(Ambiguity)」な世界になっています。そのため、同じことを繰り返しやっていても、すぐに通用しなくなるため、常に変化し続けなければいけないという状況になっています。そのため、社員は色々なことにチャレンジし、生き残る術を見つけなければいけません。このように、社員が様々なことにチャレンジしなければいけない状況で、マネージャーがそれらチャレンジをしている分野の全てにおいて、エキスパートでいることは不可能な時代になってしまいました。そこで、マネージャーの役割は、エキスパートとして培っている知識や技術を伝えるのではなく、部下がチャレンジすることに対して、サポートをし、解決に導く補助を行うことにシフトしてきています。

コーチングの定番であるGROWモデルとは?

指導ではなく、答えを導き出すファシリテーションを主としたコーチングで必要なことは、話を良く聞き、話を遮らず、アドバイスを行わないとされています。つまり、質問を投げかけ続けることによって、部下などの相談者が自ら答えを見つけ出す手助けをすることとなります。その際に、効果的な質問および質問の順番があり、その一つとしてGROWモデルというものがあります。

ファシリテーションを主体としたコーチングのポイント
- 話を良く聞く
- 話を遮らない
- アドバイスしない

GROWモデルは、イギリスのジョン・ウィットモア卿(John Whitmore)によって1992年に出版された、 「Coaching for Performance(はじめのコーチング)」の中で初めて紹介されたとされています。GROWモデルは、Goal(目標)、Reality(現状)、Options(選択肢)、Will(意志)の頭文字をとったものとなり、それぞれの内容は以下の通りとなります。

Goal(目標)

まず、Goal(目標)において部下ないしは相談者が何を目指しているかを明確にします。

Goal(目標)の質問例

  • 何を目指していますか?

  • 何をしたいと思っていますか?

  • どうなるべきだと思いますか?

  • どんなことが期待されていると思いますか?

  • あなたの役割は何ですか?

  • 将来どうしたいと思いますか?

Reality(現状)

明確にされた目標に対し、Reality(現状)を把握し、目標とのギャップを確認します。

Reality(現状)の質問例

  • 目標に対してどのくらい進捗していると思いますか?

  • 目標は現実的だと思いますか?

  • 現状をどのように受け止めていますか?

  • 現状は期待通りですか?

  • なぜ、現状のような進捗状況になっていると思いますか?

  • 現在の業務負荷はどんな状態ですか?

Options(選択肢)

目標と現状とのギャップを認識した後、そのギャップを埋めるためのOptions(選択肢)を探ります。なお、Oを選択肢ではなく、Obstacles(障害)とする場合もあります。

Options(選択肢)の質問例

  • 今、どんなことができますか?

  • どんな計画を立てることができますか?

  • 代替案としてどんなものがありますか?

  • 参考になる過去の成功体験はありますか?

  • どんな人と協力すべきですか?

  • リソースを集中させるため辞めるべきことはありますか?

Will(意志)

最後に、選択肢の中から、Will(意志)をもって実行したいものを見つけ出し、具体的にどのようにするかを聞き出していきます。Wを意志ではなく、Way forward(前進する方法)とする場合もあります。

Will(意志)の質問例

  • 次に何をするべきだと思いますか?

  • いつする予定ですか?

  • どのようにする予定ですか?

  • どのくらいやることに対して意義を感じていますか?

  • どのくらいの時間をかけてやるつもりですか?

  • 誰とやろうと思っていますか?

GROWモデル

GROWモデルを利用したコーチングは、部下や相談者のモチベーションおよび自信を高めることによって、可能性の拡大やパフォーマンスの向上に役立ちます。そして、実証に基づき構成された順序で効果的に質問をすることにより、部下や相談者の責任感を強くし、当事者意識を高めることができ、さらには、さまざまな障害を乗り越え、目標を達成するために必要な現実的な手段を導き出すことができるようになると思います。また、部下や相談者自身が自ら考え、答えを導き出す行為を繰り返すことにより、自律した人材が育成されていくと考えます。


現在、GROWモデルといったコーチングおよび内省や経験学習のフレームワークを活用した、目標およびアクションマネージメントシステムを開発しております。製品に関するご意見を募集しておりますので、何かございましたら、以下よりお気軽にご意見お寄せください。


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